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ありがとうございました、営業スマイル100%の店員から紙袋を受けとって外に出れば辺りはすっかり真っ暗。
冬の夕暮れはこちらを錯覚させる程に早い。もう夜か?そう思って時計を見ればまだ夕刻近くなので時々時間の感覚が鈍ってしまう。
吐く息は真っ白で街中はクリスマスカラーに染まっていた。煌びやかなイルミネーションが夜空を照らし始めている。キラキラちかちか、目にも鮮やかな色彩。光の粒が枯れ木に花を咲かせていた。
マフラーで口元を隠して寒さを凌ぐも、学校指定のコートだけではちっとも温まらない。

「さみい…カーディガン着れば良かった…」
「どっか寄る?」

ブレザーのポケットに手を突っ込んで歩く浦原の口元からは白い息が吐かれる。
時々だが浦原からは煙草の匂いがする。きっと一護が見ない所では吸っているのであろう彼の喫煙の姿は過去に一度だけ見た事があった。
燦々と真夏の太陽が熱を降り注ぐ8月、部活帰りに立ち寄ったファーストフード店の向かい、駅前に居たのは浦原。一番初めに彼の存在に気付いたのは部活の後輩で「あれ浦原先輩っすか?」の一言に一斉に指さされた箇所を見る。
ネイビーのTシャツに黒のスキニー、靴は黒のハイカットウエスタンブーツ。何の飾り気もないのにたったそれだけで長身の彼は悪目立ちしていた。そしてみんなが息を飲んだのは彼が立っている場所、駅前に施された喫煙所で彼が携帯を見ながら咥えていたのは学生には到底不釣り合いのフィルターシガレット。燻る紫煙が彼を同級生から程遠い存在に仕立て上げていた。
アっと息を飲んだのはその後だ。急に顔を上げた浦原と目が合った気がした。
たったそれだけで、もしかしたら彼と目が合ったと言うのは一護の思い過ごしかもしれないのに、いけない場面を見たかの様に心臓はバクバク大きく脈打っていた。忘れもしない真夏の日が今の浦原と重なってしまう。

「…駅前の」
「ん?あー、なんだっけコーヒーショップ?」

習って一護もブレザーポケットに手を突っ込んで呟けば浦原は振り返って瞬時に一護の頭の中を読んで駅前に新しく出来たコーヒーショップを名指す。
小さく頷き、2人揃って駅前に向かった。


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