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お湯で濡らしたタオルを絞り水気を取った物を用意して、緑色のロゴが入ったコンビニ袋をカサカサと音を立てて中身を取る。
女性が好みそうな色彩のパッケージを開き、中から一枚だけ手に取ってゆっくりと丁寧に拭った。

「ん……な、ん……なに?」
「ああ…起きちゃいました?あ、舐めないでね。苦いよ」

浦原が言う前に湿った唇を舐めてしまった一護は眠っている脳内が一気に目覚めてしまうような痺れを舌先に感じた。
にぎゃい……。べーっと舌を出す様にして眉間に皺を寄せて浦原を睨む。
人が折角気持ち良く寝ていたのになんの真似だ!と罵声を浴びせようとしたが、小さなテーブルランプによって照らされた浦原の手元に(肌のキメや毛穴に入り込んだメイクもしっかり落とします!)と記載されたピンクの入れ物を見定めてきょとんとした。

「そのままだと明日荒れるでしょう」

一護の方を見ていないのに浦原は気配で察知できるのか、淡々と言ってのける。
何も言えなくて、言わんとしていた言葉を飲み込んだ。浦原には敵わない。そう思ってフと息を吐く。
トリプルサイズの大きいフロアベッドが置かれても十分に広いと感じる事が出来る寝室は暖房が心地良いくらい効いていて、二つある内の一つの大きい窓ガラスにはカーテンが引かれ射し込む月明かりが青白く闇を照らし、窓縁の枠を象っている。交差した影がまるで十字架の様で、こんな満月の綺麗な夜中には何かが出そうだな。と、やけにロマンチストな事を思った。

「こっち向いて。濡れタオルで拭うから」

上半身裸で下は灰色のスウェット。ベッドの脇に腰掛けて片足だけを曲げて垂らした膝上に乗せる。その大雑把な仕草も浦原がやるとサマになっているので同じ男として少しだけ嫉妬してしまう。

「いーよそんなん!女じゃねーんだし」
「女じゃなくても。君、冬になると唇切れるでしょう?弱いんだから。…良いの?明日痛い思いするよ?」

ぐっと息を飲み込んだ。
浦原の言う通りだ。肌が極端に弱い一護は夏場でも徹底して日光を避けなければたちどころに肌が真っ赤に焼けて毎度毎度痛い思いをする。冬場だって同じでずっとリップクリームを塗っていないと唇は荒れに荒れて、終いには口を開いただけでビリッとなんとも形容し難い音と共に裂け、血が滲む。
メイク落としにどんな成分が含まれているのかは知らない。なんせ使用した事が無いからその効力も分らない。
だけどどんなに水で濡らそうが長時間立とうが落ちる様子など微塵も見せなかった口紅の赤を難なく落としたのだ。それも一回で。このまま、放置していたらきっと浦原の言う通り、荒れに荒れて痛い思いをするだろう。そう思案するだけで一護は肩の力を落として浦原からタオルを受け取った。

「ああ、駄目駄目。そんな乱暴に拭ったら元も子も無いでしょう。貸して」

はぁ、と大袈裟に溜息をつかれ、そんな子供を叱るみたいに言われたらちょっとむかっ腹が立つ。
ム、と子供宜しく唇を尖らせながら一護はぶっきらぼうにタオルを投げつけた。それを片手でひょいと受け取る。ああ、ど畜生。どんな些細な事もサマになりやがる。嫌味な男だ。更に眉間へと皺を寄せてギっと音が鳴る程に目の前の男を睨み付けた。

「はいはい睨まない。顔、上げて」

一護の睨みも浦原には効かない。
言うなり人差し指を顎に入れられ、親指で顎を取られて顔を上げられる。まるでキスをする時の様な仕草に一瞬、ドキリと胸が高鳴ったが、浦原の表情はそんな熱を孕んではおらず、まるで仕事をこなす様にテキパキと事を成す。
一度濡れタオルで蒸す様に唇を拭い、その次に化粧水を浸したコットンを唇に触れさせる様に乗せ、最後の仕上げと言う様に夜専用のリップクリームを流れる手つきで塗る。流石と言うかなんと言うか……。
一連の動作が一通り終わった後、浦原は何事もなかった様にゴミを丸めてベッド近くのゴミ箱へ投げ入れる。
ナイスシュート。軌道を外す事なく宙を舞ったゴミはすとんと綺麗に中へと入った。
なんでこんな暗がりの中でもまるで見えている様に動けるのだろう。視力が良すぎる以前の問題だ、と一護がぼんやりゴミ箱を見ながら思案している隙を狙って、浦原がチュ、と音を成して口付ける。

