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肩甲骨の上、項髪の毛の生え際ギリギリのライン下、左腕、左胸と右胸、腰、右足首、そして左の小指。一護のタトゥー場所は既に把握済みで浦原が一番綺麗だと思うタトゥーは肩甲骨上の十字架のマリアだ。
煙草ケースくらいの大きさで丁度良く窪みにはまっており、十字架はターコイズ色のラインだけで中にラピスラズリの色でマリア様が描かれている。両手の平を見せる様に優雅に立つ彼女の表情は、世界の善悪全てを受け入れているみたいでとても穏やかだ。
前まではエスカプラーリオをしていたが、紐が切れたのをきっかけにいつでも後ろを守ってくれる様にと彫ったらしい。

一護との出会いはとある草臥れた教会の墓地。6月の雨、霧雨が降り注ぐ中、黒いスーツを着込んだ一護は服を濡らす雨にも頓着せず百合の花束を片手に煙草を咥えて墓標を無感情に眺めていた。降りしきる雨粒にて火は消されているのに咥えたままだったのが印象的で、曇天の中、濡れた白と琥珀色のきつい色彩に眩暈を覚えた浦原は気づけばその上に傘を差し伸べていた。それが始まり。
ヒスパニック系アメリカ人と共に過ごしていた一護には戸籍が存在しない。
12年前に他界した斬月と言う男に、名前と最初のタトゥーを貰ったのだと聞いた。
ファーストタトゥーは右足首を縛った様な鎖の絵柄。浦原が一護の身体に彫られたタトゥーの中で唯一嫌いなタトゥー。まるで彼を縛っているみたいだからだ。それともう一つ、斬月と言う会ったことも見た事も無い男の執着が形となっている様な感覚を味わうから。前にそれとなく言ってみたら一護は苦笑した。
きっと、俺が自分で自分の命を絶たない様にだよ。
珍しく苦笑した一護の表情を見たくなかったからそれ以降、足首のタトゥーの話しには触れていない。

6月の雨が降ると一護はスタジオを閉める。もう、無くなった墓地に通う事は無くなったが、雨が降ると一護は必ずアストリアの歌を唄う。その時ばかりはコンも大人しく、けれど決して一護の側から離れないように四六時中足元に居座っている。
静かに流れる声だけのメロディ。Por ver si me consolaba…と続く寂しげな歌声が雨音と重なる。
私の涙を見て、松の木も泣いた。緑の葉っぱの松の木も、私の涙を見て、泣いた。とても寂しい歌詞だと、教わった時に思った。彼は13歳の頃からずっとこうして過ごし、雨の日にはこの歌を唄ったのだろう。考えると胸が痛んだ。

肩、と言うか左胸に軽く頭を預けるよう凭れかかった一護の髪からは仄かにシャンプーの香りがする。煙草とコーヒー、そしてバニラの様に甘いシャンプーの混じった香りが一護の香り。浦原はBURBERRYのロンドンを愛用しているが一護は香水の類を使用しない。それがとても、良い。
くん、と嗅いで久しぶりに一護の香りと体温を感じる。
指折り数えて約2週間と少し。ひらいた期間を物ともせずにこうして普通に接してくる一護を見ているとまた、胸がきゅうっと締め付けられた。
浦原は眩い橙に唇を寄せてキスを贈る。

「くすぐってえ」

クスクス。笑った一護にもっともっとキスを贈りたいと思った。
一護に習って浦原も片足だけソファに上げ、一護の背中を抱く様に腰掛ける。スーツが皺になろうが今日は直帰予定だったので気にも留めない。事務所には夜くらいに顔を出せば良いだろう。

「スタジオ、閉めるの?」

再度、髪の毛にキスしながら聞く。

「いんや。夕方に一回だけ施術ある」
「何時?」

6時半と言った一護の声に合わせてコンがワン!と鳴いたのを見て浦原は笑いながらコンの頭に手を伸ばして撫でた。眉間を頭上に向かって押し伸ばせば、コンは酷く間抜けな顔になる。それを見て二人で笑った。

