2-2 「要はお前をヤル気にさせれば良いんだろう?…そう啖呵切ったのは君だけど?これは一体どう言う事?」 「うぅ…っ」 目の前で金色が鋭く光った様な気がしないでもない。まるで蛇に睨まれた蛙のごとく、一護は仁王立ちする男の前でただ小さくなり唸るだけ。だって、カメラ向けられてもどうしたら良いか分からない。あまり得意では無いのだ。 「…こんなんじゃあ僕の腕が落ちたって言われちゃう。それだけはごめんですよ。ほら、笑ってみて」 最大イベントのライブが終わったので時間は空いていた。スタジオで新しいアルバムに収録する曲取りをした後、撮影へと入る。用意されたスタジオはアメリカのオフィスみたいにガランとして、真っ白い壁と真っ黒い天井が印象的な所だった。天井と同じく真っ黒いフローリングが冷たくて心地好い。 そこに用意されていた茶色の皮製ソファへと腰かけて、一護は男を見上げて笑ってみせる。 「………君、なにか世界に恨みでもあんの?」 「なんっだと!?」 「こんな凶悪な笑顔、テロリストにも居ないよ。」 「お前な!」 自分から啖呵切っといてなんだが、これは思った以上に恥ずかしい。モデルでも何でもない、いちミュージシャンが写真集?ポーズなんて取れたもんじゃない。と言うか本当…穴があったら埋めてくれな状態に、一護は真っ赤になりながらあわあわする。 その様を無表情に見ながら溜息を吐いた。 「カメラ慣れ、してないんでしょ?」 「…ってか人生で初だ……何も面白くねーのに笑えるかよ……」 段々小声になっていく、項垂れたままの一護の頭から耳が生えていそうだ。ちなみに柴犬の耳。ご主人様に叱られてシュンって垂れ下がっている感じ。浦原は想像して笑う。随分似合ってるじゃないか。 「ライブでは楽しそうでしたけどね?」 「…………は?」 「凄く笑ってた。ああ、本当に楽しいんだろーなって思った。」 レンズを弄りながら話す浦原に顔を向けて、口をパクパクさせる。 「え?ってか…は?…何、来てたのかよ…あんた…」 「勿論。日本を代表するロックバンドのライブですもの。VIP席に居ましたよ」 「……聞いてない…」 「態々言わない。それと、あんたでもお前でも無くて浦原、浦原喜助」 「…え?」 僕の名前。と耳元に響いた声に体が反応して耳を塞いだ。ボーカリストでも声優でも無い癖に良い声の持ち主だと思う。恋次もグリムジョーも修兵も、斬月さえも、一護とは違う皆低い声だけど…こんなに腰に直接響く様な、俗に言ういやらしい声を出す男なんて周りに居ないから凄い居心地が悪い。変にドギマギしてしまうではないか。 「まあ別に良いんすよ。僕は一護さんって呼びますからどうぞ、お前とかあんたとか好きに呼んだら良い」 「……っ!いちいち……っ、わーったよ!浦原浦原!浦原喜助!」 どうだ!とでも言わんばかりに勝ち誇った笑みを逃さずカメラに収める。シャッター音だけが後に残り、一護の口は開いたまま閉じない。それを無視して確認する。 「うん。今の感じ」 はい、と目の前に翳されたカメラの液晶に映る自分の顔は自分では無い感じがする。なんだかやけに幼く見えてしまうのは着ている服のせいか?それとも笑っているからだろうか? 「あれだね、生意気そうな表情が一番良い」 「あんた…っ本当に意地悪いよな!!!」 「うーん…でもこのままじゃあ作品にはならないな…」 「おい!人の話聞けよ!」 目の前に居た浦原に向かって吼えるが、カメラを弄ったまま一護を見ようとしない。そんな浦原に焦れて立ち上がった。やっぱり頭一つ分大きい浦原を見上げる形になる事に腹が立つ。こんな体全体で人を苛立たせる事が出来る人間と初めて関わろうとしている。 瞬間、浦原が一護の方を向く。 目の前に広がった金色に一瞬、自分の周りの時間が止まった様な気がした。 「そうだ、僕に恋してみてよ」 唐突に言われた言葉に、金色の瞳に捕らわれる。 「……は?」 「レンズ越しに僕を誘ってみて」 「なに…言って…」 カシャ。また不意打ちで撮られる。殴ろうとしていた手はいつの間にか浦原の黒い上着の裾を握りしめていて、それにも自分じゃ気付かないくらい。カメラだけが二人の間を埋める。目と目の先。レンズ越しにあの金色が一護を見てる。 そう思った途端にどうしようもない羞恥が襲ってくる。 「っ〜〜!!」 「ありゃま。何?お湯沸かせような勢い。顔熱いっすよ?」 「ううううるさい!お前が、変なっ事、言うから…だろ!!!」 ふわりと自然に触れてきた浦原の手を叩き、乱暴にソファへと腰掛けた。本当は脚に力が入らなくなって座り込んだんだけど、そんな事情けなくて言えない。でも、一番情けないのは不覚にも高鳴った鼓動。左心房部位、どこにあるのか分からない心がドキドキと鳴いた。 恋をして、と彼が言う ◆浦原氏が仕掛けてきました。 仲良くなるの早いなオイ。そんでこっそりライブ見に行っちゃう浦原たまなのでした^^^ バンドメンバーは基本的に恋次はお馬鹿ポジションです(笑)グリムジョーはちょっとお兄ちゃん気質なのか一護の事を可愛がってはいます。まあ本人はそう思ってないんでしょうが、ホラ、好きな子程苛めたくなるってやつです^^修兵はモロお兄ちゃん気質(笑)一護の暴走を止めてくれます^^^ 浦原氏はカメラマンの癖に良い声の持ち主です(もう私の趣味丸出しだな…) |