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5-2


カフェテリアと呼ぶには渋すぎたそこはグレイで統一された建物の地下にあった。
シックな黒を強調した重い扉を開けると薄暗い店内に蝋燭の眩い光が漂い、耳に優しいジャズが優雅に流れる。まるで時間から切り離された様な場所だった。
マスコミと一般人にばれないよう、サングラスをして出てきたが、これはあまり意味を成さないだろうと思い外す。

「いらっしゃいませ〜。今日は珍しいですね、こんな時間に来るなんて」
「ちょっとね。連れも一緒だけど良いですか?」

カウンターバーの方から背丈の低くてなんとも愛らしい少女が目を大きく見開きながら浦原に笑顔を向け、それから浦原の後ろにいる一護を見て軽く会釈をする。
いくつだろうか?ランドセルを背負わせたら小学生に見られるだろう、それくらい幼顔。黒い髪の毛をツインにまとめて困った様に笑う彼女が故郷に居る自分の妹達と重なる。

「………え…、え…もしかして…ブリーチの黒崎一護さんですかっ!?」

カウンター席に座って周りをキョロキョロ伺っている一護を見て、身を乗り出しながら叫んだ店員に一護は苦笑しながらどうもと頭を下げてみる。

「うわ、うわぁ………は、初めまして!私、ロジカルのバーテンダーしてます紬屋雨です!」

真っ黒い瞳をキラキラさせ、口元近くまで持ってきた両手を組んで、ウルルと言う少女はまるで神様にでも祈る様な形で一護を見上げたものだから浦原は苦笑し、ウルルの頭を軽くぽんぽんと撫でる。

「有名人なんて腐る程来るでしょう?」
「なに言ってるんですか喜助さん!黒崎さんは初めてなんですよ!それと……」

知っている癖に、ボソリと呟いたウルルを見て浦原は一層笑みを深くする。二人の間に何があるのか、慣れた口ぶりのウルルはきっと浦原の事を自分よりははるかに良く知っているのだろう。現に浦原の事を「喜助」と呼んでいたのだから。

(そっか…名前、喜助って言うんだっけ?)

胸の奥底から唸る様な熱と痛みが一護の皮膚を突き刺す。小さな棘はいつか大きな刃となって一護を切り裂くだろう。その痛みを想定し、今から堪える様に眉間に皺を寄せてみた。
馬鹿みたいだ…今から身構えるなんて…少しだけ笑ってみせる。

「こっち方面は全然来ないからなぁ…でも静かな所だし、今度はメンバー一緒に来るよ」
「本当ですか!!嬉しいですぅっ!」

目の前で大きく開かれる瞳にさすがの一護も苦笑して浦原を見たら、凄く優しそうにその金色が和らいでいたのでドキリと浅ましくも心臓が鳴る。それを誤魔化す様に手渡されたメニューを見て、一生懸命に文字を追った。






「あの子ね、デビュー前から好きだったんですよ」
「……え?」

ロジカルから出た後、人通りも多くなったのでサングラスをつけ、のどかな住宅街をスタジオに向けて歩いてると隣からの浦原の声がそのまま耳に入る。少し遅れて声を出せば冬の風が一層強く吹いたものだから咄嗟に首をダウンジャケットのフードで覆う。しまった、マフラー持って来たら良かった。

「インディーズの頃からの追っかけファン。と言うか君のファンって言った方が良いかな?」

ふわり、瞬く間に浦原の煙草の香りに包まれたと思った。それは浦原が首に巻いていたグレイのマフラーを取り、一護の首元へ巻きつけたから。大人らしいシックのマフラーから漂う彼愛用の煙草と香水の香りが冬の風から一護を守る。

「喉、痛めたら大変でしょうに」

少しだけ咎められながら笑われる。そんな優しく笑わないで欲しいと思ってしまう程に。

「……お前は、寒くねーのかよ…」
「まあ、海外生活が長かった分。日本の冬は以外と平気かな?」

黒いロングコートのポケットに手を入れて歩く隣の男は、なぜか妙に色気があって、同じ男なのに見惚れてしまう。
日本人離れしているからとかそう言うのでは無く、男が持つ本来のオーラが周りの風景ごと一枚の絵にしてしまうのだ。これが一般人だなんて信じられない。彼なら目指そうと思えばパリコレのモデルにだってなれただろう。
少しだけ、歩みを止めて浦原の後ろ姿を見、人差し指と親指を使いそこに長方形を作った後、そこから覗いた。
即席レンズ越しに一枚の絵を見る。
黒いロングコートが冬の風に晒され、彼のくすんだ金色の髪の毛がサヤサヤと風の流れに乗る。灰色の空に浮かぶまだらな雲が冬の寒さを物語っている様に、ああなんて冬が似合う男なんだろうと思った。

「あれ、一護さん?」

傍を歩く一護が居ない事に気付き振り返った瞬間、心の中でシャッターを切る。
きっと、こういう瞬間を写真に収める事が楽しくてこの男はカメラを握っているのかもしれない。

「お前さ…冬生まれかなんか?」
「おや、ビンゴ。12月31日生まれ」
「……げぇっ!はた迷惑なヤツだな!」
「ム。僕なんてまだ良い方ですよ〜。僕の知り合いで1月1日生まれの人が居ますよ」
「……その人絶対、なんにでもお祭り騒ぎとかするタイプだろ?」
「……うわぁ、何君エスパー?」

今度紹介しますね。と笑われて再び肩を並べて歩く。
時々触れる腕にソワソワしながら、手とか繋いだら驚くだろうななんて考えて心の中が暖かい何かで埋め尽くされる感覚がした。出来る事なら、優しい恋のままで終わらせたい。









この手を伸ばしてしまう前に、


◆ウルルちゃんがバーテンダー(笑)なんか気付かないうちに毒入りカクテル飲まされていそうですね^^^←
もうなんか浦原氏がエロい方面にしか行かないのは何故だ…お前カメラマンだろう?ただのカメラマンだろう?ただの有名カメラマンだろう?
一護さんがほだされまくってアワアワしてます(笑)そんで一護さんは我慢の子^^^←




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