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初心な夜に甘く蕩けたビードロの色



昼間の顔と夜の顔、浦原は二つの顔を持ってると思う。一護は眉間に皺を寄せながら考えた。
昼間、店先で見る顔はトレードマークのへんてこな帽子で半分隠されてるから分かりにくいが、帽子の影を拭って見るその表情はとても眠たそうにしている。どちらかと言えば夜行性。キラリと光る金色の瞳は、普段の鋭さを鈍い色の底に沈めている。
お前…眠いんだろう?そう問えば苦笑しながら煙管を吹かして誤魔化すのだ。
明け方近くまで続いた研究に没頭し過ぎた結果、目の下に出来た隈がよりミステリアスに男を仕上げてしまうから睡眠はちゃんと取って朝型になれ、とどんなに注意を施しても男が素直に聞いた試しは今の所、無いに等しい。
一に研究で二に研究、三に研究で四に一護。浦原の中心には世界が小さく広がっていて、その周りを宇宙みたいに包み込むのが研究だった。流石は元技術開発局局長、三度の飯よりも研究ラブ。そんな男と三ヶ月前に付き合い始めた一護はフウ、と小さく溜息を吐く。疲れたら寝れば良いのに、目の下に出来た隈を帽子の影で隠しながら気怠げに笑う浦原を見てそう思うも、口にしないのは男との共有する時間を我儘に欲してしまうから。仕事と私、どっちが大切なのよ!使い古された台詞を言うまでも無いが、時々心配になってしまう。少なからずも好いた男だから、いつ疲労で倒れてもおかしくない生活はして欲しくなかった。これが本音でもあり、一週間前にも思ったが、夜になってしまえばガラリと表情を変えてしまう男に前言撤回だ!と心の中で叫んだ。

***

ぬちゅり、侵入した指先が生み出す音が一護の鼓膜を突いて脳内へと響く。透明な液体と先に吐き出した精液が混ざった指先は既に二本目になっている。敷かれた布団に裸で寝そべっているだけでも情けなさたっぷりなのに、男を前にして足を折り曲げ開いてる時点でアウト。一護の羞恥心を扇いでは逆撫でする。こんなかっこ悪い姿は誰にも晒せない、この男一人を除いて。

「柔らかくなってきた」

喋んなよ、水音と夜の足音しか聞こえない浦原の私室に反響した音は、昼間に聞く声色と全く同じで一護は掠れた声で唸った。
数週間振りのお泊り、テッサイが腕をふるって作り上げた夕餉を皆で取り、居間でバラエティ番組を観て過ごす。檜の湯船にはられた湯はどこぞの温泉に浸かった心地を肌に味させ、風呂上りに頂いた羊羹と茶は成長期の胃袋を満足させた。そして夜、充てがわれた客室にやってきた闖入者は夜に見せる笑みで一護の手を引き私室へと招き入れる。トン、静かに後ろ手で閉めた襖の音が男との密室を告げ、長い夜の幕開けだと一護に囁いた。
ぬちゃり、再び粘着質な音が鳴る。

「ぅ…」
「痛い?」
「、たくは…ねーけど…」
「けど?」
「…なんか、変…気持ち悪ぃー…」

眉間に皺を寄せて口をへの字に曲げた一護を見て苦笑しながら、まだか…と心中で肩を落とした。
付き合い始めて一ヶ月目で夜の営みへと足を踏み入れた。浦原にとってはかなりスローペースな手の出しように馴染みの彼女は酷く驚いていたが無理も無い。だって彼はまだ子供なのだ。身長174センチで日本男児の平均を軽く越えてるとしても、心はまだまだ子供。キスのひとつで肩を揺らし、顔を真っ赤にしては触れられる事の怖さに身体を素直に揺らす、そんな子供にどう手を出そうと思うか。最初の頃だって酷く脅えたのだ、この未発達な身体は。
何度か触れる内にキスは慣れたが、まだ夜の営みには慣れていない未開通の身体に手を這わす。何度も挿入を試みても痛がってばかりで最後まではいけてない二人は本物の絶頂を未だに味わっていなかった。
大人は焦り、子供も焦る。なんだって柄じゃないことをさせるのが恋ってやつなら…浦原は二本目の指先に集中して思った。
恋って厄介…。
こんなにまで丁寧に愛撫を施した相手は今までに居なかった。この子供を除いて。

