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New yeas EVEが誕生日だと言った男は綺麗な金髪を後ろで一纏めにし、面倒臭いと片言の日本語で笑いながら言って茹でたパスタの湯をサッサと切る。
アルデンテに出来上がった麺にオリーブオイルを垂らし、明太子をほぐしてマヨネーズと醤油で味付けしたソースと混ぜ合わせる。仕上げにパセリを振りまけば色鮮やかな明太子スパの出来上がりだ。

「え?ニューイヤーズイブって…え?明日…?」
「YES、ねんまつ?」

二つのグラスに二つのフォークとスプーン、テーブルセッティングをしていた一護の瞳がクリっと大きく見開いたのを見て男は笑う。
やけに暖かい雰囲気となった自宅のリビングには一護の持ち込んできた物達が所々に存在していて、冷蔵庫には必ずチョコレイトが入っている。玄関先には二人分のマフラーとアウタージャケットが掛かる。男はネイビーのトレンチコートで、一護はstussyのダウンジャケット。鼠色をした冬にはぴったりの色彩。ブランドマークでもあるダブルのSがバックプリントされたそれは今年のクリスマスプレゼントでもあった。
キースから貰った初めての贈り物。
日本名は喜助、アメリカンネームはキース。
国籍も育ちも日本では無いのに二通りの名前がある彼は、祖父が大のジャパン好きだったのだと苦笑しながら話してくれた。

出会いは10月の下旬に差し掛かった頃。同じ公園で同じ時刻、同じベンチに座っては煙草を吹かすか英新聞を読んでるかどちらかだった彼。やたら人目を惹く色彩を持ってる癖に草臥れた公園との空気に溶け込んでいた。
男がどんな職を手に持つかなんて知らない。けれど鎖骨から首筋にかけて肌に根を張ったトカゲのタトゥーが彼の人生を物語っている。
それと綺麗に割れた腹筋の右下腹部に彫られたリップマークのタトゥーは、十代の頃に受けた銃槍を隠す為に描いたのだと聞いた。なんて事ない風に話すが十代に受ける傷跡のハードルが高すぎる。喧嘩にせよ事故にせよ、平和ボケをかましたこの国じゃあgunなんて物はありふれた代物では無いから一護は笑うに笑えず、愛らしいPOPなタトゥーからそっと目を反らす事しか出来ないでいた。

カチャン。フォークが皿に当たり金属音を奏でる。

「おれ…ごめん…家族と…」

そう言うと思った。男は回転の効きすぎる頭で考えながら苦笑する。一護がファミリーをとても大事にしてる事は一目瞭然で、母親が他界してから今日まで弱愛するツインズ達を守ってるのも熟知している。
ああ、言うんじゃなかったなあ。少しだけ後悔するけれどシュンと項垂れた様子の彼はまるで叱られた子犬の様で可愛いし、体全体から一緒に過ごしたいと言う気持ちがだだ漏れしていたのに気を良くしてはやっぱり言って良かったと撤回する。

「美味しい?」

彼が問う。いつもの優しいふにゃりとした笑みで彼は金色を甘く染めた。

アイラブユーと言い慣れるのにそう時間はかからなかった。母国語で無い分、ひとつのデフォルトとして変化される文字はいくら感情を込めた所で一護に羞恥を与えないから、彼が望む数だけアイラブユーと放った。
Love Youよりも「好き」と言ってしまう方がきっと何千倍も恥ずかしい。込める気持ちに大差は無い筈が、こうも格差があるとまるでLove youがフェイクみたいな気がしてならない。後ろめたいとは違った心情が交差しては一護の胸につっかかりを残し、愛はトグロを巻いた。

カチコチカチコチ。
今年はジャニーズで年越しだ!と言っては早々に酒で潰れた父親をソファで寝かせ、しっかり暖を取る形で布団を被せて妹達と年末最後の片付けに入った。
カチコチ、カチコチ。
短い秒針の鳴る音が部屋中に響く。ハッピーニューイヤーまで10分を切ってからは一護の耳は秒針の音にだけ反応する。胸騒ぎに似た焦燥は一護の時を止めてジャケットに手を伸ばさせた。
妹達を残して家を空けるのは忍びなかったが、双子の中でも一番一護に近い性質の夏梨があしらうように許可を出してくれたから胸に蟠りを残す事をせずに家を出た。
そこからはもうダッシュだ。24時間運営されるホームはまだ明るく、多くの人で賑わっている。
大学生からサラリーマン、子連れから年配層まで様々な顔ぶれで溢れている。彼等はこれからお参りに行くのだろう。一年の煩悩を払いに行くのだろう。
俺は…煩悩だらけだな…
ハ、吐き出した息は白く視界に残っては凍て付く寒さを一護に与えた。
早く会いたい。ホームにあるデジタル時計が0に近付く程に胸が締め付けられて焦りが余計に急かされる。心臓がバクバク鳴っては会いたいと一心に男を求めた。
ハッピーニューイヤーよりもハッピーバースデイを。初めてアイラブユーを伝えた相手に贈りたい。生まれてきてくれてありがとう。ベタな台詞でもって胸を一瞬だけ暖かくさせる。
ああ…早く早く…っ
気付けば右足は軽くステップを刻んでいた。
早く…あんたに会いたいんだ…I miss you…!
脳内で変換かけるにが癖についてきて胸の焦りをそのままにしながら一護は笑った。

