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もう一度叶えてください





銀さんがどうやら僕に愛想を尽かしたらしい。風の噂で聞いたみたいな。


嘘だ。愛想を尽かしたのは僕のほう。








ぽつぽつと雨が屋根に当たる音。静かな万事屋に響く。


銀さんがなんだか浮気してますなんて、ほんと笑えない冗談。

でも冗談ではないから僕はこんなにも悲しい。


だってこの前見てしまったんだもん。なんで見ちゃったんだろう。みなけりゃよかった。

馬鹿だろ僕。どこまで運がないんだ。


あんなんみなければ
いつもと違う道通らなきゃ

そうすれば何事も無かったかのように毎日過ごせるのに。疑心暗鬼に苛まれることなく

ただずっと
銀さんをみていられたのに



手の中に握っていた銀色のキラリとした指輪を見た。大分前に銀さんに告白して、それでしばらくして貰った指輪。



あん時の銀さんカワイカッたなぁ


なんてぼんやりと


でもその指輪は僕の指にはブカブカだった。まるで僕達の心の様に不確かなものだった。




悔しいな





僕はいつも肌身離さず持っていたのに




あんたは一度だってその指にはめてたこと、なかったですよね。


一度だって僕に唇を寄せてくれた事、なかったですよね









「もお疲れたなぁ」



しとしととふり続く雨。僕のそんな呟きは小さい雨音にさえ掻き消されてしまうほどに




胸が痛いだなんて

どこまでも女々しい




勝手に愛して
勝手に告白して
勝手に舞い上がって
勝手な終わりをつける

つーかそもそも付き合ってるなんて思ってるの僕だけなんじゃないかって






いつもいつもあんたの背中を追い続けて


銀さんの事考えるのは
もう疲れた

銀さんを愛すことに僕は限界を感じていた








「ただいま―」


ガラガラと玄関の開く音。
銀さんが帰ってきたのか





「お帰りなさい」

「おうたでーま」

「銀さん」

「ん?」

「お話が、あるんです」











明日この銀色の小さな塊をすてて


それで終わり。
もうこんな生産性のない恋なんて終わり。


やってらんない



この胸をしめる痛みも


あんたのことばっか考えるこのいかれた脳も



全部終わり。














恋の終わりに残るのは







いつだって














(僕だけを愛して欲しかったです)



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