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夢小説
愛していた故に
[]


いつだってあなたは。


あたしじゃない他の女を見ている。


もうどれくらいあたしの心がズタズタなのか、あなたは知っている?



白蘭…








コンコン


『失礼します、白蘭様』


そう言っていつもの様に扉を開けると、部屋の中からは甲高い女の声が聞こえる。


「やだぁ〜、白蘭ったらぁ」


また女を連れ込んでいる…いつもの事だけど。


「でね、そしたらさぁ〜」


頼むから、この媚びる様な声だけは本当に止めて欲しい。


聞いただけで虫酸が走る。


「へぇ、そうなんだ」


愛おしそうに髪なんて撫でないでよ。


『白蘭様、報告書はここに置いておきますので必ず目をご通し下さいと正…入江様からの伝言です』


部屋に出て行く途中、女の顔を見たら勝ち誇った様に笑っていた。



何であんな女に目を向けるの?



あたしの何がいけなかった?



あたしに飽きたの?


聞きたい事はたくさんあった。



『ハァ…本当、心臓に悪い』


部屋を出てしばらく歩いた廊下の真ん中くらいであたしは溜息と共に呟いた。


だけど二人きりじゃなくて安心した。


あそこであの女がいなければ、きっとあたしは二人きりという気まずさに耐えられずに飛び出していたかもしれない。


それだけは勘弁してほしい。


白蘭には未練というものがなくても、あたしにはある。


まだ白蘭の事が好きだという未練が。


『ハァ…』






3ヶ月前まであたしと白蘭は付き合っていた。


告白はあたしから


ダメもとでしてみたら、返事はOK


あの時は本当に幸せだったし、ずっと好きだった白蘭とつき合えるなんて夢のようだった。


だから、まさか裏切られていたなんて思いもしなかった。






あたしはいつものように正一に頼まれた書類を白蘭のところへ届けに行った。


もともと正一とあたしはミルフィオーレに入部した時期も一緒で歳も同じ、出身国も同じですっかり息が合ってしまったのだ。


隊長と副隊長という関係で更に正一とあたしは仲良くなった。


弟しかいなかったあたしには、正一は兄のように思えた。


だから白蘭もあたしと正一の仲の良さは知っている。


彼女が他の男と仲良さそうにしてるんだよ?


