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現実、真実、夢みたあとの



※R15






―――波打つ柔らかな髪が俺の頬を撫でて、肌は白雪みたいで、か細い指は俺自身を愛撫していく。
桃色の唇は甘い囁きを鼓膜に刻み付け、俺は何時も何時も、渇きを満たされるんだ。

だけど、そんな君は近くて遠い。













「――あ…っ…」

声を上げてタカ丸は眼を開けた。
思考回路はゆっくり活動を始め、夢と現実を区別させていく。

「っ…俺のバカ…」

布団の中をそっと覗き込むと、若さ故の衝動が寝間着に染みを作っていた。

(…夢に何興奮してんだっ…)

こう言う時、一人部屋で心底良かったと何度思ったか。複数部屋の生徒はどうしているんだろうと考えながら、此れ以上汚れぬ様にタカ丸は布団から出ようとした。

(それにしても…夢の中の子って…何か…やっぱり…)

その時。

「タカ丸さん、起きてますか」

部屋の戸が音も無く開いた。

「あ、ああや綾部っ!!?」

条件反射的にタカ丸は布団で身を隠した。

「…どうしました?」

「や、あのあの…」

黙っていればバレる事等無いのに隠し通せる気がしない。
背中に冷や汗が伝う。

「ど、どしたの?今日は授業休みだよね?」

「えぇ、だから皆でお昼に町のうどん屋にでも行こうって三木が」

「行く、行くよ。お昼ならまだ時間あるね」

昼までに此の濡れた寝間着を洗っておかなければ。

「待ち合わせは正門でいいのかな?」

「そうですね」

「分かった、じゃあ」

「タカ丸さん」

「へ?」

綾部がタカ丸の前にしゃがみ込む。
上目遣いの瞳は、まるで餌を求める猫の瞳の様だ。
猫の口から、とんでもない事が発せられた。

「私の事でもオカズにしてました?」

「ぶっ!!!!!」

「おやまぁ。図星?」

「ち、違っ…!俺はそんな…」

確かに綾部の容姿は、夢の中の人と酷似していた。

柔かな髪。
白雪の指。
桃色の唇。

だが其れが綾部のつもりはなかったのに、

(確かに似てるとは思ってたけど…だけど…!!!)

否定が見付からずタカ丸は俯く。
綾部は身を乗り出して、下から視線を合わせた。

「あ、綾部…?」

見つめられると心臓に穴が空きそうだ。
猫目に気を取られ、綾部の手が布団に伸びた事に気が付かなかった。あ、と思う前に布団は剥ぎ取られる。

「うぁ!!?」

「若いですねぇ、タカ丸さん」

自分より二つ年下の少年が歳食った物言いをする。
寝間着の隙間から覗く脚に綾部の白い手が添えられた。

「あや、べ…?」

「手伝ってあげましょうか?」

「えっ…」

手伝う?
何を?
どうやって?

「…や…!?」

脚に添えられた手は膝から上へ這い、止める間も無く下帯の隙間からタカ丸自身を取り出す、。

「ちょ…ひっ…!」

欲を吐き出したばかりの其処は簡単に熱を帯びた。

「やっ…やだ、綾部!離し…」

「黙って下さい」

黙れと言った方の口が黙り、赤い舌が欲望の先端を嘗め上げた。代わりに濡れた音が声を上げた。

「やだ…あ、っ…ふぁ…!!!」

(っ…綾部の舌が…手が…!!!?)

唇が溢れ出る先走りを吸い上げ、白雪の指はタカ丸の自身を優しく上下する。

「ん…あっ、あぁっ!!」

一人で扱う時には決して味わえない快楽が身体中を巡る。
布団に付いていた手は既に己の身体を支えられず、代わりに背中が布団に付いた。

「んっ…はぁ…」

綾部の口からも甘い吐息が漏れる。
其の声も、息も、肌や耳を霞めば、より快楽を誘う。

「っ…あや…ひ…っ!」

行為を制止しようとしていたはずの腕は、只赤く染まった顔を隠すのに必死になっていた。
だが不意に綾部の濡れた指が或る一点、後ろの蕾に触れた瞬間、喘いでいただけのタカ丸が声を上げた。

「嫌っ…!?ソコ、きらっ…い…!!!」

淫らに動いていた綾部の指が止まる。
指先からはポタポタとタカ丸の精液が布団に染みを作っていった。

「………」

「綾部…?」

「……」

「何……っあ!!?」

急に止まった動きにタカ丸は身体を少し起こそうとしたが、離れた指がまた自身を握ると体勢は崩れた。

「や…も、…綾部だめっ…んぁっ!!」

生々しい水音が再び部屋に響く。
綾部は先程よりも強くタカ丸自身を握り、歯を立て吸い上げた。

「いっ!…らめっ…や……っあああああ!!!!!」

溢れゆく熱い体液が外へと飛び出す。
体外へと吐き出された欲は布団に零れる事も、タカ丸の寝間着に飛び散る事も無く、全て綾部の口内へと流れた。
ごく、ごく、ごく、綾部の喉が上下するのを見て、タカ丸の羞恥は絶頂だ。

「綾部っ離し…て…やっ…やっぁ、や…!!!」

絞り出す様に吸い上げた後は指に絡まり付いたモノも全て嘗めとって綾部はタカ丸から離れた。
まだ横たわったままのタカ丸の息は荒い。
労る様に剥ぎ取った布団を腹の下に掛けてやろうとすると、タカ丸の唇が小さく動いた。

「な、何で…俺、や、だって言った…のに…っ…」

「…だってタカ丸さん、気持ち良さそうだったから」

綾部の声がすぐ耳元で囁く。唇が耳朶を掠めば、肩は跳ねる。

「っ…!俺はっ…」

「其れに」

跳ねた肩に手が添えられ、赤く染まった頬が綾部に向く。
綾部の顔が近付く。
顔と言うよりも、濡れた桃色の唇がタカ丸の唇とほぼ間無く近付いた。

「あっ…!」

「ねぇ、タカ丸さん。何で私の事なんて夢に見たんですか」

「何で…って…」

「何で」

「…何で…言わすの…っ」

「タカ丸さんの口から聴きたいんです」

「………其の…」

もう、反らすなんて出来ない位に唇が近い。

「…好き…だか、ら…っ」

気持ちを言葉で紡ぐ度に、唇が掠めていく。
其の行為に綾部は唇を更に近付け、重ねた。
タカ丸が逃げない様に、頬に手を添えて。

「っ…あ、や…んっ…」

「もっと言って下さい」

重ねたまま、声を出せばタカ丸の口の中に自身の言葉が注がれる。
タカ丸は震えた唇で何度も何度も

「好き…綾部が…好き、だから…」

行き場の無かった手はいつの間にか綾部の背中に回っていた。
必死に掴まって来るタカ丸に深く口付けた後、綾部はタカ丸の口内へ言葉を注ぐ。

「夢の中の私より、ずっと良かったでしょう?」

其れを飲み込めば、タカ丸は『うん』と唇を震わせた。









――夢の中の君も、現実の君も、俺を惑わせて狂わせる。

でも、もう遠く無いよね?







終。










――――――
甘く終わらせたつもり。
実は最初は暗く終わる予定でしたけど、なんか私らしくない気がしたんでボツりました。綾部が嫌な奴だったんだ…。
ちなみに伏線貼ったつもりなんで一応続く予定はありだけど書けるか…。書きたいけど。次は本番ですかね!?


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あきゅろす。
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