「じゃあ夕飯は一緒できるかな。何時頃に終わりそう?」
「うーん…大体1時間とか」
「お客は、男?」
「妬く?」

悪戯っ子っぽく笑った琥珀色が憎たらしいけど可愛らしい。
妬かないと言えば嘘になるが、一々妬いていたら霧が無い事を互いに知っている。
一護は彫り師で、浦原はならず者。
付き合いでキャバクラだったり風俗だったり、クラブ通いをする浦原に一護は何も言わない。時々、女物の香水を身に纏って訪れても素っ気無い態度は最初だけだ。ヤキモチは嬉しいけど、もっと我侭言ってくれても良いと思う。けど口にして言わない。一護が我侭を言った所で仕事だからと片付ける羽目になるのは目に見えてるからだ。

「妬きません」
「なんだ。楽しくねー」

唇を尖らせながらコンの頬を両手で挟んだ。

「妬いて欲しくて仕事取ってる訳じゃない癖に」

チラリと見えた左手小指のノーティカルスターが光ったように見えた。少しだけホっとする黒のラインが彼に良く似合っている。
言いながら一護の左手に自分の左手を重ね、指と指を合わせて握った。きゅっと握ればぎゅうっと握り返される。
付き合って半年の記念に彫られた小さな五芒星はちょっとした駆け引きと束縛を込めて描かれた物。浦原の背中に彫られた大仰しい牡丹の花と揚羽蝶とはまた違った意味を持つ刺青。

「なんか…改めて見ると、お前に星って似合わねーな」
「……自分で彫った癖に…」

拗ねたら声を上げて笑われる始末だ。そう言えばこの前も後輩である恋次が同じ事を言ってたような気がする。彼は深く追求しなかったがきっと一護と同じ様に「似合っていない」とでも思ったのだろう。表情が豊かな分、傍目からでも分りやすい赤髪の彼を思い浮かべた。

「そんなに似合わない?」
「似合ってない」
「…はっきり言わなくても」

今度はニカリと満面な笑みを浮かべた琥珀色が肩越しに振り返って浦原を正面から見つめた。

「でも、良く似合ってる」

お前には、俺が。似合っている。
言葉裏にそう含めて、一護は再度笑った。今度はちょっとだけ照れ臭そうに。頬を染めながらも勝気に笑んだ。

「どっちなの」

思いを読み取ったが敢えて苦笑交じりにそう答えた。
見詰め合った瞳と瞳。その次には優しい口付けが落ちるのを二人は知っている。キスの合間にワン!と鳴くコンを黙らせる様に、一護はその口を左手で覆った。













不釣合いな五芒星、そしてキスは静かに。それがステイタス


◆壱七萬打ムお礼小説◆
やっとこさUPです(´∀`●)もう…書き直しては最初っからやり直し。それの繰り返しでUPがとても遅くなってしまいました…申し訳ない…orz
hyenaが壱七萬打ム!サイトを運営して早数年!(恥ずかしながら何年とか覚えていない…←)きっと3、4年くらいは運営してますか、ね?←
浦一にはまったのが学生の時でしたので…思い続けて…あれ?恐ろしい…軽く9年は経ってんじゃねーか!お、恐ろしい!!
いやあ…もう本当、感謝です!!ここまでこれましたのも全て皆様のお陰です^^
お礼小説はjoinでちょろ〜っとUPした893浦氏と彫り師いったんの続編と言う感じです^^最初の内は白君視点から見た浦氏の印象と似合わないノーティカルスターに嫉妬する話しで、次が浦氏から見た一護とノーティカルスターの話し。私もノーティカルスターはかわいいと思っていますが…自分には、彫らないな。うん。似合わないって分っているので←
一護さんは似合うかもしれないけど浦氏には似合わないと思って敢えての小指にノーティカルスターが題材でした^^
そしてコン君(笑)昔飼っていたゴールデンをモデルに描いたら本当、まんま飼っていたゴールデンになっちゃいましたww名前はLOLOって言ったんだよwwお馬鹿さんなゴールデンだったのwwそこが可愛かったのww
地元で通ったスタジオにはメスのドーベルマンが居て凄くお洒落だなあ、と思っての出演でした^^
これからも妄想爆裂サイトで突き進みたいと思っておりますのでどうぞ、hyenaとmeruを宜しくお願い致します^^


THANK YOU壱七萬打ム!!
hyena:)meru




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