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はつ恋 4

はつ恋 4
帰るべき場所がある、守るべき人がいる



ただ真っ直ぐに
戦場を、敵兵を薙ぎ倒して伊達本陣に走る

幸村は政宗を目指した


こんな時代だから
こんな出逢い方だったから

愛した心も良くわからない


だけど

ただひとつ
失いたくないと思う気持ちと
もう亡くしてしまいたい気持ちと

入り混じってひた走る


「独眼竜、伊達政宗殿ー!いずこにおわす!!我が名は真田源次郎幸村!いざ勝負!!!!」


鳴り響く幸村の声

政宗ははじかれた様に、本陣の幕を飛び出そうとして、腕を掴まれた


「政宗様。…成りませぬ……」

「…小十郎……離…せ。」

「駄目だよ梵!大将が死んだら戦は負けだ!!絶対に行かせない!」

「政宗様!」


小十郎、成実、綱元の三人が政宗の前に立ちふさがる。
政宗は、ふっと顔を伏せた後、小十郎達に向かって笑顔を向けた


「HAA、信用ねぇな…負けねぇさ。……退け……」

「梵!」


政宗につかみかかる成実を抑えたのは小十郎で。


「分かりました。ですが危ないと我々が判断した時点で参ります事お許し下さい」

「OK…すまねぇ小十郎、成、綱」


政宗はそう、三人に告げると幕を飛び出して行った。


「…何で止めねえの小十郎…梵が…政宗が死んだら…」

「負けねぇと仰った。心配するな成実…俺達も行くぞ」


小十郎はそう言って、成実の髪をクシャリと撫でた。











「政宗殿ー!」


幸村の声が聞こえる


政宗は、声のする方へ走り、少し戦場から離れた木々の茂る場所に走り出た


「…幸村…」


懐かしい紅

茶色の一房だけ長い髪と、緋色の鉢巻き
靡く様に絡まり、政宗は息を飲んだ。



こんなに好きなのに


「久しぶりだな、真田幸村…」


胸が痛むほどに好きなのに


「…伊達…政宗…殿………参る!」

「Aa……来いよ真田幸村…俺の心臓は此処だぜ?」


幸村は、政宗の声、姿を見つけて
どうしようもなく体が震えた

何故この手は、愛しい相手に槍を向けているのか

何故この腕は、愛しい相手を抱き締める為には動いてくれないのか

幸村は、政宗と何度となく剣を交え、間近で見る政宗に目を奪われる

嗚呼やはり美しい人だと
零れる様に呟けば、政宗の瞳は哀しげに細められた。
剣を交わしながらの会話の様な一瞬

その刹那、政宗の後方から来た流れ弾に反応した幸村は、咄嗟に政宗を抱えて避けた衝撃で、二人は崩れる様に岩陰に落ちた。








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あきゅろす。
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