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可能な限りの暴力性を秘めた劣情2


ああ良かった、ちゃんと勃ってる。心底ホっとしたみたいに青年の目元は潤んで和らいだ。

窒息しそうな風呂場での口付けを施した後、寝室へ移動。移動途中でも唇と唇は離れる事が無く、お互いの隙間を唾液で埋めつける。くちゅくちゅ鳴る唇同士の性行為が卑猥で、抱き上げたままの青年の腰に引っ掻き傷を作る。
最早お湯でふやけてしまった指先の爪は透明になり柔らかかったが、真っ白い肌に蚯蚓腫れを作るのは造作も無かった。
爪先で些か強めに引っ掻くと熱い吐息が口の端から漏れる。その隙間を狙ったかの様に溢れ出した唾液が顎を伝い、首筋へと流れ鎖骨を汚した。
まるで発情期の犬だな。浦原は自身を卑下する。
仕事を終えた後は必ずと言って良い程、体内を巡る血液が高揚しかけた気持ちに追いつけずその熱を上げ、下半身に身に覚えのある感覚を湧き上がらせる。
ある者はもっともっと殺戮をと求め、またある者は駆け巡る狂気を快楽へと変換させた。
浦原はそのどちらでも無く、巡る熱を押さえつけ服従させる様、自制心を保つ。仕事を始めて一年足らずで覚えた処世術だ。それをこの青年は意図も容易くぶち壊してくれた。
まあ、今回ばかりは仕方無いだろう。冷静に思う。



「ああ良かった、ちゃんと勃ってる。」

冒頭に戻るが、そう言った青年の声色はとても子供じみていて吐き出された卑猥な単語がとても無邪気な物に聞こえた。
ダブルベッドだろうか?広々としたフロアベッドには数個の枕があり、凄く寝心地が良さそう。半ば強引に座らされたベッド脇、腰を下ろした浦原の下肢に顔を埋める。うっとりと蕩けた視線で青年はそそり立つ性器に舌を這わし、娼婦の真似事を簡単にやって見せた。
熱くて小さな舌先が先端からぬろりと竿部位まで舐め上げ、ちゅっと軽めに吸い付く。その仕草がとてもくすぐったい。

「……口、開けて?」

焦らされていると感じつつも、ご都合主義の人間は誰だって施される快楽には滅法弱い生き物だ。嘲笑しながら青年の顎を取り口を開かせる。
素直に口を開き先端から舌先を這わしてその小さな口に性器を収めた。
開いた口端から見える真っ白い八重歯がギラリとその鋭さを光りに変えて見せた所で噛まれちゃうかもと危惧したが、熱いうねりを感じる事により胸の鼓動は容易くも快楽へ姿を変える。笑ってしまう。こうも快楽に弱かっただろうか、自分は。

「はっ、……じょうず…」
「…ふ、ん…んぅっ、う…」

唾液を交えて滑りを良くし頭を上下させる。溢れた精液を舌先で拭い、じゅるりと音を立てては咥えながらその液体を飲み込んだ。手馴れた仕草なのにどこか初々しい。これはきっと彼持ち前の技だろう。綺麗に見せつけておいてその実腹の中は真っ黒に汚れきっている。

「ふぇ…っ、ん、く…ん、んっ」

息苦しくなると性器を口から出し竿に口付け。食む様に下唇と上唇で挟んで小さな音を奏でる。
眩暈がするくらい気持ち良い。自然と浦原の指先は青年の頭を撫で、その目に眩しい色彩を指に絡めて梳かす。頬に触れて柔らかさを堪能し、顎をくすぐると苦しそうに「んんんっ」と喉元で鳴いた。まるで猫みたいではないか。

「っ、……だ、しても?」

こくりと小さく頷く。その彼の瞳には大きな涙の粒が弾ける様に溢れ、頬を精液と共に穢す。
限界が近付き青年の後頭部を掴んで腰を二、三度振ってその口内に射精した。
はー、はー、と息を浅く吐き出し青年を見る。
口内に吐き出された精液を見せ付ける様に嚥下した。喉仏が上下する様がとてもじゃないけれど卑猥。
口端に残る残骸を指先で拭ってペロリと舐め取る。既に青年の瞳は瞳孔が開ききったかの様に揺れ動き、そして甘く蕩けていた。
なんでこんなに全てが甘いんだろうか。

「なあ、今度は俺も……」

潤んだ瞳が覆い被さり近付く唇を甘受、そして陵辱する。
生臭い雄の香りが口内へとその味を示し眉間に皺を寄せてみるも、必死と言った表情で口付けを交わす青年を見ていたら段々甘いと感じる様になった。

華奢なラインを象った身体を抱き上げベッド上に押し倒す。組み敷いた琥珀色の瞳が早く気持ちよくなりたいと雄弁に語っていて、見定めた浦原の金色は柔らかくも意地悪に笑んだ。
初めて触れた同性の身体。柔らかくも打算的に膨らんだ胸は無くとも小さな突起は主張する様にふるふると立つ。人差し指と親指を器用に使って捻れば良い声で鳴く。悪戯に爪先を立てても同じ様に鳴いた。
舐めて、と懇願する声も酷く甘い。



「…も、い…イからぁ……っ!いれ、ァっ、挿れて…っ」

最初は窮屈に指先を拒んだ中は零れた精液を潤滑剤として使い、慣らす様に第一関節を入れるとその先はすんなりと受け入れ熱くうねった。
既に三本もの指先を難なく咥え、内壁はひくひくと収縮して浦原の指先を離さんばかりだ。
齎された刺激に腰は動き、浦原の腕に縋りついた手は悪戯に引っ掻き傷を作る。こうも自然に甘えられるとこちらが勘違いしそうになるではないか。そんな馬鹿みたいな事を思って浦原は唇を噛み締めながら青年の中を犯した。
極上に甘く蕩けた声がひっきりなしに部屋中へと響き渡る。
浦原の息遣いと青年のあえやかな声が交ざり夜の色彩を卑猥に壊し始めた。
狂った夜だ。浦原はそう思いながらも青年を追い上げていく。
歪な夜だ。吐き出した吐息は熱く甘いのに、胸中を締め付けるドス黒い感傷の正体が罪悪感だと気づいたのは三度目の射精の後だった。
先程手にかけた、男の顔がもう……思い出せない。


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