短編
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授業の休み時間。
要が俺の制服の裾を引く。
「怜…」
俺の名前を呼ぶ要。可愛い唇が震えている。
「なぁに?かなめちゃん」
オデコをコツンと合わせれば要は俺に潤んだ瞳を合わせていく。
「も…やだ…帰り、たいよ」
「今来たばっかりじゃない。もう嫌になったの?」
クスクスと笑えば要は今にも泣きそうになる。
「も…やだ…耐えられない…怜っせめて…」
「じゃあここでして」
にっこり笑った俺に要の顔がみるみる青ざめていく。
裾を握る手を俺の指に絡めていく。
見せつけてやろーよ。
要は俺のだって。
いつも遠くから要を見るあの男にさ。
要に気があるくせに潔癖症だから近づくのを諦めた馬鹿なやつ。
「かなめぇいいの?かなめのお口は今俺の吐いた息だけじゃなく、クラスの連中が吐いた息をすってんだよ?消毒しないと、汚れちゃうよ?」
はやく、と催促するように口をあける。
要は渋りつつも汚れることには耐えられないと俺にくちづけた。
クチュクチュと教室に不釣り合いな音が不釣り合いな男たちから流れる。
要の口からこぼれる唾液を嘗めれば、
「中も、きれいにしよっか」
コクンと頷いた要を連れて教室をでた。
その瞬間にあの男と目が合う。
お前は一生そうやってみてればいい。
俺たちだけの世界を。
end
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