リク部屋 9 夢を、見た。 初めて会長を見たとき。凛とした姿が美しく、強い眼差しが、この学園の王であることを知らしめる。 その瞳が僕を見たとき。いや、僕なんかを見たわけではなかったのかもしれない。勝手に自分が思っているだけなのかも。 僕は恋をしたのだ。 「ん…」 痛むからだが柔らかい何かに包まれている。ゆっくりと目をあけた。 「啓利」 「か、いちょう…?」 目の前には会長。僕は生徒会長室のソファに寝かされているようだ。それより、気になることがひとつ。 「啓利、なぁ啓利。可哀想に…痛いだろ?」 会長が笑っている。寡黙な、表情すら変えない会長が。その目は僕の焦がれた瞳の色ではなく、ひどく濁っている。 「啓利」 「ぐっ」 会長の手が僕の首を締める。息が、出来なくなる。苦しい。 「啓利…何故俺を頼らなかった?あんなにひどい仕打ちを受けて。俺は待っていたのに。…なぁ、思い知っただろう?お前には、俺しかいないって。俺から逃げようとも、お前の居場所はない」 少しだけ緩められた手、気道が空気を取り込んでいく。 「啓利、なぜだ?なぜ俺を頼ってくれない?もっともっと傷つけば俺を頼るか?お前は人が傷つくのが嫌いだよな。…家族が傷つけば、俺を頼る?」 血の気がひく。首はそこまでしまっていないのに、呼吸が止まりそうだ。 「や、だ…かいちょ…やめて」 会長の美しい顔が歪んでいく。僕の恋い焦がれた彼は、もう、いない。 [*前へ][次へ#] [戻る] |