短編
1
自分の不甲斐なさに腹が立つ。
兄貴から受け継いだチームは当初こそは兄貴のいた名残でトップ争いに参加していた。
兄貴はカリスマ性に満ちた男だった。誰もが羨み尊敬の眼差しを向ける。弟である俺もその一人だった。
『お前なら大丈夫だよ』
そうはにかんだ笑顔で兄貴は俺にチームを託した。抗議の声をあげるメンバーも何人かいたが、兄貴の弟というレッテルの成果もあり、俺はチームの総長になった。
だが、兄貴からチームを受け継いで1年、チームは徐々に力を落としていった。
兄貴に相談したくても兄貴は結婚し、嫁さんには子供が宿っている。そんな兄貴を巻き込むわけにはいかない。
「だよなー」
へらへら笑う男の舌につくピアスを引きちぎりたい。
「なぁ?いい話だろ?俺のチームとお前のチームの合併。しかも総長はお前にしてやるよ。」
せわしなく聞こえる喧騒。俺のチームとコイツのチームの抗争だ。名ばかりの俺のチームが今伸び盛りのチームに勝てるはずがない。
「合併してお前が総長になればお前をなめた奴等はお前を認めるだろう。そしてチームは存続していく。」
少し斜め上にある、瞳。
このままでは、俺のチームは半年もかからずに潰れていくだろう。
「いい話だろ?」
唇を噛み締める。
俺はチームを守りたい。兄貴から譲り受けた、このチームを。
「その代わり、俺のオンナになれ」
ただ、守りたい。
それだけで、何もかも捨てれるさ。
プライド、さえも。
end
伸び盛りチームの総長→廃れていくチームの総長みたいな。
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