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「かわいいね、一護君」

浮竹がニコニコしながら話しかけると一護は眉間の皺をより深くし、出されたフルーツ盛りを黙って受け取り銀色のトレイに乗せた。
今日で何度目かの揶揄。まあ浮竹の場合は本当の褒め言葉に匹敵するのだが、男の一護からしてみれば「可愛い」だなんて馬鹿にしているのと変わらない。一角と弓親は普通に仕事をしていたが(一角に関しては客が目を逸らす始末だ)初めてコスプレ(しかもマニアックな!)をしたビギナーの一護からしてみたら今日の上がり時間までが永遠に感じられる。
まだ11時だし……。開店から未だ2時間しか経っていない事に愕然としながらも一番盛り上がっているテーブルにフルーツを運ぶ為、重い足を引きずる様にして歩く。そんな一護の後ろ姿を見て、キッチンでは。

「なんか…耳がしょげてる様に見えるんですけど…あいつ…」
「うーん、本当に可愛いと思うんだけどなぁ」

検討違いな発言をした浮竹をよそに、可哀相にあいつ…と海燕は囁いた。


「お待たせしました魔女のフルーツ盛りで御座います」

イベント時には定番メニューの名前も変わるらしく、噛まない様にいたって平静を装いながら一護は黒いメタリック調のテーブルにガラスの器を置く。その間にきゃあきゃあと黄色い声が四方八方から飛び交い、一護は瞬間的に耳を塞ぎたい気持ちになった。
ちら、と見れば目が合う。

「ねえねえ一護〜」
「……なんスか…」
「その尻尾可愛いじゃない!あ、もちろん耳もね」
「ほな僕も一護ちゃんと同じ耳付けたらかわええって言ってくれるん?」

銀色の髪をオールバックにまとめ、その上にでかくて派手なテンガロンハットを被った(本人曰く海賊らしい)ギンが、一護を茶化す目的で身を前へ乗り出した乱菊に向かって両手を頭の上にかざした。
乱菊はこの夜の世界では名の通った常連のセレブだ。ちなみにギンの幼馴染って事もあり、常にこの店に顔を出してはホストでも無い一護にちょっかいを出す。勿論、幼馴染の彼も一緒になって一護にちょっかいを出すものだから何度か一護によって痛い目を見せられていた。(良い加減に学んだら良い)
円状のテーブルを囲んだ赤いソファ、その席には4人の乱菊を含めた女性陣と、ナンバーツーとナンバースリー、新人ホストを入れて計7人の席。今日一番盛り上がっている席の中で唯一不満げな視線を一護に送るのは他でもないナンバーツーの浦原で。自分は隣に座ったショートカットが似合う小柄で可愛い女の子に苺を食べさせて貰っている癖に、一護と目が合えば不満げに目を細める。

「失礼します」
「えーっもう行っちゃうのー!?」
「せや一護ちゃん、こっちの席につきぃ」
「仕事中です。」

一護も一護で不貞腐れた態度を隠す事なく仏頂面でそう言い放ち、その席を後にした。後ろ手でギンと乱菊の声が聞こえたが敢えて無視だ。
なんだってんだ一体!人が羞恥心を堪えて仕事してるっつーのにあの態度!つかお前いつに増してベタベタしすぎなんだよ!この……

「スケコマシ野郎!!」

ずかずかと乱暴に奥へと引っ込み、そして裏口に続くドアを蹴る。
出勤前のミーティングからあんな調子だ。視線を送り続ける癖にこちらが浦原へと視線を向ければあから様に逸らされ、目が合えば今度はすぅっと細められる。
毎日ヘラヘラとした緊張感の無い笑顔をウザいくらいに送る癖に今日に限って彼は不機嫌絶好調だ。
少しでも吸血鬼の格好をした普段では見られない浦原にときめいたって言うのに…勿論これは絶対に言わないが。女の子といちゃこらするなと我侭を言いそうになる。仕事だと分かってはいるが、こう言う日はなんだかそんなみっともなくも女々しい感情をぶつけたくなる。浦原が何を考えているのかは一護には分からないから。言ってくれないと不安になるから…

