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は?黒崎って………女でしたっけ?
至極真面目な面持ちで質問してきた髪が赤い後輩を見て、浦原は鬱陶しそうに眉根を微動だにした後紫煙を吐き出した。

「…女の子に見えるんだったら一度眼科行ってきた方が良いんじゃない?」

面倒臭そうな物言いに、年中眠そうな瞳、甘いマスクの下に冷酷と言う文字がぴったりの素顔を隠している。
大学時代の先輩。共に社会人になった今でも交流は続いており、昔っからどこか掴み所の少ない浦原を目前にして恋次は自分でも思っている以上に動揺しているのを感じ取る。嫌な汗が手の平に集中。
同じデザイン会社で後輩の黒崎一護を浦原に紹介したのは3ヶ月程前。フリーデザイナーでもある浦原の事が昔からの大ファンだと言う彼にこの男を紹介したのが運の尽き。
ああ、そう言えば黒崎さんと付き合う事になりましたんで。
打ち合わせが終わった後、まるで今日のランチの事でも話さん自然さで言ってのけたので、恋次は一瞬黒崎って誰だっけ?とか考えてしまった訳で、それで冒頭の台詞だ。

「や……あんた、付き合う事になりましたんでって……おい!そんなの聞いてないぞ!」
「今言いましたもん」
「じゃなくて浦原さんってそっちだったんスか!?や……ってかいつ手ぇ出してたんだあんた!」

信じらんねー信じらんねー!うわぁ!手塩にかけて育てた俺の可愛い後輩が毒牙の餌食にっ!
煩く方向性を見失って叫ぶ恋次を険しい面持ちで眺めた後、浦原はその赤い頭に手痛い鉄拳を食らわせて黙らせる。

「俺のじゃなくてアタシの。はい、リピートアフターミー」
「……俺のじゃなくて浦原さんの……です」

良く出来ましたと今日初めて見せた甘い笑顔が毒だと言う事を分っている恋次だからこそ、可愛い後輩がこの男と付き合った事で傷つきボロボロになる様をなるべく想像したくは無かった。ああ、本当、悔やまれる……男もいけたのかコイツ。とぶつぶつ言っていると人気デザイナー様は多忙のご様子でさっさと目を通した書類をまとめ鞄に詰めたあと、サングラスをして席を立った。

「じゃあ、これから黒崎さんとデートなんで。」
「……あ!だからあいつ今日休みなのか!?って、ちょ!浦原さん!」
「………大事にしますよ。ご心配なく」

やや無愛想に言ってのけた男に対して恋次は二の句が告げられない。ただ口を開いたまま、男の去り行く後ろ姿だけを見ていた。

「え………まさか、本気?」

垣間見れた男の金色が真剣その物で恋次は自然に肩の力を抜き、ソファに深く腰を沈めた。
都心にあるカフェはゆったりとした時間が流れていて、テーブルの上に置かれたマグカップに口をつけながら恋次は暫し考え、それからバッグの中に入れっぱなしにしていた携帯を取り出してリダイヤルボタンを押す。

「…おー。今大丈夫か?ああ、あと2時間もすれば帰れっから、…いやさ、一護がさ……驚くなよ?………浦原さんと付き合ってるらしい……」

少し言葉を濁しながら言った恋次に対し、電話向こうのルキアはハイテンション気味に「では赤飯を炊かなくては!」と言うので恋次は更に頭を抱えてしまった。
















君よ、どうか幸せであれ




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