桜桃/阿三






きらきら、
首筋を伝う汗に、太陽の光が反射して光っている。
まるで、小さな宝石をたくさんばらまいているみたいな、グラウンド。
オレはこれをみると、夏だって思うんだ。
夏は、いろんなものがきらきらしてて、すごくきれいだ。


「阿部くんも、きらきら…してる ね」

「はぁ?きらきらって何だよ」


そう言いながら、篠岡さんが持ってきてくれたタオルで、汗を拭く阿部くん。
あ、きらきらがなくなっちゃった。
ぽつりとオレが呟けば、もしかして汗のこと言ってんのか?と、阿部くんは顔をしかめた。


「そ、だよ」

「あっそ。お前もきらきらしてんぞ」


風邪引くからちゃんと拭け、
そう言ってオレの持っていたタオルをとると、額から首までゴシゴシと汗を拭いてくれた。


「おー!阿部、お母さんみてぇ!」

「あぁ、もういいよ。それで」


阿部くんに、されるがままのオレを見て田島くんは、親子みたい!と笑った。
確かに、阿部くんお母さんみたいっていうか、面倒見がいいというか、オレのことすっごく大事にしてくれる。
だから、好き…。


「三橋、」

「なん、ですか。お母さん」

「誰がお母さんだ!」


う、怒られた…。
ごめんなさい、って謝ったら、別に謝れなんて言ってねーだろ、って逆にまた怒られてしまった。


「ほら、アンダー変えてこい」


汗でびしょびしょだろ、
ポン、とベンチの方へ背中を押された。
阿部くん、オレのこと何でもわかるんだ。すごい!
そんで、ホームにいる阿部くんは、なんかきらきらしててかっこいい!
そんで、そんで。
オ、オレの恋人…っ!


「ふぉおぉおお…!」

「な、なに…?」


感心して、無意識に阿部くんを見つめていたらしい。
気が付くと、苦笑いしながら顔をひきつらせる阿部くんと、目があった。


「阿部くん、は きらきらで、かっこいいんだ」


きらきらでかっこいいってなんだ、と再度、顔をひきつらせる阿部くん。
輝いてる、てことだよ、
そう言ってにっこり笑えば、阿部くんは一瞬目を見開くも、優しく微笑んでオレの頭を撫でた。


「マウンドに立った時のお前は、誰よりも輝いてるよ」


オレも、きらきらしてるん、だ!



















桜桃 -ユスラウメ-

(輝き)









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あきゅろす。
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