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貴方の心の蔵を撃ち抜いてやろうか

伝わるのは微熱と拒絶、
こんなに自分が情けないだなんて。一護は思った。
部下の一人も守れない(いつも助けられてばかり、だ)その事実よりも痛かったのは浦原の優しい拒絶、誰から見たって浦原の状況は良くない。
足取りは不安定で時折よろける、表情は余裕ぶっこいてるつもりでも額に少しの汗。
手に握った拳を震わせて大丈夫。と呟く。
これのどこが大丈夫だって?


「っ…」
「浦原っ!」
「良い…大丈夫です、から」


触んないで、
そう。言われた。実際口に出して言われていないだけマシではあったが、そう。瞳は語っていた。それが余計に辛いし痛い。なんで、浦原…
悪循環だけが無限ループだ。

触れたくても叶わない、出来る事なら肩を支えて歩きたい。手助けしたい、守りたい、守れない。
一護の中で駆け巡る思考が、浦原への想いと拒絶で相反する。それが、こんなにも痛くて、悲しくて。
情けない思いで泣きそうになる。


「局長、」
「…あ、こんさん」


呼ばれた先、浦原の部屋前に突如として現れた白衣姿の男は一護を見て軽く会釈をし、当たり前かの様に浦原を支えた。
一護と浦原の間にある小さな小さな溝を埋めるみたいに、強引に、けれども極自然に。


「なにやってんすか、あんた」
「…しくじっちゃいましたねー」


はは、笑った浦原も自然に男の肩を借りて歩く。
なんだ、この気持ち。一護は思った。心の中で何かが蠢く。真っ黒い、闇の様な泥の様な、ドロドロとした汚い何か、が。
支配される。思った時には足は地面に縫い付けられピタリと歩みが止まる。

襖を開け、浦原が部屋に入っていく姿を呆然と眺める。
振り向いて、浦原。
思った、
振り向いて、呼んで。
俺を呼べ、それこそ自然に。当たり前の様に、
まるで試してるみたいだ。浦原に対しても、自分の気持ちに対しても…。
きつく、心臓あたりを握り締める。


「うら、はら…」
「あ、…隊長、」


ショックだった。
浦原の取った行動に、ズキリと痛んだ心臓を隠す様に。死覇装を引っ張る。
縋る様に見つめた先の浦原は困った様に、だけど当たり障り無く笑顔でこう言う。


「すみません。迷惑をおかけしました、私の事は気にせずに隊長は」
「やだ。」
「…隊長、」


自分自信でも驚いた。
遠回しな浦原の拒絶に、その言葉の先を聞きたくなくて吐いた子供の様な駄々、嫌だ。と、帰って良いよと言われる前に吐き出した。


「部下が、怪我してんだ。俺が…看病」
「いけない。」


今度ははっきりと、冷たく。
浦原の表情は先程と打って変わって険しい。その射抜く様な冷たい視線に、ビクリと情けなくも震える。


「んでだよっ!」
「隊長は休んで下さい。私の事は阿近さんが見ます。」
「俺が見るんだ…。って事で黒崎隊長、このバ……浦原副隊長の事は俺に任せて」
「黙れっ」


その場に居た誰もが一瞬、息を飲んだ。叫んだ張本人もだ。
流れ込んだ秋の風がヒヤリと熱を冷ますかの様に吹き、そして訪れた沈黙を破ったのは浦原の一言。


「戻りなさい。水色さん達も心配してる」
「俺はっお前の方が心配だっ」
「言ったでしょ?私の事は全部阿近さんに任せれば良いと」
「お前はっ、俺の部下だ!」
「あなたに何が出来るんですか」


ひくり、阿近の口角は上がる。なんだって、なんだってこの人達は不器用なんだろう。
思って可笑しくて、そして若干呆れた。
隣の男から伝わるのは変に熱い体温と、微調整された不安定な霊圧。
目の前の子供から伝わるのは必死な想いと、それから自分に対しての苛立ち。
何故、お前が隣に居るんだ。と言わんばかりに睨まれる。


「側に居る、」
「は?」
「俺が、側に居てやるっつってんだ!」
「…はぁ。阿近さん」
「なに?」


なんとも可愛らしい発言をこんな廊下で、しかも大声で叫んだ子供をよそに、浦原は小さな声で阿近に呟いた。
何か、嫌な薬を盛られた。と。そこでいち早く阿近は気づき、浦原と一護を見比べ、それで笑った。


「…なに、笑ってんだよ」
「や、あー…すいません。えっとですね、黒崎隊長?」
「なに…?」
「そんなに言うならこの人、お願いできます?」
「っ、阿近さんっ?」


少しの間、です。解毒剤、調薬してきます。
これまた浦原にだけ聞こえる様に阿近は囁き、叩き込む様にして部屋に二人を入れ、まだ諦めない浦原を軽く無視して部屋を去った。
後に残されたのは激しくなってきた動悸を堪えるのに必死な浦原と、気まずい展開に何をどうして良いのか分からない一護の二人だけ。
居たたまれない。とは正にこの事だ。
両者、ただ思う事は一緒。まるでお互いがお互いの心臓部位に銃口を押し当ててる感覚。
























貴方の心の蔵を撃ち抜いてやろうか




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