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はつ恋 17

人を愛する事など出来るの?




そんな毎日を過ごして一年が過ぎ
幸村と政宗は昔の記憶さながら、またそれすら打ち消す程、仲良くなっていた。

じゃれる様に騒ぐ毎日

最近は昔の想いなど微塵も感じさせずに学生生活を送る政宗に、佐助もまたアンニュイな表情を時たま浮かべるが、幸村が遊びに来る度に嬉しそうにしていた。


政宗幸せなの?


そんな日々の中、佐助のこぼれた様な質問に、政宗は笑顔で幸せだと答えた。

ならば仕方ないかと思っていた矢先

政宗が泥だらけで家に帰ってきた。


「なっ…何!政宗……どした……?」


泥まみれで所々裂けた白い制服
赤く腫れ上がった唇

乱れた髪


「喧嘩だよ喧嘩。たまにはするさ」


そう言って浴室に姿を消した政宗に、佐助は神経を尖らせる

喧嘩…ならばあんな意図的に服が破れるものか。
破れた紺のスラックスに付いた白濁

佐助は気付かれない様にベランダに出て、身軽に下に降りる
裸足のまま政宗の下校通路を曲がり、近くの薄暗い公園で僅かな鉄の匂いと酷く醜悪な匂いに、全身の血がたぎる

低い呻き声に音を立てずに忍び寄って覗き込むと、数人の男が血塗れで倒れていた。

政宗がやったのか?


痛い程に頭に登る血を抑える様に深呼吸して、倒れ込んだ男の胸倉を掴む
見慣れない制服


「お前等何してるの?」


自分でも耳を疑う様な低く冷たい声


「違っ…俺等は…ただ…」

「ただ…?」

「ヒッ…っ…伊達…が気に食わねえから…シメようと……したら…アイツがマワすって言い出して…ヤろうとしてたら…途中で伊達に逃げられて…追っかけたら…突然茶髪の男に殴られて……本当だよ!!」


そう怯えた様に指差した男の先には、半死半生のぐったりした男が居て。

佐助は掴んでいた男を離すと、自宅に向けて走り出す


話が全て本当ならば
茶髪の男は幸村かも知れない


慌てて家まで戻ると、マンションの垣根の下に、うずくまる様に座る幸村を見つけた。


「……幸村?」


極力声を抑えて声をかけると、血塗れの拳をギュッと握ったまま、蒼白の顔を上げた。


「……佐助…兄…政宗殿は…?」

「帰ってるよ、ねぇ幸村。ウチで手当てしてきな。政宗は大丈夫だよ?」

佐助がそう言うと、ホッと安堵の表情を浮かべて、遠慮がちに頷いた。


幸村を説き伏せ、ベランダからそっと部屋に戻り時計を見ると10分ちょっと。

浴室のシャワーの音を確認して玄関から幸村を招き入れた。

手を洗ってみると、殴った事で赤く腫れ上がる以外は幸村に怪我はなく、佐助はホッと胸をなで下ろした


「ねぇ、良かったら今日泊まってく?政宗の後にシャワー浴びなよ。俺様の服貸してあげるからさ。おうちの人に電話してさ?今帰ると心配するんじゃない?」

「う…む。ウチは義理の姉が目聡いゆえ、そうさせて下され」

「OK、良かったら団子食べない?政宗と作ったんだよ?……っと。ちょっと政宗の様子見てくるね。」

「かたじけない!団子は好物です」


ニコリと団子にかぶりつく幸村を見てから、政宗のシャワーがやたら長い事が気がかりで、佐助は浴室に向かう


「政宗?大丈夫?」


ゴミ箱に突っ込まれた制服
何回か声をかけたが返事がない。


「政宗開けるよ?……政宗!」


ドアを開けると、シャワーにうたれたまま壁にもたれた政宗は揺さぶる佐助に答えずぐったりとしていた。

慌ててシャワーを止めてバスタオルでくるみ抱き上げる。

佐助の声に駆け付けた幸村は真っ青で…


「…っ…………幸村…とりあえずシャワー浴びて泥落としてね。政宗は大丈夫だから。終わったら…話聞かせてくれる?見た事だけで良いからさ」


佐助がそう言うと、幸村は黙って頷き、政宗の髪をそっと撫でてから制服を脱いでシャワーを浴びだした。


佐助は政宗をベッドに寝かせて体を隅々まで拭いて、ふっと嫌な予感を拭う様に気を失った政宗にゴメンと謝り、そっと後孔に触れる
切れてもいない様子に安堵してパジャマを着せた。

脇腹、喉、手足首に残る擦り傷
腫れた口元に手当てをして、布団を掛けると僅かに隙間を開けてドアを閉めると、台所に雫を髪から垂らす幸村が心配そうに立っていた。


「もー、ちゃんと拭きなよー」


そう言って佐助がガシガシと幸村の髪を拭くと、幸村は懐かしい表情で目を細めた


「すまぬな」

「いえいえ。あったかいココア飲む?」

「甘めでお願い致す」

「了解ですよ」


何となく分かる幸村の嗜好。
変な懐かしさのまま、大して温まって来なかっただろう幸村にホットココアを差し出した。

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あきゅろす。
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