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サクセス・ユートピア





サクセス・ユートピア




アハ、笑った顔はそのまま眉間に皺を寄せて虚ろな瞳でイイと伝えた。舌先をデロリと出して口付けを強請る。応えて深く絡ませれば鼻で甘ったるく息をしてあえやかな声を漏らした。
腕は浦原の肩と首を抱き寄せて抱擁と激しい抽出を強請る。荒い息遣いとベッドの唸る音。そして酷く甘ったるく鳴いた一護の声に浦原も吐息を漏らした。
もっと。対面座位にて交わる時は彼の心が嵐によって掻き乱されている場合が殆どで、普段なら見せる事のない痴態を繰り広げる。
イイだなんて言った事無い癖に。少しばかり咎める様に中へ収めた性器をずるりと引き抜けば嫌だと言って泣き強請る。
肩に噛み付いた一護の犬歯が皮膚をブツリと押し潰して痛みを味わせる。冗談じゃない。常に獣みたいな殺意を纏っているのに、セックス中にも野生の本能を出されたのではこちらの身体が持たない。

「いった…っ、噛まないで、下さいって!」

腰に手をあてがったままで浦原は仰け反り尖り過ぎた犬歯から逃れた。
だが一護の琥珀色は危ういくらい曖昧に浦原を見定めている。正常を失いつつある色だ。
最早獣の部分と同調しきった彼に言葉と理性は通用しない。
ヤバイ。思った瞬間には一護の手が浦原の襟足を鷲掴みにし、髪の毛を凄い勢いで引っ張る。グっ!喉で鳴いて急所を晒した。
ガブリ。可愛らしい擬音でお送りしているが実際はこんなもんでは済まされない。剥き出しにされた犬歯と綺麗な歯並びのエナメル質な歯が皮膚を噛み、突き刺したのだ。今、彼の口内は鉄の味を広げて甘く舌先に乗せただろう。

「…いい、加減にっ」

ぶわっと血が頭に上り、浦原は腰へと爪を食い込ませながら強い抽出を再開した。

「アっ!!ゃ…っ!」

喜んでる癖に拒否の言葉を紡ぐのは反則だ。
ぷつりと突き刺した歯を抜いて一護の瞳が浦原の金色に合わさる。少しだけ人間臭い色彩が浮かんで浦原はホッと胸を撫で下ろした。
それからは必死で快楽を求めさせた。獣の本能に勝る快楽を与えんと腰を巧みに振るい、一護のイイトコロばかりを貫く。突つく、押し貫く。奥深くまで入り込んだ熱の切っ先が前立腺を刺激すればゴリっとなんとも言えない音が鳴る。その音を身体奥で感じ取って一護は舌足らずな声で浦原の名前を叫び続けた。背中に食い込む爪先が皮膚を抉ったと同時に浦原と一護は精を放つ。
どくどくどくりどく。
生々しくも粘着質な精液が注ぎ込まれた。精を放った後の倦怠感に腰を小刻みに震わせ、一護は虚ろな視線で面白くないとだけ告げた。
避妊具を通して感じる熱はフェイクだと一護は思う。確かな熱をゴム一枚で隔てられるのは嫌だとも感じ、そのまま後ろに倒れ枕の海に沈んだ。
両腕を広げて大の字で倒れる。浦原は萎えた性器を引き抜き、スキンを取って口を縛りベッド横のゴミ箱へと放り投げる。酷使される事の無くなった精子達は明日、生ゴミにて廃棄される。皮肉な物だ。ヴァギナを持つ生き物が全て消え去った後のこの星の未来は既に決まっている。破滅だ。

「…ハンプ、吸いてー」

天井に向けて発した声を浦原は拾い上げ、サイドテーブル上に置かれた巻き煙草の一本を手に取り口へ咥え、マッチを擦り火を点けて一口だけ吸い込んだ。強いタールが喉を焦がす。まだ慣れない味に目を細めて一護の口元に煙草を持っていく。
自然な動作で咥えながら深く深く吸い込んで紫煙を一旦呑み込んだ。じんわり、緩慢に広がるタールが身体を蝕む感覚にぶるりと震える。
そして二口目は天井へぶつける様に吐き出した。
弧を描く様にゆらりと揺れ、空気に乗ってあちらこちらへとゆっくり触手を伸ばして消える。
浦原は興味無く視線を反らしてティッシュを三枚以上引き抜いて一護の腹部から下肢にかけて拭った。吐き出された精液がべっとりティッシュに付着する。一護は煙草を吸いながら好きにさせる。

