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甘さ控えめの愛って事で






控えめなんて誰が言ったの。









「うぅ…気持ち悪い。無理。何か色々無理。うぇぇ〜〜」

床に伏して伊作が弱音を吐いた。
その横で伊作の茶碗に温めの湯を注ぐ留三郎が呆れながら息を吐き出す。

「弱ぇくせにあんな飲むからだ。ほら」

包みに包まれた薬を差し出され、伊作は布団に顔を埋めた。

「…それ苦いんだよね…よく効く様に薬草多めに入ってるから」

「作ったのお前だろうが」

「自分で飲む羽目になるなんて…やっぱり僕って不運なんだ」

「不運じゃなくて自業自得って言うんだよ」

明日は休みだ。そう言って酒を飲もうと言い出したのは小平太だった。
酒は弱いが皆で騒ぐのは楽しいからと伊作もその酒盛りに参加した。
長次が弱めの酒を用意してくれており、また其の酒が酒に弱い伊作の口にも合うものであった。
後先なんて考えずに喉を潤していたら、気付けば寝間着に着替えさせられ自室の布団に横たわっていた。

「起きたか、このバカ」

留三郎の声が頭に響いて、二日酔いだと自覚したのだった。


「ほら、早く薬飲め」

「留さんが口移ししてくれたら飲む」

腕を伸ばし、「んー」と唇を突き出した伊作に留三郎は

「お前、治んなくていいわ」

と突き放した。

「ちょ!酷い!非道!」

「何で苦いって分かってる薬を口移しで飲ませなきゃなんねーんだよ」

「病気の時は優しくされたいんだよ!甘えたいんだよ!分かれよバカ!!」

そう言って伊作は留三郎に背中を向けた。
病気でなくても甘えてくるくせに。
そうは思ったが、仕方ない奴、と思ってしまう辺り、留三郎は伊作に甘い。
具合の悪い時と言うのは、精神が不安定に成りやすいと伊作も言っていた。
本人も其れを分かっているから余計弱音や甘えを示してくるのだ。

「伊作」

「…何だよ」

「ほら、身体起こせ」

「……」

ピリピリと薬の包みを破る音と留三郎の声に伊作はゆっくりと身体を起こす。
留三郎の口の中に薬が二粒落ちていくのを目で追った。




「にっ…がああああああああ!!?」


「あれ?」

「おま、どぅやっ…ら、こん…にげぇぇぇぇ!!!おええええ!!!」

口元を抑え、留三郎は悶えた。相当な苦さに涙目になっている。

「あっれー?おっかしいなぁ。其処まで苦くしたつもりないんだけど…配合間違っちゃったかなあ?」

「『間違っちゃったかなあ?』じゃねぇよ!!っ…にがぁぁぁ!!」

「えー?そんなに?…いっ!?」

留三郎は苦さを何とか堪え、素早く水を口に注ぐと伊作の肩を掴んだ。
勢い余って、がちっと歯の当たる音がして痛かったが、そんな事は気にしていられない。
其れよりも押し入ってきた留三郎の舌から広がる薬の味の方が衝撃的だった。

「っぅえ!にがっ…んぐ!!」

思わず其の苦さから逃れようと唇を離そうとしたが、其れが出来たのは一瞬で、また留三郎に唇を包まれた。
もがく伊作に構わず侵入していく舌は、先程よりは苦さが薄れていた。
こく、こくと喉が動き、小さくなった薬の粒は伊作の体内へ流れていく。
息継ぎで離れてまた鬱がれる度に苦さは薄れていき、四度目には何時も交わす口付けの味になっていた。

「は、…はっ…はぁ…」

激しく胸を上下させ、息をする伊作を下に留三郎は思い知ったかと笑ってやった。

「お望み通りの口移しだ。有り難く思えよ?」

「っ、留のバカやろ…っ」

「作ったのはお前だろ。ちゃんと責任取って飲むのが…わ!」

伊作の腕が留三郎の装束を強く引いた。
唇が掠れる寸で止まり、二人は至近距離で視線を交わす。

「留も責任取りなよね」

「はっ…?」

伊作の手が留三郎の耳から顎への輪郭をゆっくりと伝い、留三郎の引きつった唇に指を這わせた。







「あんな口吸いされて、我慢なんて出来ると思ってるわけ?」









終。







おまけ


「うぅ…気持ち悪い。お腹痛い。腰痛い。」

「二日酔いのくせに盛るからだ、バカ」

「だって留さんが煽るから」

「煽ってません」

「煽りました」

「煽ってまーせーんー」

「煽りまーしーたー」

「何なのお前」

「留さんこそ何なの」



――お互い様と他人は言う。



終。







 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
私は精神的には伊食が好き、肉体的には食伊好き。
伊作が仕掛けて食満がそれに乗っかるのが我が家のスタンスです。

てか伊作元気だなおいwwww


あきゅろす。
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