盲目に傷付けた 卑怯でいて計算高いキスを仕掛けた。 交じり合わさった吐息が熱が、ドロドロと醜い感情と同化した。浦原の吐息が舌先に甘く乗っかる。お前の声さえも飲み込みたい、そう思ったら舌先を甘噛みされる。 「ん、ふぅっ」 「はっ、…隊長」 切羽詰まった浦原の表情は綺麗だった。薄緑色の瞳に映し出されている自分は醜いのに。這う舌先の熱さが俺を傲慢にする。 浦原の熱に責任転嫁した。彼の弱味に漬け込んだ。浅はかでいて余りにも貪欲に、自己満を正当化する。ごめんなさい、ごめんなさい。こうでもしなきゃ、お前が手に入らないって思ったんだ。 「はっ、うら…やぅっ」 「たい…ちょう、隊長…、」 ねっとりとした感触を胸元に感じた。飴玉を転がす様にいたぶられ、もう片方は指の腹で刺激される。既に着物はその役割を果たさず両肩にまとわりつくだけ。 身動きすら儘ならない状態での愛撫は刺激が強すぎる。 浦原の吐息が鼓膜を揺さぶり、触れられた箇所から微量の電気が走り抜ける。 なんて、抱き方なんだろうか。緩く、強く求められる。言葉無く、舌先から伝わるのは溶ける様な情熱と少しの愛か? ああ、ああ、浦原……お前の声が熱が鼓動が最早極上の阿片の様だ。 クラクラと、目の前に星屑が広がる。 「黒崎隊長」 「っ、」 一瞬にして熱が引いた感じ。襖一枚向こう側に第三者の影が見えて咄嗟に浦原を抱き留めた。鎖骨に当たる浦原の毛先が悪戯に動きくすぐったさを感じる。 「浦原副隊長の容体は如何です?気休めかもしれませんが薬、」 「今…寝たから」 「寝た…?あの熱で、ですか?引いたんです?」 「え…あっ、」 吐き出した声は少し震えていた。ドクン、ドクンと高鳴り出す心臓が…どうしよう。浦原に聞かれてしまう。 隙間も無い程に密着した浦原の肌が悪戯に動き出したからそこに目をやる。 獣の瞳が微笑んでいた。 綺麗に上がる口角がそのまま上唇を舐める。その音が鼓膜を揺さぶる。 「は……っ、」 「黒崎隊長、どうしました?」 外から聞こえる彼の声に、浦原の口元から発せられる水音に。まるで夢と現の境目に漂っているみたいだ。 彼がいつ、あの襖を開けてしまわないか。思うのに、浦原によって施された熱が脳内を侵食する。 こうして、馬鹿になる。 「ぁ、…み、水溢した…ぅっ、だけ、だから…」 「…そうですか。それでは、俺…行きますんで。何か急を要する様でしたら呼んで下さい」 「分かった、…有難う。」 カタカタと震える両手で口を押さえ付けた。極力、声が震えて仕舞わないように。チラリと襖に目をやり、彼の影が離れて行くのを確認して浦原を見る。 まるで蛇の様にまとわりつく舌先が卑しい音を発し、浦原の髪の毛がパサパサと内腿に当たるのさえも快感に変わる。 浦原が触れる箇所全てに熱を移す様に。余す所無く愛撫される。 「も…っ、んぅっ、」 ゴクリと飲み干した浦原を見てかああっと頬に熱が集まった。 なんて、なんて…! 初めて知る他人の熱、それが浦原の物だと思えば思う程に、再び沸き上がる熱。浅ましい自分の身体が情けなくなる。 ごめん、浦原…ごめんな。 浦原と目が合う度に痛む心が一護の涙腺を弱く、弱くする。 今だけ、今だけで良いから。 好きな女を想像しても良いから。 「あ…あぁっ」 「黒崎隊長、……っ」 お前の爪痕を残して欲しい。 強く願い、虚しいと叫び泣いた心を無視した。 傷をつけて… |