「…ほんっと隙あらばだよな!」
「だってしたかったから」

もう一度近付いて口付けられる。少しだけ湿った唇にフニフニと重ねつけられ、それから下唇を食んだら開いて、の合図。
一護は睨んでいた目を静かに閉じ、侵入してきた舌先を甘受した。
首筋に腕を絡め、そうっと押し倒されながらも尚、唇は互いに離す素振りは見せず、くちゅくちゅと吐息と唾液を混ぜ合わせて呼吸を奪い合う。
浦原の手の平が胸の突起に触れ、ピクリと一護の肩が動いたその時だ。

「きーすーけーのあほんだらぁあああっ!」

しんと静まり返っていた外界が突如として騒がしくなった。

「な!なんだ!?」

良く響く声が夜の空気に反響してここまで響く。
一護は驚き浦原の肩を押しのけ、窓の外から聞こえてくる目に見えない音の発信源を見る様に目を真ん丸くひん剥きシーツを奪い去って窓の所まで駆け寄っていく。

「喜助の変態!鬼!悪魔!えーっと……それからスケベえええっ!」

少しだけ窓を開いて階下を見れば、小さいながらにも月明かりと電灯に照らし出された色は白銀。見慣れたその色とバイクの黒がマッチして一護は「あ。」と小さく声を上げた。
両手で口の周りを囲み、それをスピーカー代わりにして尚もスケベ!スケベ!鬼!悪魔!と罵声を連ねているギンの大声に、近所の犬と猫が一斉に反応してその雄叫びを徐々に荒げていった。
夜の静けさだけが支配する真夜中の世界に鳴り響いた喧騒が開け放たれた窓から侵入して来、仰向けでベッドに倒れこんだ浦原は片方の腕で目を塞ぎながら喉元から這い上がってくる殺気にワナワナと震えた。

「うーわー……ギンのやつ……なあ、スケベって言われてるぜ?」
「あっはっは!アイツ、細切れにしてやりたい!」

やられた。すっかり手の平を返されたみたいにやられた。
浦原は乾いた笑いを出しながらも、目だけは本当に笑っていなかったので一護は心中であーあ。と独りごちる。それから小さく「ギン、ご愁傷様」等と階下で叫び続けている狐目の男に向かって手を合わせた。












◆壱弐萬打ムお礼小説◆
無事迎える事が出来た壱弐萬打!!最高に嬉しいです^^^///最早この感動をどう言葉に表そうか…考えて考えて考え抜いて出たのは「アイラブユー!」と言う月並みな台詞でした。もう自分のボキャブラリーの貧困さに驚愕しておりますmeruです。ウンコです。←
さて、どんな話しをお礼として書こうか…悩んで、椿屋四重奏の曲をモチーフに書きました^^^と言うかPVがね…ただの神だったんでね……なんだ神か……そうか……って何度も見て悶えた結果がこの話しです←
キスで移る口紅の赤ってなんだかとっても卑猥じゃね?交わっているより卑猥じゃね?と思って一護ちゃんに紅移しをして頂きました^^それを拭う旦那の図。一応ギャグとして市丸の兄貴にでしゃばって貰ったんですが……案の定死亡フラグ(笑)ギンと阿近と浦原と言う捏造的悪友関係が凄く好きですので取り入れました^^^/
ここまで書いててなんですが…後書きって凄く苦手です……←
無事に壱弐萬打を迎える事が出来て嬉しい&感激です^^来年からはオフでの活動も計画していますが、hyenaも不変無く更新していきたいと思いますのでこれからも宜しくお願い致します^^^/
ここまで読んで頂きまして有難う御座いました^^^


hyena:)meru




あきゅろす。
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