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hakusyu


なんと無しに。
本当になんと無しに理由も無く凶暴でいて且つメロウなお話が書きたくなり、同時に読みたくなった。
衝動と片付ければそれはそれで可愛くもあるが、如何せん自分の頭の中にある無数の言葉達が蠢いて渦を作って暴れまくっているのだから偏頭痛は治まりそうにもありません。

「先生、まだ一行も書いてないじゃないですか……他の書くならこれを終わらせてからにして下さいよ」

等と君はマニュアル化された文句を延々と吐きつけるのだけれど、その台詞一言一句を間違える事無く僕はデフォルメ化させる。あざとい自分の神経が結構好きだったりする。
眉間に寄せられた皺がもっと深く刻み込まれたら良いのに。それで無表情に罵った言葉を羅列するが良い。きっとイケると思うから。

「だってねえ黒崎さん……考えても見てくださいよ。僕、1ヶ月近くも自宅に軟禁されてるんスよ?もう駄目…欲求不満でいつか死んじゃうんだ…ソレも一人で…ああ、世間では花の30代と言われている年齢で死んじゃうんだ!」
「馬鹿な事言ってねーで手ぇ動かせよ」
「その台詞すっごいドキドキする!」

キーボードを打ち続ける指も当の昔に壊死してしまった様で、煙草をもっていても震えてしまうんだから笑っちゃう。執行猶予付きの恋を題材に、昨晩君で抜きました。なんて言ったらもう二度とこちらには来てくれないんだろうか?それこそ凶暴且つメロウな恋じゃないか。全く、自分で考え付いて呆れる。

「…あと30分で休憩終わり。さっさと話し書いてくれたら俺だってあんたをこんな所に軟禁してませんよ」

あからさまに付いた溜息は何色だろうか?考えようによっちゃあ桃色吐息。ああ、君って人はどこまでも甘いらしい。時計を見ながらそう呟く一護を見て隠れながらに舌なめずりをする。
欲求不満なんです、本当。外の世界がこんなにもちっぽけで、自分の部屋の中がこんなにも殺伐としてて、君の体温が無いフローリングに泣きたくなる日が来るなんて。思ってもいなかった。
恋は盲目と誰かが言いましたが、例えこの目を潰したとしても嘘っぱちな暗闇に見えるのは君だけの様で、手と耳と下心さえあれば存分に君に触れる事は可能なのです。

「ねえ黒崎さん。」
「なんですか浦原大先生」
「……恋がしたいです」
「…頭沸いたか?年がら年中発情期のあんたが今更生娘気取ろうなんて甚だしい!」
「もう、ほんっとに君ってば人を煽るの上手いよね」

伸びた手の先にさえもその体温を感じさせてくれない憎い君が好きみたいです。君が言った様に今更純粋な恋をしようだなんて甚だしいではありますが、どうにもこうにも。覚えたての恋の味はきっとレモンフレバー。もう少し可愛く言ってみたらホットレモネード味。甘酸っぱくて温くて、その打算的な温度でもって僕を虜にさせるその味が致命傷。
君に恋をしている。
その言葉を何度も何度も頭の中でリピートしている末期なしがない物書きをどうかその琥珀色した瞳に収めて欲しい。
泣きたくなる程、苦しくて愛しいだなんて馬鹿も休み休み言え。と、自分でも思ってるんだから自覚症状はある様です。まだ救えるじゃないの。

「はあ…憂鬱だ…」
「俺の方が憂鬱です。今日で原稿持って帰らないと……俺も軟禁される…何度デート断ってると思ってんだ!いい加減にしろこのうすのろ!」
「………はあ、すっごいムラムラする…」

君のあの可愛い彼女さんには申し訳ないんですが、多分今日もデートは出来ないと思います。だって僕の指は未だ壊死したまま、前頭葉から痛み出し、麻痺した思考回路では常套句さえも思いつかず、言葉が暴走するばかりで。そんなちぐはぐで不恰好なお話なんて読みたくもないでしょう?それこそ私情挟んだ御伽噺だ。こういうのなんて言うか知ってます?マスターベーションって言うんですってよ。はは、笑っちゃう。

「あと16分。」
「黒崎さ〜ん。珈琲飲みたい」
「あと15分と30秒」
「…それ、頭痛くなりませんか?」

じーっと時計だけを映し出す大好きで大っ嫌いな琥珀色の瞳。言い方を少し詩人っぽく言えばハニーブラウン。ねえ君の事をハニーと呼べる日が一生来なくったって良いんです。そんなお手軽で純粋そうな関係なんて要らないから、どうか。どうかその甘ったるくも温い体温を僕に下さい。

「抱き締めてくれたら…頑張っちゃうのになぁ」
「なんか言いましたか?」
「………いいえ。なんでも」

うっかり口から出る欲求を簡単にデフォルメ化させれたらこれ程楽な事は無いだろうに。
あと少し、あと少しだけで良いからこの淹れたての珈琲みたく苦い想いを抱えたまま、恋する痛みに浸らせて下さい。それぐらいの我侭なら通るでしょう?












窒息しそうなくらい好き




あきゅろす。
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