「ちきしょー……」

退勤の時間まであと3時間余り。
自分の馬鹿みたいな格好にも堪え切れないが、浦原のあの態度はもっと堪え切れない。恋愛ビギナーの一護にとって浦原の想定できない行動は不安の何者以外でも無い。
ホストに本気になったら終わりよ。と良く聞くフレーズが耳の中で木霊する。




今日は散々な一日だった。給料日後の金曜日はとてもじゃないが忙しく、既にコスプレの羞恥心を忘れ仕事に追われていた一護は風呂から上がったと同時にソファに倒れこんだ。もうヘトヘトだった。足はパンパンで風呂から上がったばかりだかの体は火照っている。黒の革張りなソファが冷たく心地好い。
「いつでも来て下さいね」と手渡されたシルバーの鍵はテーブルの上で放置プレイ。
浦原のマンションに生活感は無かった。あるのは大きいダブルベットとソファ、おざなりで冷蔵庫とエアコン。家具はそれぐらいで後はだだっ広い部屋がいくつかある。そんなマンションに一人っきりは正直寂しい。まだ一護の2Kアパートの方が幾分か寂しさは紛れる。

「まだ4時…か、」

ナンバーツーの彼が上がれるのは大抵7時か8時。遅い時では12時くらい(店であんなに飲んでおいてその後でも飲むのだから良く体が持つよなと関心を通り越して呆れる)このまま寝てしまおうか。明日は土曜なので学校は無し。ゆっくり寝れる、と携帯の電源も落とさずに瞼が下がるのを大人しく受け入れた。
夢の中でも甘いあの声で呼ばれる。




「…さん、……一護さん、」
「ん、な……に…、れ?…浦、原…??」

ああ、帰ってきたのか。
無理に覚醒させられたので寝ぼけながら目の前にいる浦原の髪に触れた。ああ、少し酒と煙草臭い。そう思ったら自然と眉間に皺が寄る。今何時?と聞けば5時だと言われる。

「え、なんで?」
「早上がり。無理言った」
「……なんで」
「一護さん帰るから」
「…お前良くそれでナンバーツーが勤まるよな」

その内ギンに追い越されてもしらねーぞ。と言うが、浦原の表情は店に居た時となんら変わりはなく。その無表情な瞳からは何の感情も読み取れない。一護はそんな時の浦原の瞳が嫌いだ。
薄い金色かかった瞳は透け余りにも透明で、一護の全てを見透かす癖にそこから伝わる感情は少ない。
感情の読み取れない瞳なんて嫌い、だ。

浦原の手が悪戯に一護の少しだけ濡れた髪を撫でる。相変わらず瞳は微動だにしないが、一護は頭の上で動くその手を黙って受け入れる。こいつは俺が何か言わない限りずっとダンマリだ。
何を考えているのか分からない浦原。一護よりもずっと年上で大人の男で、甘い言葉ばかりを吐く浦原。子供な一護が手を差し伸べない限り、この大人は身の内側を晒してはくれない。
ズルイ…こんなの、俺ばかりが好きみたいじゃないか…

「…お前、何怒ってるの?」
「え?」
「……店でずっと、そうだったろ…」
「なんの話?」

きょとん、とした可愛い音が良く似合う。
浦原は小首を傾げながらも一護から目を離さない。その金色に囚われたまま、一護も負けじと浦原を睨みつける。

「ざけんな…っ、店で、たくさん目ぇ逸らしただろ!」
「……怒ってるって、思ったの?」
「は!?目ぇ逸らすわ、睨むわ、女の子とイチャイチャするわで!これのどこが怒ってないって!?」
「いや…僕ホストだから…女の子とイチャイチャって…」

