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今年は数十年振りのホワイトクリスマスになる事でしょう。
男性ファンを多く持つニュースキャスターは化粧っ気のないベビーフェイスで柔かに笑い言った。
ホワイトクリスマス。ロマンチックな響きに、きっと国内中のカップルが浮き足立ったことだろう。
凍てつく冷たさの風が足元から体温を奪っていく感覚をうっすら感じながら浦原は失敗したと内で思う。意識が混濁しては視界を染めた。真っ赤に染まるんだと思った遠退く感覚の中で視界にしたのは皮肉にも真っ白な初雪。
どうりで今夜は冷えると思った…ああそうか、ホワイトクリスマスでしたっけ?はは…腹、いてえなあ…ああ寒い寒い…
最早麻痺してしまった足先とは対象的に熱い脇腹は浦原に生の証でもある痛みを植え付けては真っ赤に燃えあがる。ドクドクどくり。まるでそこに心臓があるみたいに脈が速まる。
あー…失敗した。
黒のコートをドス黒く染めて初雪に色を付ける。恋次の叫び声を右から左に流して浦原はゆっくり地に伏せ、薄れ行く意識の中にマリア像を浮かべた。
綺麗な背中。形の良い彼の肩甲骨が好きだ。骨のラインを避ける様に彫られたブラックグレイのマリア。繊細なデザインを施されたマリアが伏し目がちに微笑む。
全てを、世界の全てを許そう。
悪も正義も何もかもを許さんとする彼女の笑みが記憶の中、つい先日まで目前にした一護の笑みに変わった。
今年はホワイトクリスマスなんだと。すげえな、ロマンチック。寒いからマフラーしろよ?あんた年がら年中冷てえんだから。
笑いながら浦原の首にマフラーを巻く。一護のお気に入りメーカーロゴの記されたグレイのマフラーは浦原の格好には似合わないのに、彼の香りがするってだけで接待以外では常にstussyのマフラーを巻いていた。
ふわりと香る一護の匂い。
メンソールシガレットの香りと焚いてるお香の香りが混ざってなんだか甘い。
ああ…一護さんの香りだあ…
頬に張り付いた雪の冷たさと吐いた二酸化炭素がやはり浦原の視界を真っ白く染める。
瞼を閉じたら一瞬で闇が広がった。どこかで子供の泣き声が聞こえる。
泣かないで…
完全に意識が奪われる前に微笑むマリアへ祈りを捧げた。悪行三昧の人生でも守るべき存在が出来たんですマグダラのマリア。
独りを怖がる人だから…。
伸ばそうとした腕は降り注ぐ雪に動きを邪魔されては浦原の願いを凍らせる。


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あきゅろす。
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