「気持ち悪いかあ…」

素直に出して見せてしまった落胆に子供の身体が震えた。
ごめん。口に出さずとも、揺れる琥珀がそう告げてるのを見て再び苦笑。彼の緊張を解す様に額へ口付けた後で唇を塞ぎ、萎えてしまった性器を悪戯に撫でた。
ふうん、鼻にかかる声が浦原の下半身を直接攻撃する。昼間に見せるあどけない笑いと夜に見せる困った様な、それでいて酷く照れた表情とのギャップが激しい。
ぬちゅぬちゅぬちゃり。先走りを絡め取って滑りを良くしては熱を煽る。先程達したばかりの若い身体は快楽を簡単に受け止めては息を荒くさせる。
甘い舌先を堪能してから飲み干しきれずに漏れて顎を伝う唾液を追って鎖骨を舐める。ピクリ、動いた身体に上目遣いで一護を見上げれば、自身の手の甲を噛みながら声を耐えてる姿を見て眉を顰めた。

「声は出して。その方が楽だよ」

本当は自分が聞きたいのに都合の良い理由をとって付けて子供を甘く騙す。それでも頑なに声を耐えようとする一護を見て、唐突にどこまで耐えきれるのかが見てみたくなった。

「っ、…ぅん…っ」

扱く手の動きを速め、中に埋めた指先をバラバラに動かす。じーっと見つめる瞳に熱を込め、合わさった視線に熱を移す。
瞬間、一護の瞳が大きく見開き、浦原の指先には出っ張りが触れた。
ああ…ここだ。
頭で分かった後、場所を記憶しておく。

「一護さん、息吐いてて」
「うらはら…」

これで何回目かの挿入。今まで失敗を重ねたせいで一護の身体は痛みを覚えており、恐怖を頭に植え付けてしまっていた。足を抱え、先を当てて挿入を試みた浦原の二の腕に縋った子供の声は酷く怯えきっている。
大丈夫、そんなに悪くはしませんよ。そう苦笑しながら目尻にキスを贈って涙の味を舌先へ乗せる。
ぬち、なんとも言えない音が一護を恐怖で包む。

「力抜いて」
「ぬ、ぬ抜いてる!」
「一護さん、アタシだけを見てて」
「へ?」
「君を気持ち良くするアタシだけを見ててね」
「ばか言って、んゃ!い、いてえ!」

ぎちゅり。押し広げられる痛みが一護を襲う。またしても失敗に終わるのか。10分もかけて慣らした後ろは浦原を拒む。

「一護さん…息は?」
「は、吐く!」
「クク…わ、笑わせないでよ…集中」

ちゅ。眉間が寄った箇所にキスする。
慎重に、慎重に。怖がらない様に、痛がらないように。慎重に、慎重に。

「集中つったって…う、」
「痛い?」
「ん…でも、だいじょ、ぶ…はー…ゆっくり、な?」
「うん。ゆっくり、ね」

確認しあってキスを何度か繰り返してる内に再び熱が戻ってきて腰を進める。
くちゅ、きちゅ。侵入するにつれて鳴る水音と痛みで一護の頭の中はカオス状態ではあるが、見ててと言われた浦原の顔を見る。
片目を細めて、普段なら寄らない眉間の皺を作って、時々目が合ったら優しく微笑む。一々ドキドキさせる夜の顔に一護の気が緩んで侵入を安易にさせた。
ぬろり、先っぽが収まれば後は楽だった。