どこまで白を切る気だこの男は!居心地の良い夢から無理に起こされた一護の鬱憤が今になって爆発する。
浦原と一護の喧嘩は先に切れるのは大抵一護だ。
浦原は余りにも自分の気持ちを言わなさ過ぎて、一護が逆ギレを起こすパターン。今回もまるで同じ。キレている一護を目前にしても浦原は惚けた感じで小首を傾げたまま。

「マジ、むかつくその余裕面…っ、…どけよ…」
「なんで」
「帰る!」
「だめ」
「離せ!今日は帰る!触んな!!」
「なんで」

なんで、だめ。浦原の口からはそんな言葉しか出ない。その手は一護のありとあらゆる所に熱を残しては追い上げるのに、彼の口からはそんな単語ばかり。
浦原は余りにも言葉が足りなさ過ぎる。
なんで怒っているのか、それとももう一護には飽きたのか。一護だけが好きみたいで。それが悔しくて、押しのけようとするも力では敵わない所が更に一護の男としてのプライドをぶち壊す。
浦原が嫌いだ。好き過ぎて、嫌いだ。馬鹿みたいな恋の仕方。情けなくて涙が出そうになる。

「離せよ、触るな!お前何考えてるか分かんねー!俺はエスパーじゃねーんだよ!」
「じゃあ言えば機嫌治してくれる?」
「は?」

実はね、浦原は尚も呑気そうな声で告げる。一護が涙目で叫ぼうが暴れようが、その飄々とした態度だけは変わらずに浦原の手は優しげに一護の頭を撫でる。
甘い声にのって、アルコールの香りがした。第三ボタンまで開け、はだけた胸元からは鎖骨が見え、そこから煙草の匂い。
耳元で囁く甘い声が低くなったのと同時にブワリと漂う大人の香りに目の前がチカチカする。クラクラする。

「うさぎ姿の一護さんに欲情しちゃって仕事どころじゃなかったの」
「ばっ!な、は!?え…意味わかんねー!!」
「意味分からない?あんな可愛い姿見せられて欲情できない程、枯れちゃあいませんよ僕」
「ちげーよっ!つか生々しい事言うな!……俺、お前が機嫌悪ぃって思った…目ぇ合ったら逸らすし…」
「ああ…だって見てたらその場で押し倒しそうになったから」
「な…っ」
「だって尻尾フリフリで、短パンで生足で、おまけに耳まで付けてて。ベタなイメクラより俄然欲情する」
「ううっ、」
「これでも必死で堪えたんですよ?君のうさぎ姿。あれは目に毒だ。ああ、可愛かったなぁ…うさぎ一護さん」
「もう良い……お前、黙れ…」
「なんで?嫌われたくないから言ったのに」

ふ、と耳元に吹きかけられた吐息。どうしたら良いか分からない。自分の体が自分の物じゃなくなる感じ。浦原はセックスに持っていくのが凄く上手いと思う。それは彼の職業柄、手慣れている仕草だからだろうか…そう考えるだけでも結構苦しいのに、ベッドの中ではそれを上回るくらいもっと、苦しい。
熱くてどうしようも無くて気持ちよくて、好きで、苦しくて。そんな感情が体全体を覆って一護は毎回毎回苦しい思いをする。浦原の手によってもたらされる熱に、毎回毎回泣きたくなるくらいに追い立てられる。

「……お前、ほんっとーに意地が悪いよな!」
「褒め言葉ですよ。一護さん、少し意地悪されるの好きでしょう?」
「好きじゃない!!!」
「じゃあ甘やかされたい?」
「うー……っ」
「うん。じゃあ目一杯甘やかしてあげる、ね。」

早急に唇を塞がれては息継ぎさえもさせてくれない。本当に…死んじゃうかもしれない…クラクラとする視界の中で綺麗な薄緑の瞳が笑うのを見た。
畜生…一護は心の中で毒付く。
結局、浦原がもたらす熱を受け入れる為に、その首に腕を巻きつけるのは惚れた者の弱みなんだろうか?










