[携帯モード] [URL送信]
同族嫌悪


不愉快ですよ。





「だぁっから!くっつくなっつーの!」
「え〜!なんでなん!?」


先程からこの調子だ。

どこから降って来たのか分からない(本当にそれこそ浮遊霊の様に)狐に抱きつかれながら。
幼い隊長は悪先苦闘。
抵抗も抵抗にすらなっていない虚しい状態をアタシの目の前に晒したまま、
調子こいた狐は腕を絡ませる。



(抵抗らしい抵抗すらも出来ないのか、)



心の中で悪態を吐く。
それが顔に出ていたようで、子供はアタシの顔色を伺いながら、近付いてくる顔を両手で退ける。



「ちょっ!いったん。これは酷いんでないの!!??」
「なにがっだ!!お前、顔近いんだよっ」



チラチラ。
向けられる視線だけはどこかおどおどしい。
ああ、そうか。
あんなに吠えた後でこの様だ。
彼は今、アタシに対して顔を立てれないのだろう。


それにしても。



「あれ。浦原はんやないの〜気付かんかったわぁ」
「お楽しみの所悪いですがね。お久しぶりです。市丸さん。」



相変わらずだな。この狐は、



「いやぁ、おひさしゅう。なんやほんまに戻って来たんやねぇ?噂だけが一人歩きやと思ったわぁ」
「はは。噂だけだったら良かったんですけどねえ?」
「なんやなんも変わっとらんわぁ。相変わらず男前や」
「いえいえ。君には負けますよ、」


ははは。
あはは。


正直に言おうか。
アタシはこの目の前で胡散臭い笑みを垂れ流している男が苦手だ。
否、苦手と言うよりかは本能で拒否している。と言った方が正しいだろう。



「それより。ウチの隊長を、放して貰えませんか?」
「お。アカンアカン、余りにも可愛いんでな。ついついちょっかいかけてしまうんよ。」



ニタリ。
ホラ、アタシはこの笑顔が大嫌い。
人を舐めくさった悪い笑顔全開だ。



「ぎゃっ!!」
「…市丸さん。オイタが過ぎますよ。」



ペロリと子供の耳裏を一舐めし、こちらの反応を伺い楽しむ。
全く、良い性格をお持ちの様だ。



「こわや、こわや」



そんな怒らんといてなぁ。
怖い怖い。と連発するけども、その顔に恐怖の色なんかみじんも感じない。何がしたいんだ。てめえ。
言ってしまえば楽だが、こんな狐ごときで感情を露になんかしたくないので。
こちらも得意のスマイルで跳ね返す。



「一応、預かっている子なので。」
「てめえ!んだよっ!その言い草はっ」
「なんや。ほんまにそれ目的で戻ったんやな?」



ぎゃんぎゃん喚く子供の腕を取り、狐から引き剥がす。
空になった腕の中をすねた様に眺めながら。



狐が笑った。



「ふうん。」
「隊長、行きましょうか。」
「え…お、おう。」




では、市丸さん。
続けた後に珍しくあっさりと狐はバイバイ、と手を振る。

くるり。と踵を返したかいまに見たなんとも言えない笑顔に苛ついた。




「趣旨変えかい?」




小さなセリフを聞き流しながら。








「浦原、」
「はい?」
「お前、仲良いんだな。」
「……誰と。」
「え?ギンと。」





冗談じゃない。
鈍いにも程があるだろう?


子供の痛い発言に、初日からくじけそうだ。











(同族嫌悪って言ったら少し、聞こえが悪い様な気がした。)





第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!