少しはヤキモチとか妬いてもいいのに…


そんな事を思っていると、いつの間にか白蘭の部屋の前に着いていた。


コンコン


白蘭の部屋の扉をノックする。


いつもは返事が返ってくるが、今日は帰って来ない。


『白蘭ー?』


多分寝ているんだろう、そう思ったあたしは何も考えずに扉を開けた。


『!?!?』


そこであたしが目にしたのは



白蘭が女の人を押し倒しているところだった。


『…びゃ、くらん…?何…してるの?』


何が何だか良くわからない。


頭がパニック状態だ。


「あれ?名前チャン、どしたの?」


格別驚いている様子もない。


いつもと何ら変わりない白蘭。


女の人からどいた白蘭はその人に向かって、


「もういいよ、帰りな」


とだけ冷たく言い放ち、女の人は慌てて帰って行った。


部屋には白蘭とあたしだけ。


「あはは、見られちゃったな〜」


そう言い、こちらにやって来る白蘭。



『ずっと…ずっと、あたしを騙していたの?』


錯乱状態から我に返ったあたしは、恐る恐る白蘭に聞いた。


「騙していた?イヤだなぁ、名前チャン


僕、いつ君の事好きって言った?」


白蘭の言葉でハッとなった。


あたしは白蘭に…大好きな白蘭に、一度も好きと言われた覚えがない。


『…』


黙り込む事しか出来ない。


何も反論出来ない。


だって、本当の事だから…


頭を鈍器で殴られた気分の様だ。


そんなあたしに容赦なく話し続ける白蘭。


「ん〜、でも名前チャンは今まで会った女の子達の中で一番身体の相性良かったしなぁ。どう?僕のセフレにでもなる?」


バシンッ


あたしは思いきり白蘭の頬に平手打ちをした。


『セフレになる…?バカ言わないで!あたしは本気で白蘭の事が好きだったんだもん!本当に…本当に大好きだったのに…』


涙が瞳から零れ落ちる。


何であたしはこんな男に惚れていたのだろうか。


自分が情けない。


ドンッ


突然白蘭に壁に押さえ付けられて、キスをされた。


だんだんと舌が口内に侵入してくる。


『ふぁ…っう…んぁ、や…めぇ』


歯列をなぞったり唾液を交換しあったり


美加は苦しくなり、白蘭の胸板をドンドンと叩いた。


口は離してくれたが、体勢はさっきのまんま。


『ぷはっ…ハァ…ハァ、…放して』


「さっきの平手打ち、効いたな〜
だからお返し♪」


そう言って手を上でひとつに拘束し、あたしの服の中に手を侵入させようとした時


コンコン


良いタイミングで誰か人が来た。


しかしそれを無視して服の中に手を侵入させてくる白蘭。

コンコン


「白蘭さん?美加いますか?」


正一だ!きっと帰りが遅いあたしを心配して、迎えに来てくれたのだろう。


『助けて!しょういッ…んんっ』


あたしは声を出して正一に助けを呼んだが白蘭に唇を塞がれ、喋れなくなった。


「名前!?
白蘭さん、とにかく入りますよ?」


あたしの様子がおかしいのに気づいたのか、正一はそう言って扉を開けた。


「!?!?」


正一が一番最初に目に入ったのは、名前と白蘭がキスをしているところ。


しかし、無理矢理キスをされている様に見える。


『ふ…んン…は、しょ…い、ちぃ…!』


名前が助けを呼んでいる。


そう思った正一は、白蘭から名前を引きはがした。


名前は苦しそうに呼吸をしている。


正一は白蘭を睨んだ。


「もぉ〜…正チャンのおかげで名前チャンとイチャイチャ出来なかったじゃん」


「白蘭さんっ…じゃあ名前は…名前はどうしてこんな…」


「さぁね、僕が無理矢理襲ったからじゃない?」


「っ…!」


正一が白蘭に襲いかかろうとした時


『正一!』


名前が止めに入った。


『止めて…正一、ダメ』


正一の服の裾を掴んで必死に止めている。


『あたしは大丈夫だから…大丈夫だから…』


「でも…こんなに震えているじゃないか…」


『正一』


名前は真っ直ぐ正一を見た。


その真っ直ぐな瞳にさっきまで怒っていた正一も


「ハァ…わかったよ」


名前の説得に承知した。


「白蘭さん、さっきはすみませんでした。
それと…隊長として感謝しておきます、今まで副隊長と遊んでいただきありがとうございました」


皮肉の言葉を言い礼をして、名前を連れて外に出て行った。



名前の手を引っ張って歩く正一。


『…ごめん、正一』


小さい声だが、ハッキリと、正一の耳にも聞こえる。


「ううん、僕こそごめん」


『正一は悪くないよ…!あたしが油断していただけだから…』


名前を見ると、悲しそうな顔をしている。


「名前…何があったか話してくれる?」


『…うん』



それから二人は正一の部屋へと向かった。



しばらくして、名前は正一に何があったかを説明した。


