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Voice of you in dream


彼のハニーブラウンが笑う。目が瞑れそうな程の強い色彩の頭髪が、白い枕の上にふわりと乗っかる。ふかふかで太陽の香りを含んだ枕が好きなんだと彼は言った。
互いに寝そべって、何をするでもなく。時折、悪戯に指先を絡めては笑う。彼は良く笑う。
手の平を合わせて、小指を絡めて、目が合って、彼のハニーブラウンと自分の金色が混ざり合って。それからはどちらとも無く導かれる様に唇を寄せ触れ合わせる。ちゅ、と小さな音が鳴る。唇と唇が触れ合う音がお互いの間、隙間を埋める様に鳴る。
それが恥ずかしいのか、彼は少しだけ照れた様に笑った。ああ、そう言う表情もするのか。胸が熱くなった。
少しだけ冷たいかもしれないその唇にもう一度触れたかった。ちゅ、啄ばむ様に口付ける。恥ずかしさに彼は目を瞑る。長い睫が目下に影を作る。意識してみると彼は色素が薄い。赤みがかった頬はとても初心だった。
ちゅ、ちゅ、ちゅ。
何度も何度も、その唇に唇を這わせ、出来た隙間を埋める様に今度は身体を寄せてくっつける。抱き合う。彼の腕が背中へと這わされる。きゅ、とシャツを握った布擦れの音も、耳に心地好い。
もっと、深くまで味わっても良いだろうか?思案と行動が同時になる。舌先でその下唇を舐め、薄く開いた箇所から侵入させた。ぬろりとした感触の後に彼は小さく息を吐いた。あ、と鳴った音が心を騒がしくさせる。
き、すけ……。小さく名前を呼んだ彼の声で覚醒した。




「きーすーけーっ!!早く起きるです!もうランチのタイムで御座います!一緒に食べる約束したっス!早く起きるっス〜!」
「ぐはっ」

最高な夢を見られた後は必ず最低な事態が待ち構えている物だ。
暖房の効いたぬくぬくの部屋の中、新しいダブルベッドと共に新調した黒のシーツだけが冬の温度を含んでいて冷たくて気持ち良い。
仰向けになった浦原の身体にダイブする様に乗っかった人物の重みが一気に腹部へと打撃を与え、まるで天国から地獄へと突き落とされた様な感覚が寝起きの浦原を襲った。否、訂正するなら強制的に目覚めさせられたと言った方が正しいかもしれない。

「…ね、ネルさん…っもう少し優しく起こして欲しい…」
「なーに言ってんスか!ネル何度も声かけました!アバウトフォーティーン!呼びました!けどきすけ起きません!だからダイブします!」

緑色の艶やかで長いウェーブのかかった髪の毛が悪戯に浦原の頬をくすぐる。
人の腹の上に乗っかっておいて、変な日本語で捲くし立てる彼女は世界中の誰もが知ってて当然な大物なのだけれど、浦原にとって見ればまだまだ幼い妹みたいな存在だ。もしかしたらお姫様と言うのに相応しいかもしれない。

「分った分った。起きますよ!…ったく、…ホラ、退いて」
「…?きすけ、なんか変っス」
「変じゃないです。変なのはあなたの日本語です。誰に習ったんですかもう…」
「シンジっす!」

げんなりした。
ネルのマネージャーでもある平子は元々関西出身であるが、とても奇抜な男である。
金髪のおかっぱ頭に、髪の毛と同様の色彩を持つ瞳はいくら彼が関西弁を流暢に使おうと、彼自身の国籍が日本で無い事は一目で分る。英語とロシア語、イタリア、フランス、果ては中国語まで完璧にマスターしている男だが、常に関西弁を所々に混ぜ合わせて会話する。
浦原と腐れ縁であるが、長年付き合おうが奇抜さだけは拭い取れそうにも無い。まるで奇抜が服着て歩いている様なものだ。

「…今度ちゃんとした日本語教えてあげる。」
「本当っスか?グレイト!それじゃあ日本のカトゥーン欲しいっス!」
「取り寄せてあげますから、ホラ。退いて退いて」

乱れ髪を手櫛で梳きながら浦原は上体を起こし、ベッド脇に置いてあるテーブルから煙草を取って火をつけた。

「………匂い、移りますよ?」

煙草に火を点け軽く吹かしても尚、ネルは浦原の上から退かない。真正面にある薄緑色の綺麗なグリーンアイがじとーっと浦原を見つめる。

「きすけっス」
「…?はあ…浦原喜助はアタシですけど?」

何が言いたいのだろう?怪訝そうに眉を上げ、ネルを見ているといきなりニンマリとネルが笑った。

「きすけ、きすけキスケ!I have wanted to meet you!」
「わーっ!わーっ!あっぶない!危ない!」

キラキラとさせた瞳と笑顔で抱きついてきたので浦原は反射的に煙草を持つ右手を真横に伸ばした。
各地で引っ張りだこのモデルに火傷なんて到底つけられない。怪我もさせられない。人の気も知らないで!バクバクと鳴る心臓を撫でつつもネルは人の話なんて聞いちゃいない風に浦原の首筋へと回した両腕に力を込める。