「俺、ゴム嫌い」

掠れた声に浦原が視線を向ける。

「そーしなきゃ子供が出来る」
「なんのジョークだ馬鹿」

前立腺に精液ぶっかけた所でガキなんざ出来るか。乱暴に紡いだ言葉は浦原の胸に引っかかりぽとりと底へ落ちた。

「知らなかったんですか?3年程前から試験管ベイビーでは無く交接器改造計画が実行されました。一護さん、帰星したのはいつ?」

いつに無く真剣な金色を見つめて唇に挟んだ煙草を上下に揺さぶりながらフンと鼻で嗤う。

「1億と4876年前」
「……3ヶ月前っスね。エアポートから降りる時に除菌と言って霧状のエアクリーンにかかったでしょう?」

一護は思い出す。久しぶりに故郷でもあるこの星に戻ってきたエアポートでの出来事を。
確か、宇宙で流行り出した新種のウイルスによる死亡が続出、対策として帰星者には必ずエアクリーンで殺菌する事が義務付けられた。
ひとつのカプセルに入り一人ずつ殺菌された、あの気の遠くなる様な時間。優に13時間は足止めを喰らい酷く苛ついた事を思い出して眉間に皺を寄せた。

「13時間とか馬鹿みてーに待たされたんだけど!ちょーイラついた!」
「そう。そして君は騒動を起こした。馬鹿じゃないっすか!あの時アタシが保証人になってなきゃ今頃あんたは檻の中っスよ?!」
「昔の事をいちいち引き摺ってんじゃねーよお前ねちっこい!」
「ねち…っ…。まあ兎に角っすね、あのエアクリーン、滅菌とか殺菌とかの類じゃありません。ミクロのウイルスです。」

浦原の言葉に一護の顔は顰められる。

「……げえっサイコーな事してくれんじゃねーか。…すげえ勢いでぶっ掛けられたから飲んじまったけど?!」

最悪!勝手にイって顔射しやがって!続く言葉のどれもが耳を塞ぎたくなる程の汚さで浦原は一度その口を石鹸で洗ってやろうかしらと心中で毒吐いた。

「んで。そのウイルスってのが身体のホルモンを90度だけ変える代物だ。見た目に影響は出ないが、中。ここの部分が作り変えられる」

トン。神経質な指先が一護の腹、ヘソの数センチ下を撫でた。女性で言う子宮がある場所を的確に指した浦原の指先は冷えている。先程まで熱を分かち合っていたのに、もう冷たくなっている。

「あれから三ヶ月経ちました。君、最近腰が重いだとか言ってなかった?」
「ヤリ過ぎてな!」

てめえのせいだろうが。ガルル、唸るが浦原からしてみればいつでもどこでも盛っては人を押し倒す一護には言われたくない台詞だった。しかしここは言葉を飲み込む。

「腰が重たくなったのは前兆です。ここに、子宮ができている。」
「断言かよ」
「ええ勿論。なんせウイルスを作ったのはこのアタシですから」

にっこり微笑んだ浦原の瞳の奥にマッドサイエンティストの狂気がゆらりと蠢いた。一護は眉間に皺を寄せながらハっと鼻で笑ってみせる。

「ああ、だからお前ゴムなんて付けだしたのか」
「いくら研究の為だろうが、子供なんて作りたくないっス」
「俺達の子供はきっと可愛いぜ?」

肩肘をつき上体を起こしながら浦原の頬を撫でる。

「…ルー・ガルーと試験管ベイビーの子供なんて奇形だ」
「可愛いだろうが」

元々、ぶっ壊れた世界だ。正常が一番クレイジーにぶっ飛んでると思わねーか?舌舐めずりをしながら煙草を吐き捨てシーツを焦がす。
首元に回された腕が噛まれた傷口に触れてはチリリと痛みを思い出させた。
閉ざされた唇を舌先でなぞって口端を舐めて上唇を食んで下唇をデロリと舐めた上で跨ぐ。未だに二人は裸で、くっつけた肌と肌はしっとりと湿っていた。
一護の手は首筋の傷跡に触れ、流れる様に鎖骨から胸元、胸元から腹筋、ヘソから下肢に触れていく。ピクリと浦原が動いた。琥珀色は見逃さずにただ口角を上げて口付ける。隙間を狙い侵入させた舌先は冷たい舌に捕らわれ、より濃い愛撫を施された。後頭部に添えられた手が襟足を掴みながら髪を梳くのが一番好き。一見、乱暴にも見えるが浦原の手は酷く優しいからだ。
擦り付けた性器が熱を帯び始めた頃、一護の腹部でゾワリとした感覚が生まれた。羊水の音を聞く。ゴポリと鳴る音がやけに卑猥で嬉しかったから甘く泣いて見せた。
種付けしろよ。喘いだ一護の首筋に、浦原は歯を立てて腰を乱暴に振った。

















どこかで赤ん坊の泣き声が響いた




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