「ハっ、…一護さん…はいったよ」
「…ぜ、全部?」
「うん。入った」

信じられない、あんな場所にあんなデカイのが。入ったのかよこれ、と下肢を見て暗がりの中で繋がってる部分を目にした瞬間、今までに味わった事がない羞恥心が一護の理性を壊した。

「うぇ…」
「え…えっ?そっ、れは…っ、嬉し泣きなの?それとも…痛かった?」

突然泣き始めてしまった一護に戸惑ってゆっくり抜こうとした浦原を引き止めた。
違うと首を振る。だけど怖いと浦原に縋った。感じた事の無い不可思議な感覚に、これからどうなってしまうのか分からずに幼い心が泣いてしまった。

「大丈夫?」
「だい、じない…も…わかんねー…涙とまんない…ちくしょう情けねえ…」

ぐしぐし、溢れては出てくる涙を乱暴に拭えば「大事無いって…いつの時代を謳歌してんの」と苦笑した浦原に手を取られて涙を舐められる。

「乱暴に拭うのは駄目、赤く腫れちゃう」
「だっ、て…」
「大丈夫、まだ動かないから」

怖くない怖くない。一護の胸の内を瞬時に読み取ってはリズム良く頭を撫でられポンポンとあやされる。まるでまんま子供じゃないか。ガキ扱いが十八番な男の冷たい掌はやけに暖かくて心地良い。鼓動のリズムに似た撫で方に心の中で渦巻く例え様の無い感情が次第に薄れていってそれで消えた。

「ら…はら、」
「ん?ああ…止まった」

涙は何時の間にか止まっていた。
繋がった状態で、ついぞ感じる事の無かった腹の内の熱さにきっと心が病んでしまったのだ。おかしい、好いて好いて焦がれて好いていた男との情事なのに、愛される為の行為なのに。なぜこんなにも痛くて苦しいのだ。思い出した様に熱くなった下肢から圧迫感が喉元まで迫って、一護を再び不可思議にも包み込もうとする、そのアンニュイな感情。

「浦原、も…良いよ」
「ん?」
「んっ…キス、じゃな…っ。う、ごいて…大丈夫だから…」

悪戯にキスを繰り返す浦原に焦れて、伸びた金髪の襟足を軽く引く。早く、至近距離に迫った子供の甘い琥珀色がまるでビードロみたいで、綺麗に甘く浦原を誘惑した。
子供と言うのは無邪気に大人の理性を壊す生き物である。直感した瞬間に、大人は情けなくも言葉無く子供を執拗に攻め立てる。優しくしようと思えば、子供の出す聞いた事の無い上擦った声に熱を煽られて乱暴に腰を押し進めてしまう始末。
組み敷いた子供の身体、眉間に寄った皺は普段よりも甘い。縋りついた指先は浦原の背中と二の腕の筋に傷を残す。アア、と泣いた声は甘く蕩けそう。震えた身体はもっとと快楽を上手に強請り、潤んだ琥珀色は好きだと賢明に訴えていた。

「あ、一護…さん…っ。ごめん、先いきそう」
「れ、も…っ。ら!はら…イっちゃ…っ」

激しくなるピストンに、そして見た事のない浦原の表情に毒され、不器用にも腰を振っては絶頂を求めて精を放った。どくどくどくり、腹の内で浦原の熱が放出される感覚を味わう。スキンなんて不躾な膜に覆われてるものも、やはり熱だけは確かに感じた。
ポトリ、零れ出た涙が視界を歪めて浦原の苦笑をより色っぽく反映させた。
















夜は甘やかに、そして少しの恥ずかしさを交わせて甘い闇色に染まる



いつかのjoinで書いた小ネタだったんですが、初体験な浦原と一護でお届け。テーマは初心でした。は、はずかちぃっ!
楽しんで頂けたら幸いです^^




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