ね、いっぱい悪戯しても良い?
そう言った馬鹿な男は子供顔負けの笑みのままでキスを仕掛けた。

「な…に、ぁ、」
「うさぎ姿の一護さん、可愛くて、勿論。今もだけど」
「あ、あ、も…と、ゆっくり…っ」
「うん。あのね、悪戯したいなぁって」

がくがくと揺れる細い腰を掴みながら浦原は一気に一護の中を突く。それと同時に唸るベッドのスプリングと鳴いた一護の声が鼓膜を刺激する。ああダメ、一護の口元から漏れる甘美な声さえも飲み込みたい。犯したい。涙目でキスを強請る一護の瞳を見ながら浦原はそう思う。
座ったまま、下から突き上げられる座位をすると一護は必ず泣く。良過ぎて泣いちゃうんだ。思って浦原は業とこの体制で一護を追い上げる。

「やっぱり、良いなぁ…泣き顔」
「ふ、っうう……ゃあっ」
「感じすぎてヤバイ?ね、一護さん気持ち良いなら良いって言って?」

グン、悪戯に最奥を突けば一護は溜めた涙を撒き散らしながら首を横に振る。
ふるふると震える腰は更なる熱を求めて浦原を締め付ける癖に、頑なに羞恥心から逃れようとしてはそうやって首を横に振る。そんな天の邪鬼な一護も好きだ。
鎖骨に吸いつき、赤い痕を残す。今までに体の関係を持った者は腐る程居たが、ここまで泣き顔にそそられる様な者は居ない。もっと泣かせたいと思うし、もっといやらしい単語を言わせたくなる。もっともっと、苛めたくてしょうがない。
何度もいかせて熱を上げて、一護の羞恥心がなくなるまで。窓の外が明るくなろうがなんだろうが、ベッド上で乱れる一護が見たくて仕方がない。それを全部告げればまた泣きそうな顔で怒るのだろうか?
ああ、それも見てみたいかも。
浦原はそう思ってほくそ笑む。

「本当、苛めがいがある」
「や、も…っ、うらはらっ」
「もっと泣いて」
「んんんっ」

零れた涙は甘くて塩辛かった。
甘い毒をあげて喜ばせて、悪戯して泣かせて、また毒をあげる。
浦原の中の毒に少しずつ慣らして、もう浦原の毒でしか生きていけない様に丹念に、計画的に。浦原は一護に甘いお菓子を与え続ける。




































mad happy that is bad(それもまた、幸せの形)


◆ハッピーハロウィーン!!調子にのってホストパロとかwwmeruさん末期通り越してい た い★
既に頭の中が睡魔で埋め尽くされている状態でのハロウィーン小説UPとかww
joinにてプチ連載していたホストネタを引っ張り出してきての季節小説です。
一護にバニーガールさせたかったのと、浦原さんホストでプラトニックな鬼畜を書きたくて書いちゃった代物です。うん。間違った方向に一護は愛されているよね。毎回毎回。それもこれも管理人の歪曲された愛情が暴走しちゃった故なので諦めてよ一護(おいーっ←)
と言うか…浦原さんホストって…(笑)なんか微妙に似合いませんね…(爆)だって奴が女の子に囲まれている姿を想像できないww女の子に甘い言葉吐きまくっている浦原とかwwどんなジョークだよって思っちゃう(笑)あまりにも想像が出来なかったので敢えて接客している描写を書きませんでした(と言うか書けなかったのが正しい)
色々脇役とか出せて楽しかったwあとエッチ中w一護の泣き顔ってかなりの確率でそそりますよね?早く原作で泣いちゃうが良いよ君。もうめちゃ悶えるんだからーっ(主に私が)
こんなお馬鹿延長なお話でも楽しんで頂けたらこれ幸いです^^

meru




あきゅろす。
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