「しかも苦しい!HEY!!Let me go!落ち着いてっ」
「落ち着いてなんていられないっスよ!きすけがやっと戻ってきてここに居るっス!ネルをどんだけ放置すれば気が済むんすか!きすけのサディスティック野郎!」

ぎゃいぎゃいと人の腹の上で叫んで、その華奢過ぎる腕はしっかりと浦原の首筋へ回って力を緩める素振りは見せない。
浦原が離せと言っても頬をぷくーっと膨らませてイヤイヤと胸に顔を埋めるだけだ。まるで大きな子供。浦原は息を吐き出した後、煙草を持つ手を変えてサイドテーブルに置かれていた灰皿に押し付ける。

「ネール。」
「……」

未だ、浦原を捕まえて離さんとする腕に触れて優しく問いかける。案の定、シカトだ。
お姫様は大層ご機嫌斜め。

「ごめんなさいね。こんなに時間かかって」
「………本当よ。この私をこんなに待たせた罪は重いわよ……」

手入れが行き届いたシルクの様な肌触りの髪の毛を浦原の指先が撫でて梳く。その細長い指先は神経質そうなのに、とても優しい事を知っている。
ネルはそろりと顔を上げ、猫みたいに笑んだ金色の瞳を見た。
少々スラングが入ってお行儀が悪い言い方になってしまったがそう言った瞬間、目の前の金色がくしゃりと微笑んだのでランチ奢ってくれるならチャラにしてやっても良いか。と唇を尖らせながら思った。

「どこ行きたいの?」
「ワンオアエイト!!」

元気良く挙手したネルを見て更に笑う。

「オーケイ。それじゃあ準備するからリビングで待っててくださいね」
「ラジャーっす!」

今度はこめかみ辺りに手を持っていき敬礼しながら綺麗なウォーキングで寝室を後にする。シャンと背筋が伸びた美しい後ろ姿を眺めたまま、浦原は再び煙草を口に咥え、火を点けてからカーテンを開いた。
どんよりと灰色の薄い雲が広がり、その背後にあるだろう青を隠している。
あの時、空港で見た青とは違うと分っていて、それがなぜだかアンニュイな気持ちにさせる。なんだろう、とても不思議だ。きっとあの夢を見たせいかもしれない。
きすけ。
歌を紡ぐあの口で、あの声で。幸せそうに微笑みながら名前を呼んだあの子。
夢の中だと分っていても、やはりこの心臓はドクンドクンと高鳴って煩い。

「あー………ちくしょう…」

会いたいなぁ。だなんて。

「……自分から離れた癖に…」

本当。なんて自己中心的な気持ちなんだろうか。
浦原はテーブル上にあるパソコンのスイッチを入れて起動させる。
ファンの回る音と内臓システムが擦れ合っている様な音が部屋の中を埋め尽くした。煙草の火を消して、寝室内にある洗面台へと向い、顔を洗って歯を磨く。
髭は……面倒なので剃らないでおこう。
歯ブラシを口に咥えながらクローゼットを開き、適当な服を選んでベッド上に放り投げた。
起動したパソコンの液晶画面上に、You've Got Mailのフォントが表示されており、メールマーク上にカーソルを合わせて新着メールのフォルダを開いて見る。

「………」

タイミングが良いと言うかなんと言うか…。浦原は思いながらざっと一通り目を通してメール内に記載されていた電話番号とメールアドレスをコピーしてメモ帳に貼り付けた。

「元気かなぁ」

日本で世話になった小さなバーテンダーを思い浮かべる。泣きそうに垂れた目元と眉が特徴的な可愛い女の子。
メールに添付された画像は彼女が最近はまっているトイカメラで撮影したと思われる写真だった。
真っ青な空の上を白い高積雲が浮かび、そのキャンパスに色をつけるようにして真っ赤な風船が飛んでいる。とても柔らかで暖かい画だ。
浦原は口角を上げてその写真を保存した。
そして、コピペした電話番号だけiphoneのアドレス帳へと記入して保存する。

「……今更、かな……?」

返答が返ってくるわけでも無いけれどそう呟いた。
本当、今更だよな。
心の中であの子が呟く。大層不機嫌な声色で呟かれたら、やっぱり胸のどこかが痛み始めて浦原はそうっと左心房へと手を這わして着込んだシャツを握り締めた。


















あの子の声が左心房部位から聴こえた様な気がした





◆浦原さんのターン(笑)
もうずっとネルを登場させたくてウズウズしていました!やっと出れたね!おめでとう!!何かとネルを絡ませたい私です。だって可愛いじゃないの!←
特に浦原氏とネルのタッグが好き過ぎて…原作では何の接点も無いんですがね(笑)
LAチームにはスラングが混じった英語を使わせたいと思っているんですが…私自身スラングが得意ではないのでグーグル先生に頼っています…;;スラング…最早言葉じゃねー(笑)2ch用語?だなんて頭を抱えながらも調べていました。結果、書けなかったって言う悲しいオチ;;DVDでも借りて字幕英語で見るか……悩んでいます;;
夢でイチャコラする二人。正夢になると良いですね!とブラウン管越しに言ってます(オイ管理人)




あきゅろす。
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