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眠り姫はキスを強請る








どちらかと言えば色白の彼の頬がほんのり桃色に染まって、大きな瞳はぼんやりと虚ろに揺らぐ。小さな唇から一つ、こほんと咳きが漏れた。

「はい、ちゃんと着て」

「…大丈夫なのに」

「ダメだよ、熱あるんだから今日は授業休まなきゃ」

綾部の寝間着の襟を直して、タカ丸は綾部を布団へ寝かせた。







朝、起きてこない綾部に気付いたタカ丸が部屋へやってくると、綾部はまだ布団にくるまったままだった。寝起きが良いとは決して言えない綾部の事だから、と思ったが顔を上げた綾部の様子が何時も違い、頬に触れてみるととても熱かった。
生憎、同室の滝夜叉丸は昨晩から委員会で不在で、熱を訴える相手も居なかったと言う。

「伊作くんみたいな不運だねぇ」

「…タカ丸さんが来てくれたから良いです」

布団から伸ばして来た手を取ると、熱のせいで熱く、キュッと握ってくる力は弱々しい。
名残惜しいがゆっくりと手を離すと綾部の手はパタリと倒れた。

「…行っちゃうんですか?」

「お昼にまた来るから。ちゃんと寝てるんだよ?」

「ん…」

よく絞った手拭いを額にあてがい、いいこいいこ、とふわふわの頭を撫でてやったら綾部は眼を瞑った。

「タカ丸さん…」

「んー?」

「ちゅー」

「…へ?」

「口、吸って」

眼を瞑って口を尖らせた綾部はまるで眠るお姫様の様だと一瞬だけ考えた。
だが、世間一般なお淑やかであろうお姫様は、口吸い等この様に強請ったりはしないだろう。

「いいこで寝て待ってます。だから、口吸いして下さい」

「え、え、えぇ!?」

うっすら眼を開けて見たタカ丸は熱のある綾部より頬を染めていた。

「して。してくれないと熱上がります」

どう言う根拠なのだろうか。
綾部の両腕が大きく広げられる。
こっちに来いと言う事だ。言い出したら聞かないのが綾部、言われたら聞いてしまうのがタカ丸なのだ。
タカ丸はおずおずと綾部の顔の横に手を置き、下にいる綾部に視線を落とした。何時もは自分が上を見上げるばかりだから、今の体勢にはどうも違和感を感じる。

「…綾部をこうやって見るの、初めて…」

「僕もこうやってタカ丸さんに見られるの初めてですよ?」

つまり何時もの関係とは、まるで逆と言う事だ。
綾部の腕がタカ丸の首に回る。一つ一つが初めての行為で、熱はないはずなのにくらくらした。

「…上手く…出来ない、かも、だよ…?」

「貴方がしてくれるから意味があるんです」

首に回った腕に少しだけ力が入った。
あとは引き寄せられるままに眼を瞑る綾部の唇にゆっくりとタカ丸は唇を重ねた。

「ん…」

綾部の口の隙間から漏れた声にタカ丸の心臓が高く脈打つ。
もっと、と強請る様に自らも唇を押し当ててくる綾部に答え、何度か角度を変え、其の熱い唇を吸った。








「舌。入れて良かったのに」

「っ…バカ」

調子に乗ってきた綾部の額にコツンと小突いた。

「…いいこで待っててよ?」

「…もう一回してくれたら」

「…綾部……」

「風邪の時は優しくしてください」

「…………」

俺の方が熱上がりそうだよ、と頭を抱えたが、眼を瞑って強請る綾部の唇にタカ丸は、もう一度唇を重ねたのだった。





(風邪の時じゃなくたって、言う事聞いちゃうよ)





終。







 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「少年リヤカー」の月城様に捧げました。
イチャコラした綾タカは好きだけど、タカ丸はもう少し綾部に厳しくしていんではないだろうか。

…出来ないのがタカ丸だよねー/(^o^)\


綾部は普段からあの手この手でタカ丸に色んな事強請ってんだろうなぁ。
「好きって言って下さい」
「頭撫でて下さい」
「ぎゅーってして下さい」
「嘗めみたいな!!⌒ω⌒

その度その度タカ丸は理性と闘って呆気なく負けて、綾部の言う事聞いちゃうんだよー。

…意志の強いタカ丸ってなんですか?(^q^)


あきゅろす。
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