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彼はアタシの指が好きだと言う。
熱い舌先で爪先を舐り、伝った唾液を追う様に舌先を這わして舐め上げる。最初は一本、次第に二本、三本と増やしていく。
指先から指の付け根まで舐めて食む様に軽く歯をあてる。ちゅうっと吸い上げて離れた唇は卑猥な程にテラテラと唾液で濡れて光っている。なんとも眩暈がしそうな劣情が腹の底から沸きあがり、下半身に覚えのある感覚を呼び起こす。とても厄介で可愛らしい誘惑の仕方。

「…美味しい?」
「ん、…え?」

だって必死で舐めて食んで吸うから。浦原は一護の額にかかる前髪を梳き、現れた琥珀色をじっと見つめた。
あまりにも夢中になっていたので浦原の鋭い視線に気づいて、今度は一護がゴクリと生唾を飲む。
冷ややかに見えてその実、真ん中に漂う炎の色は青く澄んでいる。劣情の色を齎した炎が内側でずくりずくずくと燻っていて今にも暴走しそうだ。
浦原が、乱れるところを見てみたい。いつだって余裕綽々な男の熱に浮かされた痴態を見てみたい。思ったら薄い唇を舐めていた。

「ん、んく、んぅっ」

下唇を舐めて吸ったら薄く開かれる。誘われるままに煙草の香りが鼻を燻って一護はおずおずと舌先を侵入させる。途端に絡め取られた舌先。
舐めて吸って噛まれてまた舐められて。もう口内ではぐちゅぐちゅと互いの唾液が交互していて卑猥な水音を奏でるばかり。
浦原の左手は一護の項辺りを撫で上げて、唾液まみれの右手は胸の小さな突起をくにくにと悪戯に押し、潰す。濡れた指先が齎した快楽が腰から響いて吐息混じりに熱を吐き出した。
やっと自由になった舌先に乗るのは甘い呼吸と浦原の声色の残骸。

「……美味しかったですか?」
「………」

何に対して美味しい等と形容しているのだろうか。分らないけれど、常よりも幾分か低くなった声色が一護の腰から臀部にかけて撫で上げるものだからふるりと震えてしまう。

「ぁ……、…う、ん…」
「そう……良かった」

心底安堵したように瞳を細められ、尚且つ微笑まれたらもうどうしようも無くて。この男の全てを独占したい。と過激な事を思ってしまった。
どうしよう、どうしよう。
細められた金色が優しいのに意地悪だ。
臍を撫でる指先も器用なのに冷たい。
顎を舐める舌先から煙草の香りが漂う。
身体に刻み付けるように囁いた声色も、どこかしら恐ろしいのに。身体の芯から蕩けさせる。

「……ら、原さん……もっと、食べて、……良い?」

食べたいだなんて言ってしまう。人肉を食べるといった狂気じみた事は趣味ではないけれど。もし、この男の全てを食べる事が出来たなら、骨ひとつ残さずに嚥下しよう。咀嚼しよう。声も指先も爪も瞳も体液も骨も肉も睫も髪の毛も魂も全てスベテ。

「良いよ。……アタシを、全部。食べてくれる?」
「……たべたい」

優しい動作で髪の毛を梳かされうっとり感じているのも束の間、襟足を力強く引っ張られ仰け反る。ひゅっと呼吸を塞き止められて一瞬、苦しかった。
仰け反った拍子に目立った喉仏にキスをされ、凹凸を覆う様に口内へと含まれる。

「ヒュっ、」

かり、と犬歯で甘く噛まれたら塞き止められた呼吸が恐怖で戦慄いた。
きっと強く吸われたそこは翌日には赤黒い痕が残るのかもしれない。歯型じゃない所がマシなのかもしれないが、とてもじゃないけれど甘い愛撫には程遠い。それが、浦原喜助そのものみたい。甘いのにとても意地悪で乱暴だ。

「ちょっと……乱暴になるよ?」
「いい、…ぁっ、か、…らぁっ」

もう、乱暴でもなんでも良いから。一護は涙目で訴えて施されん暴力を甘受した。
















愛だけではもう、腹は満たされない




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