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未だ、きつく睨みあげる子供にあからさまな溜息を吐いて見せた浦原は当初の予定を変更させ、子供の手を引っ張り上体を起こさせた。突然の事に驚いたのか、子供の瞳は真ん丸く見開かれ、甘い琥珀色を露にした。

「第一条件、顔は見ない、でしたっけ?」

なんだそれ、当初はそう思い苛立ちを増した条件を口にすれば子供は自然と浦原の膝の上で体を強ばらせた。より近くなった距離、手の置き場に困り男の肩にそっと手をおけば服越しからでもがっしりとした体格の良さが掌から伝わってくる。少し、面白くない。
見た目はえらく細くて華奢で、普段は猫背でひょろひょろしててもやしみたいな印象なのにも関わらず触れてみればこんなにも差がついてしまう事が子供ながらに面白くない。こんなん、肩ってどうやったら筋肉つくんだよ。さわわ、無意識に触れた肩はそろりと伸ばされた腕と連動し、手の中で動く。
布越しから触れられる事の卑猥さに気付きもしない子供を横目で見て大人は内心では舌打ちだ。どうしてこうも純粋で居られるのか、これから行う行為その物がまるで間違ってるとこちらに思わせるくらいには彼は初心過ぎた。
良い加減にしろよ、小さく心中で毒を吐きながら耳元へと唇を寄せる。
いよいよ以って浦原の我慢が切れた瞬間でもあった。
触りますよ。
吐き出した小さな声は掠れ、一護の鼓膜を盛大に揺るがす。

***

眩暈がして体の震えが止まらない。肩から息をするように大袈裟にも震えてしまう体をどうにかして止めたい。息を止めてしまえば良いのだろうか、それとも心臓だろうか。馬鹿みたいな考えと共に熱くなる体、初めて他人の手に触れられた性器はきっと可哀相なくらい震えてるに違いない。
ハッ。吐き出した呼吸は耐え切れずに口元から漏れ出てしまう。唇を噛み締めた所で吐き出される二酸化炭素には色がついてしまう、その事が何よりも嫌で、なによりも恥ずかしかった。
なんだよ、これ…っ
浦原の肩口、煙草の香りが仄かに漂うシャツを握り締めながら今まで味わった事のない羞恥に襲われる。くちゅり、卑猥にもそう唸った水音がやけに生々しく辺りに響く。もしかして外に漏れてるんじゃないかと危惧してしまうくらいには恥ずかしくて、でも気持ち良いから始末に負えない。
だって考えてもみろよ、浦原に…触られてるんだぜ?
胡散臭いトレードマークのシマシマ帽子に胡散臭いヘラヘラとした情けない笑顔、ひょろりひょろりと猫背で歩く姿からは到底予測出来ない、今日の彼。

「っ、…ふ、」

神経質で冷ややかな指先が、人差し指の腹が先端をぐちゅぐちゅと押しては嬲る。この手に何度も子供扱いを受けて腹立たしい日も度々あったが、今は子供扱いだなんて以ての外。未知なる動きを見せる大きな手に戸惑いと羞恥のみが頭を支配して目前がチカチカと輝く。メマイだ、これは。自分で致すよりも強すぎる快楽のせいで涙が滲んでチカチカきらきらと視界を装飾した。
ああ…触れてるんだ。
敏感な一部に、肌に、皮膚に、粘膜に、浦原喜助の手が触れる。
その事が一番、恥ずかしくもあったし情けなくもあり、一護は下唇を噛み締めて堪える事だけに専念した。

「んっ」

それでも…やはり我慢なんて出来ない。
頭と心のスピードがちぐはぐに平行線上で交わる事なく乱していく。漏れた音は取り返しのつかない速度で辺りに響き渡っては自身の鼓膜を揺らした。情けない声だ。甲高い子供らしい声、吐息交りでまるで泣いているみたい。吐き出す二酸化炭素は生ぬるくて熱い。ついでに、体の至るところも熱くて仕方無い。きっと、暖房が利きすぎているのだと一護は思考をどうにか散らす。そうでもしなきゃ浦原を押しのけてこの場から尻尾巻いて逃げてしまいそうだったから。
流石にそれは…すげえかっこ悪いだろう。と子供は声を殺して思う。

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