はつ恋 7 はつ恋 7 でもこの真心を永遠のはつ恋と呼ばせて 伊達陣営 チリ チリ 政宗が歩くたびに 鳴る密やかで歪な音色 「政宗様、何やら鈴の様な音が致しますが?」 「Aa?ああ。形見だ。それ以上聞くなよな小十郎」 伏線をはった様に、先走って小十郎の言葉を止めた政宗は、僅かに嬉しそうな顔で微笑んだ 「はい」 「…何だよ、んな優しい声で素直に返事しやがって。」 「この小十郎、政宗様には常に優しくあると思いますが…?」 「HA、違いねぇな……なぁ小十郎…昼はThank you…探しに来るのわざと遅くしただろ?」 「はて、何の事にございましょう」 「ああそう言う事にしてやるよ」 政宗は懐から袋を出して、丸めた蜂蜜を数個取り出すと、小十郎の手にポトリと落とし、自分の天蓋に戻って行った。 「政宗様から賄賂を頂いた。これを舐めて溜飲を下げないか?…成実、綱元」 小十郎がそう呟くと、天蓋の影にいた成実達がコソコソと入ってきた 「分かってるよ…分かってるんだけど。俺は梵…政宗にどんなに恨まれたって、政宗を守るよ。アイツを…真田を殺したって後悔しない」 「ああ。そうだな」 口の中でゆっくり溶ける蜂蜜 小十郎、綱元、成実の三人は、複雑な面もちで夜空に浮かぶ三日月を見つめていた。 数日後 武田との和議に応じた政宗は、奥州に戻った。 そして数年の月日が流れても 政宗は銀の鈴を大切にしていた。 廊下を歩くと、あしもとが僅かな月明かりに照らされる。政宗は自分の部屋から外を眺めた。 もう すぐに 天下がわかれる その日が近づく。 . 20100202 [*前へ][次へ#] [戻る] |