if story in case2 彼の香りがまだ自分の体全体を包み込んでいる様な、そんな照れ臭い感覚。 一護は浦原の背中をずーっと見ていた。彼が大通りに出て、タクシーを軽やかな動作で拾って、乗り込んで、消え去るまで。ずーっと、微動だにせず、瞬きもせず。見ていた。 抱き締められた。少しだけ、暖かいと思った。 頬を撫でた手の平。少しだけ、煙草の香りがした。 曲作りや、プロモ製作、来年に向けてのライブ打ち合わせ、雑誌インタビュー。過密スケジュールの合間合間に悩みに悩んで決めたジッポを受け取ってくれた。 黒とゴールドで大人の男らしい、浦原に似合うジッポ。 愛用してくれると言った彼の声がまだ消え去らない。 こんなにも嬉しい。畜生、嬉しいんだ。やっぱり嬉しい。こんなにも心が浦原でいっぱいいっぱいになって仕方無い。 彼の一挙一動に目を奪われる。彼の一言一句を脳が記憶する。耳が覚えている。まるで歌う様に話す彼。 「…ダメだ、やっぱり好きすぎる……っ」 一護の脳内で、抱き締められたそのヴィジョンが何度も何度も巡る。客観的に感じた彼のぬくもり、冬の風の冷たさ、香水の甘い香り、少しの煙草の匂い。彼の声、腕、指先。どれもこれも、一護の熱を上げる。 畜生。一つ呟いてしゃがみこんだ。 火照った頬を冷たい外気が冷ます様に撫でる。 恋は苦い。だけど甘い。辛い事だらけだと思った恋が今、そうじゃない事も多いのだと気付く。だって今、一護の心はこんなにも満たされていて、嬉しくて恥ずかしくて、どうしようもない高揚感でいっぱいいっぱいだから。 やっぱり、諦めるのを止めよう。グダグダ考えるのは自分の性質にはあってない。 一護はそう決心して今後のスケジュールを脳内へと思い浮かべる。 「一護。あまり表に出るな」 喉を壊す。と背後から聞こえた声に勢い良く振り返る。 「斬月さん!年始のライブ終わったらさ、いつ休み取れそう?」 「……どうした急に……すぐには出せないぞ?」 「うーん…そっか……じゃあ分ったら直ぐ教えて!」 斬月の目には心なしかウキウキと高揚している黒崎一護が映る。 ライブが終わった後はまるで世界の終わりでも感じ取っているかのように陰鬱なオーラを纏っていたのに。どういう事だ?と首を傾げながらワゴン車に乗る様、施す。その際、一護から漂う香水の仄かな香りに斬月はサングラスの奥底で目を細めた。 まさか。なんとなく、心がざわめいた感覚に陥り、あの男が辿ったであろう大通りに面する道を振り返る。 『あんたの世界を奪い去ろうなんて不届きな事、思っていませんから』 そう苦笑いをした男の声が脳内に響く。 昔から欲しい物はどんな手段でも手に入れていた古くからの友の最初で最後の諦めにも似た発言。らしくないじゃないか浦原。心中で思い、斬月は一護の後ろ姿を見て目を伏せた。 男が諦めた小さな恋が今、目の前に居る。 「……なんだか複雑な心境だ……」 呟いた声が夜の闇に吸い込まれようにも、痛んだ心の鼓動は消えず少しの重みを持って斬月を悩ませた。 if story in case ◆えっと……言い訳なんですが、cameraでは冬の季節になってますので一護ちのライブが年明け前に行われています。それで季節外れではありますが、浦原氏のバースデイが後に控えているわけです……だから……その………まんまイベント外れで連載しちゃってすみませんっ!!!!← ふう……なんかやっとここまで書けた様な気がします……一護ちは持ち前のポジティブさで諦めない方向に持っていきましたが、旦那の方は相変わらずww(笑)どうあがいたってhyenaの二人はどっちかが恋に臆病だったりします(笑)ここまで書き上げるのにこいつら3回くらいすれ違いしたんだゼ★勿論書き直しなんだゼ★そんなんじゃあ浦一になんないんだゼ★ぷぎゃww← もう本当……どうにかこうにか思い描く最終話まで頑張ってくっつけさせます!!!← |