リク部屋 3 「ふっ」 黒塗りの車に乗せられた瞬間に僕は男に抱き締められた。 「会いたかった…愛しい、盟」 「貴方は…」 息が苦しい。それくらいに強く抱き締められている。僕の存在はひどく秘密裏だ。なのに、なぜ。 「私のこと、覚えてはいらっしゃないでしょうか?」 ふい、と顔をあげ微笑む姿はやはり美しい。 ほとんど、表に出ない僕が一体いつ? 彼は困ったような顔をしたかと思えば僕の頬を手で包まれた。 「覚えていないのは、随分前ですから仕方ありません。迎えに来るのが遅かった私が悪いのです。」 彼の指が唇を撫でる。その感触にぞわり、とした。 「私の名前は日条清人。ずっと貴方に会いたかった…愛しい、盟。」 日条…? この国の三大貴族といわれるその一角、陽李家の分家に当たる由緒正しい一族だ。 僕は一度だけ、日条の人間とあったことがある。幼い、小さな男の子。まさか。 「まさか、君はあのときの、」 そういうと彼は破顔し、幸せそうに笑った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |