アイリス/阿水前提 阿部+水谷姉
「あ、あなた、阿部君かな」
え、
と言って振り向けば、知らない綺麗な女の人が立っていて。
俺の顔を見ると、やっぱりそうだ、と声をあげた。
その笑顔が、なんとなく水谷に似ていて少し胸が高鳴った。
「ぁの…?どちら様で…」
「あぁ、ごめんなさい。私ったら」
へらっと笑いながら、頬をかく仕草。
あまりにも水谷に似ていて、俺は思わず見とれてしまった。
「水谷彩世。水谷文貴の姉です」
「…っみずた、!?」
ええっ、
目を見開く。
確かに外見も中身もいろいろ似ているため、納得は出きるが。
すげぇ、なんか、びっくりした。
慌てて、お世話になってます、と頭を避ければ、いえいえこちらこそと逆に頭を下げてきた。
「何で、俺の事知って…」
「知ってるよ、文貴の恋人なんだから」
ふんわりと柔らかく微笑む。
ホント綺麗な姉ちゃんだな。
そっか、弟の恋人だから、そんくらい知ってるか。
そうだよな、…って、え!?
「な、何で知ってんすか!」
「え?」
きょとんとする彩世さん。
てか、やっぱこの人水谷の姉ちゃんだ。
100%水谷の姉ちゃんだ。
言っちゃ悪いが、天然。
「弟の恋人が男って聞いて、何も思わないんですか?」
「何を?」
「その…、気持ち悪い、とか」
俺がそう呟けば、彩世さんは再度柔らかく微笑んだ。
「阿部君も文貴とおんなじこと言ってる」
「え」
「お互いが同じ気持ちなら、男とか女とか、そんなの関係ないんじゃないかな」
その瞬間、一気に緊張がほぐれた。
すっきりした。
今まで感じていた、変な罪悪感やもやもやした気持ちが、心の中から綺麗にすぅ、と消えた。
「文貴、今すごく幸せそうなんだよ。ありがとう、ね」
「そんな、お礼をいうのはこっちの方ですよ」
嬉しい。
彩世さんは、俺たちを、
「どうか、これからも文貴を大事にしてあげて下さい」
受け入れてくれた。
じん、と胸が熱くなって視界がぼやける。
水谷のやつ、すげぇいい姉ちゃんと一緒に育ったな。
彩世さんからのお願いと。
俺自身の望みのために。
俺は──…、
アイリス
(あなたを大切にします)
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