白蘭に女がいた事。


白蘭に襲われた事。


そして…



白蘭は名前の事を好きではなかった事。


「そっか…名前、辛かったね」


正一は美加の頭にポンッと手を置く。


『う…うぅ、しょ…いちぃ』


名前は正一に抱きついて思いきり泣いた。


その間、ずっと正一は名前の頭を撫でては辛かったね…と言ってくれていた。


『ぐすん…』


「すっきりした?」


しばらく経ってから、名前は泣き止んだ


『正一って…お母さんみたい』


「なっ、お母さん!?」


『うん!この前スパナにも言われてなかった?』


「うぅ…せめて、お父さんかお兄ちゃんにしてよ…」


『やだよ〜、だって正一はお母さんだもん』


フフッと笑う名前に、正一は微笑んだ。


「(良かった…いつもの名前に戻った様だ)」



「名前、明日からどうする?白蘭さんのところ」


名前はしばらく考えていたが、


『行くよ』


真っ直ぐと名前は正一を見る。


「そっか…。名前がいいならもう僕は何も言わない
だけど、何かあったらそのときは一番最初に僕に言うんだよ?」


『うん、わかってるよ』


やっぱり正一はお母さんだ、と思う名前であった。



ありがとう、正一。





あれから月日は流れ、今に至っている。


白蘭は毎日女を取っ替え引っ替えしては、すぐ捨てるらしい。


あたしが行く時にはイチャイチャしてるのに


あたしが付き合ってた頃も、さぞかしたくさんの女が寄って来たことでしょうね。


そう思うとイライラしてくる。



あれ?何かあたし口悪くなったな…


ま、いいや


コンコン


『失礼します、白蘭様。伝言係です、入りますよ』


そう言って開けたらやっぱり今日も女がいた。


『入江様からの書類です、机の上に置いときますね』


「ねぇ、びゃくらぁん…大好きぃ」


「僕も好きだよ」


女は白蘭の首に腕を巻き、白蘭は女の腰に腕をまわしながら言っていた。


あたしには言ってくれた事もなかった。


『っ』


溢れる涙を堪えながらあたしは白蘭に向かって礼をし、颯爽と白蘭の部屋を出た。


これ以上、聞きたくなかった。


白蘭の声も…女の人の声も


その気持ちを無理矢理押し込める様に、あたしは部屋に籠った。


目についたのは机の上に置いてある、まだつき合っていた時に撮った白蘭とあたしの写真。


『この時のあたし…すごく幸せそう』


机の引き出しを開ければ、護身用に持っていた短剣が閉まってあった。


名前はそれを手に取って、刃の部分に巻いてある布を丁寧に取っていった。


『これ、刺したら痛いだろうなぁ…』


鋭く光る刃の部分


だけどこんなのより、自分の胸の方がもっと痛い。


これでいっそ楽になれるなら


そう思って自分の胸に短剣を突きつけた名前。


『あたしが死んだら…白蘭、少しは悲しんでくれるかな
こんな良い女だったのに勿体ない、とか思ってくれるかな
ずっと…大好きだったのにな、白蘭』


名前はそう小さく呟いて短剣を握る手に力をいれた。



「ストップ」


短剣を握る自分の手の上に、白い手が重なった。



「何してんの?」


顔を上げれば夢にも思っていなかった人物。



『白蘭…』


何故だか白蘭は怒っているようで、いつもの穏やかな顔をしていない。


「ソレで何するつもりなの?」


『…見てわかんない?死ぬつもり』


「…死んでどうするの?」


そう言う白蘭の声は凄く怖い。


『いいから離してよっ…白蘭に何の関係があるっていうの…?
あたしが死のうが生きようが、白蘭には関係のない事じゃん!
早くあの女の所に戻れば!?』


もっと素直になりたかった。


たくさん聞きたい事があったのにこんな言い方しか出来ないなんて…


こんなの、全然可愛くないよ。



「ごめん…」



それはあたしを愛してくれなかった罪悪感から出た言葉?



それともこの関係に終止符をつける為の言葉?



「どっちも違うよ」


そう言った白蘭によって、胸に突き刺さる寸前の短剣は、そのまま白蘭の胸の前に持っていかれた。


「名前チャン、死ぬつもりなんでしょ?だったら先に僕を殺してよ…」


『っ…な、に言ってるの?』


「名前チャンがいない世界なんて、生きてても意味ないしね。
それに美加チャンに殺されるなら本望だよ」


優しい顔、だけどどこか悲しそう。


『あ、あたしは白蘭を殺したい訳じゃない…!』


ただあたしは白蘭に…大好きな白蘭に、名前って言う女の事をしっかりと心に刻み込んで欲しかっただけなのに。


名前の瞳からは大粒の涙が零れ落ちた。


むしろ白蘭には生きていて欲しい。


「僕を生きさせたいなら死ぬなよ…死ぬなよ、名前」



どうしてそんな悲しそうな顔をするの?



