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"私は私の世界を守る為にかっこわるくても足掻くわ"
そう言った彼女のグリーンアイズは強く光り輝いていた。真っ直ぐで揺るぐ事の無い信念が彼女の瞳を綺麗に彩る。なんだか真っ直ぐ見ていられないくらいの真摯さに弱った心を押し潰されそうになった。
彼に背中を向けて帰ってきた自分は正しく敗者で、守ろうと決意しての行動が逆に彼をとことん苦しめた事に遅く気付いてしまった。彼の元へ戻っても前のような距離は縮まらないどころか、少しだけ開いた距離の間に空洞を見つけては自身の心が痛むといった身勝手さに心が唸った。ああ、恋って厄介だと嘆いた。
自覚した感情が恋なのだと自分で知って、どうしようも無くて。彼にこれが恋なのだとどう伝えたら信じてもらえるのか、どう伝えれば受け入れてもらえるのかと今は悶々としている状態。
今は隣で映画の中へと食い入る様に入り込んでいる彼。甘い琥珀色は自分ではなくて物語りの主人公とヒロインを映し出す。なんて事ない恋愛映画、男と女の狡賢い恋のやり取りが披露されている大衆向けの映画。
横顔は幼いなあ、だなんてもう映画のストーリーは頭の中に流れず、代わりにカメラのシャッターを切る音があちらこちらで流れる。
カーテンを閉め切った室内は仄かに暗く、カーテンの下からはオレンジ色の夕闇が流れ入る。キャンドルの炎が静かに音も無く揺らめいて彼の顔に影を描いた。ブラウン管の青白い光、影と光の中和を綺麗に描いては尚も鮮明なオレンジ色に目が釘付けだ。
"恋だなそれは"
自身が恋ではないと頑なに閉ざしていた気持ちをあっけらかんと説いた挙げ句、投げ捨てる様に後は自分でどーにかしろ、と告げてやや乱暴に背中を押してくれた馴染みの彼女はにんまりと意地悪く笑んでは再びラブだと呟いて浦原の頭を痛ませた。
ああ、そうっスよ。これは紛れもない恋、ラブだ。
ブラウン管の中で主人公が「コズ、アイラブユー」と意を決してヒロインへと告げた。絶妙なタイミングで愛の告白をしでかした映画の中の二人に軽く嫉妬する。
"映画、観ろよ"
少しだけ横目に動かした琥珀色が浦原の目とかち合って、唇を尖らせながら口を動かす。

「なに?ごめん、読めない」

本当は読めたのにわざとそう伝える。ソファの背もたれに腕を乗せて顎を支えながら一護だけを見つめて口を動かす。
苛立たしげに少しだけ唇をキュっと結んで顔を向けた一護を見ながらもう一度、なあに?と告げて見せた。
"映画、観ろよ、馬鹿"
ひとつ余計な言葉が増えている事にクっと喉元で笑う。

「観てるよ」

"じゃあこっちみんな"

「耳に入れてるから大丈夫」

チっ、舌打ちだけが響き、一護はこれ以上お前に構ってなんてやらないと視線をブラウン管へ戻した。渦中の二人はハッピーエンドを奏でる数分前。だけど二人は?浦原の心臓が押し潰されそうな何かしらの重みを感じて悲鳴をあげる。
トントン、小さく肩を指先で叩く。不機嫌な表情はそのまま、けれどきちんとこちらを振り返ってくれる彼が可愛い。浦原はフと笑ってそのまま無音で口を開いてみせた。
え、一護の口が開く。
映画の中は主人公とヒロインがやっと近付いた距離に涙ながら抱き合ってキスをし始め、中途半端なR&Bがストーリーの終わりを告げた。












無音で奏でた彼のラブソング

◆修兵さんとネルさんのフェイクラブに、こっちはこっちでじれったいラブでお送りしました^^浦原さんには徐々に徐々に大胆になっていってもらおうと思います。いよいよ彼は吹っ切れてきました。吹っ切れた人って行動早いですよね?悩んでいて臆病になっている時程、わけの分からない行動を取って失敗ばかりします。が、良い意味で何もかもに吹っ切れた人って行動力が凄いんですよね、こちらがアっと驚く(笑)ではこれからは浦原さんのアプローチターンへと突入します^^ここまで読んで頂き有り難う御座いました^^
meru




あきゅろす。
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