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1-2

「ヤダヤダって駄々こねてるガキの世話する程、僕暇じゃないんスよね」


最初は我が耳を疑った。対面してまだ5分とも経っていないのに暴言をさらりと吐いて捨てた男を最初は呆然と見てるしかなかった。と言うか何を言われているのか分からなかった。まさか今自分は貶されたのか?だって男の表情がにこやかに笑みの形を作っていたから。その優しそうな笑顔に騙されたのだ。

「……何コイツ。」
「カメラマンだ」
「………態度でけぇ…」
「どっちが。君、あれでしょ?売り出し中のアイドルかなんか」
「バンドボーカルだっ!!!」
「はっ、同じ事っすよ。僕から見たら」

アイドルだろうが、ロックバンドのボーカリストだろうが、女優だろうが男優だろうが。僕からしたら人間なんて一被写体にしかならない。鼻で笑う様にそんな暴言を吐き出すのに、笑顔だけは変わらず優しいまま。その笑顔が毒なんだ、と思った時にはもう遅すぎた。

「斬月さん俺、嫌だかんな!写真集とかも本当にヤダ!俺は…歌うたえれば良い…って!何無断で撮ってんだよ!?」
「………浦原…」
「いやあ、中々ぶっさいくな顔して怒るな〜って思って。君、末っ子長男?我侭だね」
「…っ〜〜!!ぶっ殺す!」
「一護!」

手に持っていた一眼レフを構えてシャッターを切る。一護を罵倒しながらも指先だけは器用にレンズを回したりシャッターを切ったり。シャッター音と男の笑みだけは変動しないまま、それが更に一護のプライドを傷つけ逆上させた。
安い挑発に乗り右腕を振り上げた瞬間、傍で斬月の声が聞こえたが止まらず、男目掛けてその拳を振り落とせば、手首を難なく捕まられ瞬時に捻られた。幼い頃から喧嘩慣れしている一護だから分かる。この男、強い。

「あっぶな…カメラにぶつかったらどうするんだ。斬月、このガキが決める事じゃないっスよ。こっちから願い下げだ。」
「……浦原…」
「てっめぇっ」
「ねえ、吼えるだけだったら犬でも出来る。君は、何を過信しているのか知りませんがプロとしてやっていってる自覚があるなら仕事を持ってきた斬月の立場も考えなさいな。ガキだって言われたくないならそれなりの覚悟なさい。ここには君の代わりなんて吐いて捨てる程いるんだ。それを一個人の我侭で人様を巻き込んでちゃあお話になんない要らない仕事だって勝手に解釈するな。甘ったれんなよクソガキ」
「……っ」
「もう良いだろう…浦原…」
「おや?随分可愛がってるじゃないスかこのボーヤの事」

きつく握られた手首を離されて、一瞬だけ見えた男の眼光に貫かれた。生まれて初めてかもしれない、こんなに他人が怖いと思ったのは。それと、先程の暴挙に出た自分を酷く恥じた。なんて、なんて情けないんだろう…。悔しいが目の前の男の言う通りだ。これじゃあ斬月の立場が無い。

「………るよ…」
「…はい?」
「やる…っつってんだよ…写真集…出す…」
「だからそれは君が決める事じゃない。僕が撮りたいか撮りたくないかだ。正直、今の君にはなんの欲情もそそられない」

冷めた瞳が一護を射抜いた。立ち上がったら男の方が頭一つ分大きい事に気付く。二人を見ながら斬月は躊躇したが、浦原がカメラを片手に一護を見定めているので口を挟むのを止める。
彼の金色が一護を映し出している。

「お前っ口悪い!」
「お互い様」
「〜〜っ……要はお前をやる気にさせたら良いんだろうが!」
「おや、ヤル気にさせてくれるの?君が?」

鼻で笑う。先程とは打って変わった瞳の色。冷たい金色だったり茶目っ気のある金色だったり、甘い金色だったり。男の瞳はコロコロと色を変えて一護の琥珀に映る。

「斬月、この子の色気、出る瞬間は?」
「歌っている時だ」

成る程。斬月の発言に快くしたのか、一護の顎を取りながらほくそ笑んだ男の近づいた金色に一瞬だけ鼓動が早くなった様な気がした。冷たい人差し指がすうっと顎下を撫でて離れる。

「良いでしょう。一週間後にまた連絡します。それまでお預け。いいね?」

勝気に笑んだ男に、一護は出る言葉無く黙って頷くしか術は無かった。














レンズ越し、その瞳は冷ややかに光る


◆連載第二弾です^^^
カメラマン浦原さんと人気ロックバンドのボーカリスト一護さんの恋物語です。
と言うか一護が歌ってる所を想像出来ないのだが…大丈夫か?←
いやいや、カメラマン浦原をずっと出したかったんで頑張ってみせます!かなりパラレル率が高い話ですがカメラ知識をググりながら挑戦していきたいと思いますんで付き合って下さったら嬉しい^^
そしてしょっぱなからお互い険悪モード(笑)浦原様に至っては一護の事不細工呼ばわり(爆笑)そんな二人が果たして最終的にはメロンメロンになるんだろうか…?←




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