ガチャリと開いた扉の向こうに立つ男は寝衣である白のバスローブに身を包み、瞳を見開いてはその金色に一護を映し出した。
一護の家から一本、約20分程度で最寄り駅に着。そしてまたそこから徒歩で10分の所を猛ダッシュしてきたから5分もかかっていない筈だ。酸素の足りなくなった頭で計算するも、前持って予約をかけていた携帯のアラームはけたたましく猛ダッシュ中に鳴っては2012年の到来を知らせてた。
はあ、はあ、はあっ。
何も考えずに走ったから膝がガクガクする。忙しない一護を見て男は驚愕をノーフレーム眼鏡の奥に潜めた。あ…眼鏡姿…ちょうレア…。最低気温の冷たさが肌に痛いのに駆け抜けた身体はポカポカと内側から熱を放出しては頬を紅潮させる。呼吸を整えさせた所で眼鏡姿の男の顔に心臓がドキリと唸っては悪循環を生み出す。
この人…本当に…
いつかドキドキのし過ぎで窒息死してしまうんじゃないかと半ば本気で思ったくらいだ。
アーユーオーケイ?綺麗な発音でもって男が言う。一護の頬に触れた指先はひんやり外気の温度と全く同じで一護の熱を冷まして心臓を再び高鳴らせる。持つ体温は低い癖に一護に熱を与えんとする男の温度が憎たらしくて、一護は場違いも甚だしい負けん気を出しては眉間に皺を思いっきり寄せて、男の金色と対面した。

「Happy birthday!and A happy new year!」

ちょっとだけ噛んでしまったがバッチリ男には伝わったであろう言葉の羅列。その後ろで除夜の鐘がゴーンゴーンとなんともお約束なBGMを奏でて新年の夜を派手に染め上げた。

「…うれしい…」

男が片言の日本語で紡ぐ言葉はいつだってストレート。単語だけで伝える場合の気持ちだからだろうか。やけに気恥ずかしい思いをしてしまう。

「…ソーリー…アイムレイト……でも、おめっとさん…」
「thanks,Actually I wanted to meet you,and you?」
「えっと…アクショリー…?あ!うん……ミートゥー…」
「あいたかったです。とても。会いたかった。ありがとう…テンクス…あいしてる」

またドクリ。心臓が圧迫される音が鼓膜に響いては一護の頬を今度は違う意味で赤くさせた。
ああもう!この人は本当に!
愛してると放った声の甘ったるさも然り、一護を見つめる金色も甘ったるくて胸焼けを起こしてしまいそうま程にはキラキラと輝く。

「おれ…も!」
「ん…?」

優しく愛しむ瞳で一護の冷たい髪を撫でる。
後ろ手に扉を閉めきれば、中へ侵入した冷ややかな空気は暖房の暖かさによって抹消。響く除夜の鐘も聞こえず、耳に入ってくるのは二人分の吐息と鼓動と温度と声のだけだ。この世界には二人だけ。そう錯覚してもおかしくない位には浮き足立っていた。

「アイラブユートゥー」
「love you」
「あ、いしてるよ俺も…誕生日おめでとう。」

フ、笑った男の纏う闇が一瞬にして消え去り、代わりに甘やかな鼓動を纏ってはキスを与えた。












ラブユーとハッピーを混ぜたキスはファンタジーに早変わって酷く甘ったるい


◆Happy Happy Birthday喜助さん!と言うかキース!(笑)ごめんなさい間に合いませんでした←iPhoneでちょいとミスをおかして消しちゃったんだぜ☆
そしてまさかアイラブユーの二人を書くとは思いもしませんでした。前回書いた外国人浦原と学生いったんの誕生日ver小説です。
最初に思い付いたのは銃槍を隠す為のタトゥー(そこかよ)それとハッピーニューイヤーズイブ!人がてんやわんやな時期に産まれてきやがって!でも好き!←
まあでも無事に書けて良かったなあ。とね!そんでもって今年もよろしくお願いします!ってね。
ハッピーバースデイ浦原さん!そしてハッピーニューイヤーです皆様!どうぞ、良いお年を!今年もhyenaとmeruをよろしくお願い致します^^

hyena:)meru




あきゅろす。
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