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お前さ、最近女出来た?
と同僚から言われた時、激しい動悸がしたが。浦原は敢えて無表情に冷めた視線を投げつけ紙コップに入ったコーヒーを飲み込んだ。

「は?なんスかいきなり」
「…最近付き合い悪いし」
「そんなの最初っからでしょ。はいはい仕事する」

そう言って溜まった書類を投げつける様にして海燕のデスクに放った。ばさりと鳴った書類の一部からポルノやら性犯罪やらの文字が浦原の視界に入り、胸の内に嫌な思いが溢れ返る。






「これって犯罪なんでしょうか」

一護の淹れた熱いコーヒーを飲んだ後、テレビを見ている一護に向かってそう呟く。
はぁ?と浦原の方に顔を向けて一護は心底分からないと言った感じで言葉を放った。浦原はテレビを見ながらコーヒーを飲み、一護の頭が凭れている右肩を少しずらしてみる。頭の中で同僚の言葉が浮かび、今整理している犯罪者の顔が自分と重なっておぞましい感情に襲われる。

犯罪鑑識所属として仕事に公私混同はしなくても、まさか自分が高校生に(しかも16歳だ!)手を出した挙句未だにお付き合いが続いてるとは、昔の自分なら考え切れない事例でそんな予測も何も無かったのに…
一護は意図的にずらされた右肩にむくれ、片眉を上げながらも意地で浦原の右肩に寄り添う形で頭を預け、それから浦原の横顔を睨み上げた。

「俺と付き合う事が、って事?」
「……」

肯定とも伺える浦原の沈黙にこめかみが疼く。テレビからは明るい音がして芸能人が馬鹿みたいに大口を開けて笑っていた。ブラウン管越しの笑い声が部屋中に響き、一護は浦原のシャツの裾を引っ張る。頑なに一護を見ようとしない浦原に焦れた。テレビなんて見ていない癖に…そう思って自分のマグカップをアパガドス上に置き、浦原の顔を両手で触れ、無理矢理振り向かせた。

「…一護さん、今首が変な音鳴った…」
「お前は俺の事好きで付き合ったんじゃねーのかよ?」

一護の言葉に浦原の目が大きく見開き、そして項垂れた様な悲しい瞳の色をした。コトン、浦原も一護に習ってアパガドスの上にマグカップを置く。

「……ごめん」
「…違うのかよ?」
「いいえ。好きで好きで、大好きで……だからあの日君を手放さなかった」

神経質で長い指先が一護の目下を撫でる。そこから頬を辿り、下唇を掠め顎下を撫で上げた後で唇が降りてくるのを目を閉じて受け入れた。ブラックコーヒーの味と煙草の味。浦原のキスの味。痺れる様なその苦さに一護の胸がいっぱいいっぱいになる。そうやっていつも窒息しそうになる。
全てを投げ捨ててまで欲しいと思った男の瞳が、目の前で優しい形になるのを見て頬に熱が集まった。

「……二度と言うなよ」
「うん。ごめんね」
「今度言ったら絶好だかんなっ!」

そう言いながら一護はテレビに体を向けてすっかり冷めたであろうカフェオレを何食わぬ顔で飲み干す。少しだけ耳が赤いのを見て浦原は静かに笑った。
アナログの壁時計は19を表示していて、今日の夕飯は外に食べに行こう。と思い一護の耳にキスを送る。
ちゅっ、と音を立てて離れた浦原を見て一護は真っ赤になりながらも馬鹿じゃねーっ?と憎まれ口を叩く。そんな所が可愛くてついついオヤジ発言をしてしまうのだ。














今日は帰さなくても良いんだよね?




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