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いくつ?いくつになったの?と向き合い膝上に抱っこされながら問われる。
目前にある金色が近すぎて一護は顔を背けながらジュウロク、と答えた。
腰に回された腕は後方でホールドされて逃れられずにいる一護の手は自然と浦原の肩へ置かれる。
連絡も無しに部屋を訪れるのは彼の十八番であるが、有無を言わせずに攫われたのは今回が初めてで、一護は今浦原の自室、寝乱れてもいない布団の上に居た。
なんなんだ、一体。
浦原の意図が読めずに先程から視線をキョロリと回している。
きっと誕生日だって事は知っている筈なのに、男の口からはおめでとうの言葉が一向に出てこない所を見ると何がしたくてここに連行されたのかが分からない。
一護は更に視線を彷徨わせた。

「こっち見て」

冷たい指に顎を取られて視線を合わす。金色の瞳がキラリと色を変えて光る。どきりとしたのは夜の静けさに金色の光る音が背中を撫でたからだ。
既に12時を越し、真夜中へと匂いを変えていく夜に見るには少しばかり背徳じみている色彩。

「なんだよ…」
「ジュウロクになったの?」
「そうだよ…。で?」
「そう。ジュウロク、かあ…」
「なんなんだお前…」

本当に、何がしたくてここまで連れて来られたのかが分からない。そろそろ一護の堪忍袋の緒が切れそうである。
取り敢えず離してくれないかなあ。そう思って肩を押しのけるも、浦原の腕が腰を引き寄せて更に距離を縮めてしまうから当分はこの腕の中から逃れられそうにもない。ハア、とため息を吐いても目前の男はただじーっと一護を見てるだけで次なる行動へ移らないでいた。

「十六になったからなんだよ」

というかその前に言う事があったりしねえ?
浦原が訪れる前に携帯へと入った新着メールの数々。友人たちと妹。家族に至っては12時丁度に部屋の中に入ってきて「おめでとう!」と祝ってくれた。面と向かって言われて尚且つ妹達は可愛らしい絵文字をふんだんに使ってメールをくれる。沢山のおめでとうに何度もありがとうと繰り返した忙しい真夜中。
だけど今はどうだ。
この男は先ほどから瞳で無言の威圧を投げるだけでおめでとうとも言わない。
それが少し、いやかなりムカつく。
一護は徐々に苛立ちを浦原へと向けて眉間の皺を濃く刻んだ。

「十六回」
「…は?」

ようやっと口を開いたかと思えば先ほどとなんら変わらない16の言葉。
訝しげに顔を歪めれば落ちてきたのは小さなキス。
ちゅ。眉間にくすぐったい感触を味わって一護は咄嗟に顔を背けた。

「な、なに!?なにすんだよ!」

まさか。まさかキスをされるとは思ってもみなかった。
浦原と付き合いだして2か月。してきた事と言えば手を繋ぐ事くらい。あとは気持ちを伝える事くらい。中学生でもこんな健全なお付き合いはしていないだろう、おままごと的な付き合い。
初めて触れられた唇の感触が一護をぎょっとさせ、顔を真っ赤にさせた。

「キス」
「…っ!いや、だから!ななななんでキスだよ馬鹿!」
「君、ジュウロクになったでしょう?」
「なったけど!なったからって、き、キスって!」
「十六回、してあげる」
「はあっ!?ちょ、ま、って、浦、…さんっ」

ちゅ、ちゅ、ちゅ。
まるで味わうようなキスだと一護は思った。
上唇と下唇で皮膚を挟み、噛む様に口づける。眉間に、額に、頬に、眼尻に、鼻先に。ちゅっちゅちゅむちゅむちゅっちゅ。鳴った可愛らしい音が一護の顔全体、そして体中を真っ赤に染め上げてしまう。
か、勘弁してくれ!
確かに好きだと告げたのは一護の方だったが、別にこういうお付き合いを望んで言った訳じゃない。振られる覚悟で伝えた気持ちであったが、浦原からの返答はまさかのイエスで呆けてる内になぜかスタートしていたお付き合いだった。
それがまさか、今この場では大変な事になっている。

「ばか!や、めろって…っ」
「まだ後、6回」
「ちょ、っ勘弁してくれよ!……んっ、くすぐったい!」

ちゅ。今度は顎にキスされる。

「後5回。今度はどこに欲しい?」

間近で聞こえる浦原の声は普段では聞かない声色を含んでいて、見知った浦原では無いような感覚がして怖くなった。
ぐいぐいと肩を押しのけて逃げようにも馬鹿力はより密着させようと引き寄せる。
ちゅむ。食まれるようにして耳朶にキスされる。ああ、だから声が直に聞こえたのか。場違いな事を思った瞬間に鼻孔を燻ったのは浦原の香り。仄かに漂った石鹸の香りが煙草の匂いと混ざってどこか甘い。甘くも辛くて浦原そのものだと思った。思った瞬間、羞恥心が戻ってくる。

「…お願いだから、浦原さん…」
「まだ4回、残ってますよ?」
「だから……ダメだ。俺には無理…」
「フム。一応、ここまで我慢したつもりですけどね」
「え?」

降り注ぐキスの嵐から逃れようと俯いた顔。浦原の声にそろりと顔を上げれば柔和に笑んだ金色に瞳を捉えられて目が反らせられなくなって困り果てる。

「本当はね。」

怯えさせない様、頬に触れる掌は優しい。

「君が二十歳になるまで待つつもりでした」

まあ、つもりで終わったのだけど。フと自嘲気味に笑う姿に胸がドキリと高鳴る。
自分だけだと思っていた。一護は金色の瞳を見て思った。
一護だけが好きなんだとどこかで感じていた恋だ。子供の気持ちに優しい大人は答える振りをする。ひねくれた考えではあったが、いつか来るサヨナラに備えて取り付けた保険だ。それが今、からりと崩れ始めていく。

「我慢できなかった。早く大人になってよ一護さん。」
「ば、か言うなよ…やっとジュウロクになれたんだ…」

出来るものなら早く大人になりたいのは一護の方だ。大人と言うか、浦原と肩を並べる事が出来る様になりたい。力も頭脳も思考も何もかも。浦原に認められる大人に、早くなりたい。

「さすがに、ジュウロクの子に手を出すのはなあ…」
「……出してんじゃん。既に、出してんじゃん」
「ああ。キスは手を出す内には入らないっスよ」

ノーカウント。ノーカンです。
笑った浦原を見てちくしょうと声を出す。

「…あと、……なんかい?」

不貞腐れて唇を尖らせながら浦原を睨みあげる。出した声は拗ねていて、いつもより子供っぽい。

「あと?4回ですよ」
「……そ、か…」

慣れていない甘ったるい行為と空気に戸惑いと羞恥が勝って過ぎた12回分を覚えていない。しまった…もったいない事をした。心が唸り始めて胸をきゅうっと締め付ける。
どれもこれも、全て子供にするキスで愛は確かに詰まってはいるが可愛らしくて物足りない。
震える唇。そして震えた声で一護は小さく小さく懇願した。
ちゃんと、キスして。
そう告げた一護の真っ赤に染まった耳を見て浦原はフと笑う。
愛おしい愛おしいと唸りを上げた両者の心はムズ痒い感触を与えて夏の真夜中をピンク色に染め上げた。












ハッピーハッピーハッピバースデイ一護!!!永遠の16歳に乾杯!!
つなぎでハピバ小説です。ごめんなさい今書きあげている最中の誕生日小説が今日中にUPは出来ませんでしたorzおおう…
明日にはUPしたいと思います(`・ω・´)キリッ




I'm so glad to tell U




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