どうしてそんな優しい言葉をかけてくるの?



そんな事されたら、もっともっと好きになっちゃうじゃん。



『わかんないよ…だって白蘭はあたしの事好きじゃないんでしょ!?
なのに、どうして…?どうしてこんな事するのよ!!』


「僕は…僕の一番は今までもこれからも、ずっと名前だけだよ?」


『嘘言わないで!じゃあ何なのよ!あの女達は一体何なの!?
嘘つくならもっとまともな嘘ついてよ!』


「嘘じゃない!」


大きな声で怒鳴った。


白蘭が動揺している。



初めて見た…怒った白蘭も、悲しい顔をしている白蘭も、動揺している白蘭も


全部、初めて。


「嘘じゃないよ…全部。
僕が名前以外の女の子達と居たら、名前はどう反応するかなって思って試してみたんだ。
だって名前、正チャンにも僕と同じ様に接しているじゃん!
部屋行ったり、ご飯食べに行ったり…僕彼氏なのにさ…。
ううん、正チャンの方が彼氏って感じだった…。
だから正チャンに嫉妬していた
名前と同い年で出身国も一緒、おまけに隊長と副隊長っていう関係だよ?
いやでもヤキモチ妬いちゃうよ」


子供の様に拗ねている白蘭


『で、でも…!
あの時、白蘭はあたしの事好きだなんて一言も言ってないって…』


「だってアレは本当の事でしょ?
僕はずっと名前に好きなんて一言も言った事なかったもん」




…そうだった


白蘭はずっと…



『うぅっ、騙すなんてヒドいよ…』


短剣は涙と共に落ち、


「騙す?イヤだなぁ、名前。




僕は最初から愛しているとしか言っていないよ」



愛を育んだ








愛していた故に



(白蘭…あたしが居ない間、女の子と寝た?)
(言ったでしょ?今まで会って来た女の子達の中で、名前チャンが一番相性良かったって♪)
(え!?アレって嘘じゃなかったの!?)
(僕が嘘をつくように見える?)
(…見えません)





〜オマケ〜


「それで?」


ボリボリと煎餅を食べながら名前の話を聞く正一。


『それでね、白蘭ったらさぁ〜!』


「へー…」


『ちょ…話し聞いていますか?正一君』


「聞いてるよ、惚気と言う話をね」


「んもぉ〜!正一なんか知らない!帰る!」


そう言って名前は研究室から出ようとする。


「白蘭さんの所?」


『なっ!ち、違う!』


正一はアタリだな…と小さく呟く。



「名前」


『ん?』


正一に名前を呼ばれて振り返る名前。


「幸せになれよ」


『正一…うん、絶対幸せになるよ!ありがとう』


名前は走って行った。



『白蘭、待っているかな…』


「名前チャン!」


『うわぁ!』


白蘭の所に行こうとしていた途中、突然自分の名前を呼ばれて驚いた名前。


そこには自分が会いたいと思っていた人物がいて。


『何だぁ…驚かせないでよ、白蘭』


「あはは、ごめんごめん
だって早く名前チャンに会いたかったんだもん」


ダメだった?と言う白蘭の言葉に顔を真っ赤にする名前。


『ううん、そんな事ないよ…
あたしも早く白蘭に会いたかった』


「名前チャン…」


そう言ってお互いどちらともなく抱き合った。



「シたい…」


『へ?うわぁ!』


名前は急に白蘭にお姫様だっこをされて、颯爽と部屋に連れてかれた。


ドサッ


ベッドに名前を組み敷かせ逃げられない様にする。


「僕を待たせた3ヶ月…存分に身体で味あわせてあげるね♪」


『えっ、ちょ…まっ…ええええええええ!?』



その後は、気を失うまで白蘭さんに美味しく食べられた名前チャンでした♪




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