鬼と天使
それは鬼と呼ばれていた存在。
「一護〜。準備できたあ?」
「……出来た」
「もう!ふてくされないのっ!」
唇をへの字に尖らせ、白の羽織をバサリとはおった一護を見て十三番隊在籍第四席の小島水色はふふ。と笑った。
「んだよ?」
水色の笑いに眉間の皺を数本増やし、睨みつける。
普通の死神なら、それだけで少し尻ごみをするのにも関わらず、水色はそのお姉様死神御用達の天使スマイルで。
「なあんでも?」
等と、首を横に傾けながら再び。ふふ、と笑った。
元十三番隊隊長の浮竹十四朗に変わり、齢15と言う幼さで隊を任された目の前の少年。眉間に数本の皺、目を引く眩いぐらいの髪の色。
最初は誰も彼もあまり少年の事を良くは思っていなかった。
けれど、浮竹元隊長の前だけでは綺麗に微笑むものだから。
ああ、あの笑顔が見てみたい。
と、思ったんだっけ?
昔を思い出し、水色はまた小さく笑った。それを見ていた一護は盛大に溜め息を吐いて痛む頭を右手で押さえる。
「そんなに副隊長なんて必要かよ?」
「うーんどうだろうね?総隊長が言ってたんでしょ?」
「…ちっ」
「はいはい。ホラ!行くよ!」
渋る一護の腕を掴み、水色は一番隊隊舎へと急いだ。
そこにかつて鬼と呼ばれた存在が待ち構えているだろう。
浦原喜助。
元十二番隊隊長で今現在では技術開発局・局長を努めている実力のある男。
何故その様な男が態々部隊に等戻って来たのだろうか?しかも副隊長と言う立場に。
いくら総隊長殿の提案だからと言っても。もし、仮に彼が一護狙いならまたこちらから辞めさせれば良い。
けれど、今度の敵は鬼。
「…勝てるかなぁ」
「あ?なんか言ったか?」
心の中で呟いた筈の言葉が知らず知らずの間、口からポロリ。と出ていた様だ。
「んーん。なあんでも?」
「ふーん。」
天使スマイルを見せた後、一護はクシャリと水色の頭を撫でた。
彼なりに、水色を励ましているつもりだったのだろう。
不安そうな顔をしていたのだろうか?
それでもそんな彼の兄貴的な気遣いに嬉しくなって、この存在を守っていけるのは自分達だけだ。と思った。
(鬼になんか渡さない)
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