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ちょっと待っててね、勝ち気な笑みを崩して笑った表情はとても優し気。金色がゆったり柔らかくなる所が一番好きだったりする、だなんて事は言えないけれど。
言葉を残して部屋を後にした浦原が戻ってきたのはそれから30分後、"全然、ちょっとじゃないじゃねーか!"大人しく待つにもこの部屋には暇を持てあます物なんて何も無くて、仕方なしに点けたテレビ、ブラウン管越しに流れたどーでも良いバラエティ番組を見て過ごせば30分は経過していた。少し不機嫌そうに戻ってきた浦原に向けて携帯を翳して見せればごめんね、ひとつ謝って頭を撫でられた。
子供じゃねーんだぞ。不機嫌マックスになりながらも浦原が持ち込んできた大きな買い物袋に目を向け、仄かに漂う香ばしい香りにお腹の虫がきゅるると反応した。
く、押し殺しながら笑いを堪えてる。顔を思いっきり後ろへ反らした状態でもわななと震える肩が笑ってますと伝えていたから一護は無言でパンチ。

「や、うん…パンだけじゃあ足りないっスよね。だからピザ買ってきたの」

片手に持ったひとつの袋を掲げて笑う浦原の口角はヒクヒクと引きつっている。ごめんと謝りながらも尚笑うからもう一発だけ肩にパンチして袋を奪いながらくんくんと犬みたいに嗅いだ。

「何味が良いかなって迷ったから、ハーフアンドハーフって言うの?二種類買ってきました。チーズ、好き?」

香ばしい香りが一気に広がり、腹の虫をいっそう喚き散らかせた。ブラウン管の向こうではつい先程、お昼を知らせるテーマソングが流れたばかり。
コクコクと首を縦に振れば今度はふわり、優しく微笑む。

「良かった、じゃあ食べちゃいましょう。飲み物はコーラ買ってきた。後は…これね」

もう一つの袋の中から一番大きいサイズのペットボトルと片手に笑い、ピザとコーラに続いて取り出してみせたのがあまりにも関連性がない物だったので一護は小首を傾げてみせた。
浦原が取り出したのは見た目にも良い香りがしそうなキャンドル。
ガラスの鉢に入ったラベンダー色の蝋、貼り付けられたラベルにはラベンダーのフォントが白く上品に記載されている。
ひとつだけ取り出したキャンドルの他、紙袋にはあと何個かキャンドルが入っているみたいだ。その意図も読めないし、なぜキャンドルなんだろう?一護は小首を傾げた。それを見て浦原は苦笑しながらピザを渡してテーブルに置いて、と告げて足早にリビングへ向かいテレビのチャンネルを有料チャンネルに切り替える。

「座って待ってて」

浦原の後ろをひょこひょこついてきた一護をソファへ座らせ、浦原はリビングのカーテンを締め切った。シャーっ、小粋良い音がこだまし、冬の日光にしてはいささか強い光を遮断。一気にほの暗くなった室内で音が大きく響く。
ますます、浦原が何をしたいのかが分からなくて浦原の行動全てを目で追う一護はまるで借りてきた猫みたい。視界の隅できょろきょろ動くのを感じて彼に気付かれない程度に笑った。ヤバイ…噴出しそう。思いを押し殺して5個購入したキャンドルを紙袋から取り出してテーブルとテレビの横にあるサイドテーブルに置く。それぞれ大中小と形も色も違うキャンドル全てに火を灯してから電気を消せば昼間の時間帯に夜の影が出来上がった。
アロマキャンドルは香りを混ざりあう事はなく、ほのかに甘くて優しい香りを部屋中へ充満させた。電気を消した瞬間、一護の肩がビクリと動いたのが分かって耐え切れずに噴出しては睨まれてしまう。苦笑しながら横に座って真横を向きながらにんまり笑って見せれば、先程の威勢が半減して眉が困ったみたいに垂れ下がる。コロコロ表情が変わるものだ、不思議に思いながらも心中では怖がらないでと優しく呟く。

「さて一護さん、アメリカ式贅沢をしましょうか?」

ニッコリ笑ってみせれば少しだけ安心した表情になる。ほの暗い部屋の中、真昼間と言うのになぜかセンチメンタルで優しいキャンドルの光が照った。

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