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おじさん、おじさん…昔の彼がデジャヴする。眉を下げて大きい眼をくりくり、それにプラスされた涙目はどこぞの金融CMの看板犬を思い出させる。自然とやってのけるその瞳でおじさんどこに行くの?行っちゃうの?なんて言われて懇願されてみろたまったもんじゃない。
あの頃は理性を保つ為に必死で、そして過去に捨て去ってきた慕情を完璧に消し去る為に夜遊び女遊び時には男遊びを繰り返す日々を送っていた。根っからのパーティ野郎と悪友達は比喩するが、浦原からしてみれば根っこが腐りきって腹違いの姉に心を奪われた自分も、ワンナイトフィーバーばかり繰り返して欲を吐き散らかす自分も、どれも本物ではないと実感していた。
あの頃の浦原にはリアルがなかった。どれもこれも、どいつもこいつも全てが手の中心をぶち抜いてすり抜けていくただの幻で、後はただただ穴の空いた虚無感と彼女の笑顔だけだからメンタル面はズタボロ。つまらない日々の中で彼女の忘れ形見だけが曇りの無い輝きを浦原に見せていた。
まぶしいなあ。
一護が小さい頃に真冬の水族館へ赴いた時に見せてくれた笑顔が眩しくて二日酔いを吹き飛ばしてくれたのを憶えている。
彼は泣きそうになる一歩手前で我慢してしまうから涙が寸止めで瞳を潤して琥珀色をよりいっそう甘く見せる。八の字に下げられた眉は子供の頃と何ら変わり映えはしないが、眉間に刻まれたままの皺は年を追うごとに深く刻まれていっているから消える事はないだろう。寝てる時でも皺は寄ったままだからおかしくて笑ってしまう。今だって困ってるけど眉間の皺は消えそうにないから親指の腹でググっと押してしまえば瞬く間に不機嫌な表情に変わる。コロコロ、そんなに表情を変えて疲れないのかなと不思議に思う。
子供の強ばった体をよっこらしょと抱きかかえて膝の上に乗せたらオッサンくさい等と言われるが目前のうなじに軽くキスをしたらピクリと微動して再び強ばった。
黒のロンTの裾から手を忍ばせ直接肌に触れる。冷たい、とひとつだけ文句を呟くも背中を浦原に預けてされるがままに冷たい手を誘う仕草がかわいい。慣れる事はない筈なのに、毎回体全体を真っ赤にして照れるのに、与えられる快楽に慣れようと必死な所が健気ではないか。
胸の突起に指先がかすめるとハっと小さく息を吐いて手の甲を口に当てる、浦原から見える一護の耳が赤く染まったのを見据えた時、不意に思いついた意地の悪い事。卓上に放り置いたリモコンを手に取って先程のDVDを再生した。
え?そう言う様に後を振り向いた一護の顎を取って口づけを交わす。
戯れのキスではなくて本格的に追い詰める様なキスを仕掛ければ子供は直ぐに呼吸困難になる。ぷはっ、唇を離せば可愛らしい息継ぎが聞こえる、大人も追い詰められてしまう。

「見て」
「…?」
「彼、凄くセクシーな声してると思わない?」

耳元にズイっと唇を押しつけてとびっきり低くて甘い声で鼓膜を揺さぶる。ぶわり、一護の首筋から一気に沸き上がった感情が体全体を駆け巡る。うわっ、何だこれ…。未知の感覚が未発達の心を震わせた。
ァ、小さい声が唇から零れてブラウン管中の男優が低い声で「神は私を見放した」と呟いた。彼の呟きのタイミングを見計らって浦原は一護の耳たぶを甘く噛み、敏感な脇腹を撫でながら手を下腹部へ落としていく。履いているスウェットのゴムを緩めて忍び込ませた手に子供の体はよりいっそう震えた。
際どい部分、太ももの内側を指先で撫でられる。ぞわぞわした感触が爪先まで痺れさせては唇をも震わせる。意地の悪い唇が耳朶へとキスをして甘く噛んだ時にカチンと一護のスイッチが入った。

「セクハラ親父!やきもち妬いてんな!」

悪戯に弄る手を止めて後ろを振り返って大きく叫ぶ一護の瞳は悔し涙によって潤っている、なんとも綺麗な琥珀色がとろとろに蕩けている所を見て浦原の理性を大きく揺さぶった。
ニンマリと笑んで見せれば怯えた様に肩を竦ませるも大きな眼は頑として睨みを効かせているからたまったもんじゃない。

「その目、本当に大好き」

存外、低く唸ったら子供の頬は真っ赤に染まる。


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