27 透き通るような?それとも吸い込まれそうな?なんだかどれも合っていない気がする。 あ、やっぱり金色の中に薄い緑が入っているような……瞳孔の周りだけ濃い緑だ…金色の色素が強いから今の今まで気づかなかったけど…グリーンアイってきっとこの事を言うんだろうなぁ…… 「……あの、…黒崎サン…。」 あ、すげ……ちょっと光った。 薄暗い照明の僅かな光りを逃さず捉えた目の前の瞳がキラリと繊細に光る。その持ち主でもある男は繊細でも何でもない強欲商人だと言うのに。 四つん這いのまま、若干浦原の膝を跨ぐ様に一護はその瞳を見つめていた。まるで浦原に穴でも開けようと言わんばかり。 「…なんですか、構って欲しいの?」 「違う」 「即答ですか……じゃあなんスか本当、…ちょっと、退いて」 あ、今度はちょっと歪んだ。どうなってんだろう。 きょろ、と右往左往する瞳を見ながら一護はその視線の先を目で追う。追うけれど、やはり直ぐに視線は浦原の瞳に留められる。 なんなの本当。 浦原は軽く溜息を吐きながらも一護のその腰をそうっと撫でた。 「っ!触るな!エロ親父!」 「えええーっ」 少しでもこちらが触れようならこの言われようである。じゃあどうしたら良いのだ。そろそろ下半身の限界が来ている。なんとも下世話な事を思う。だってこの子供がいけないのだ。簡単に大人の均等を崩さんばかりの行動に些か腹が立つ。 仕方がないので浦原も大人しく一護の瞳を見つめる。 じーっと見つめて、アタシのこの邪な気持ちが君にも移って熱を上げれば良いのに。そう思いながら口を開かず無言で見つめる。 「…なんだよ」 「なにが?」 「……なにか、言いたい?」 おや。分った。 心中で舌なめずりをしながら浦原は首をゆるうく振るう。 いいえ、何も。雄弁な瞳はそう告げる。 首を振るっていてもやはり瞳は一護の琥珀色を見つめるだけで。あ…なんかイケナイ気持ちになってきた。瞬間に潤んだ一護の瞳の変化を浦原は目敏く見定めて、そして逃さなかった。 先程、僅かな光りさえも逃さなかった様に、今度は一護の気持ちも逃す事などせずに捉える。捕らえて絡めてそして堕落させる。 「なに?」 「………なにが?」 「なにか言いたそう。ねえ、なあに?一護さん」 今度は一護がその視線から逃げたい気持ちに駆られていた。なんだってそんな真剣な眼差し……。少しだけ色彩がきつくなって、まるで射殺されそう。 後ずさった腰を力強く掴み、もっとと近寄らせる。体温を合わせる様にくっつけた胸と胸、そして絡めた指先。シャツ越しにでも分る背骨と肩甲骨を左手の人差し指でつつーっと撫でる。 「っ、そんな触り方すんなよ!」 「だってこうでもしないと」 君、その気になんてならないじゃない。再度、瞳で語らう様に伝える。持て余した熱と共に。 グっ、と息を飲む音が浦原の鼓膜に直接響いて気分を良くさせた。やっぱり、子供は子供。それでも、子供の琥珀色はいつだって真剣そのもので、大人が困惑してしまうくらい熱い。 冷めた瞳の色だと、最初は思った。 へんちくりんな帽子に隠れてギラリと光るあの隙間に埋もれた色が、とてもとても冷たい物だと知っていた。 けれども今はとても熱い。冷たい筈なのに熱い。火傷した事にさえも気づかないくらい巧妙な色彩が今、一護を射抜き惑わせる。 どうしよう…凄く、熱い。 「ほおら、蕩けてきた」 極上に甘い声が吐息混じりで耳に囁かれたらもう駄目だった。 下肢は思う通りに動いてくれなくて力が腰から先に抜けてしまう。へたり、と座り込んでしまった一護の膝下へ腕を入れ、軽々しい動作で横抱きにして持ち上げる。 首に手ぇまわして? 耳元で囁けば肩をピクリと動かしながらも恐る恐る両腕を首元に回し、大人しく腕の中に収まる。 素直な子は大好き。柔和な笑みを向けても下唇を舐める仕草だけは忘れてやらない。あからさまに熱を表に現せば子供が我慢出来なくなるのが分っているから。策士でもある卑怯な大人は子供の熱を上げる事に専念し、寝室へとその足を向けた。 蕩けた琥珀色はきっとキャラメルにも勝る甘さだろう |