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なんて声だろう。闇の中で浦原は思う。

「ひぅ、…うっ、……ひんっ」

普段、乱暴な言葉使いをする彼が今は浦原に組み敷かれ、甘い声で啼いている。
熱の篭った素肌を指先が滑る度に細々と出される声は浦原の鼓膜を卑猥に奮わせた。
なんて、蕩けそうな瞳で人の事を見る子供だろう。
くちゅくちゅと水音が鳴る暗闇の中、浦原の大きな手の平にやんわりと包まれた性器が欲を主張するが如く熱いのが自分でも分って、はしたない気持ちにさせる。
あの、浦原の綺麗な手が今は自分に触れている。あの手が刀を持ち、振るい、扇子を煽ぎ、酌を持ち、煙管を持つのを知っている。見ている。見ていた。ずっとずっと、いつしか焦がれている事も忘れ眺めていたあの手が今……

「あっ!いあ……っ、あ、あんっ…ら、浦、ら…浦は…っさ、」

脳内ビジョンで犯される。
常に目で追っていた浦原の姿に感じて一護は体を大きく震わせ、浦原の手の平に精を放った。

「ああ、沢山出た」

囁かれる音色も、今までに聞いた事が無い色を含んだ低い声。下肢に響くその音でもって一護の熱を煽る。
ハッ、ハッ。まるで犬の様な息の切らし方だ。
初めて他人に触れられた己の欲求が爆ぜそうになるくらいに気持ち好く、そして苦しい。今時の恋人達はこんなに苦しい行為を行って死にそうにならないのか。だって一護は今、死にそうなくらいに動悸が早まって、本当に窒息死してしまうのでは無いかと危惧しているくらい。
目の前の男は冷めた金色の中にメラリと燃え上がる熱を一護に見せつける。
それがまた、苦しい。苦しいくらいに……嬉しい、だなんて。

「んっ」
「また起った。……若いね黒崎さん。…もっと、触っても良い?」

甘えた声が耳に毒だ。
コクリ、コクコクと一護は頷く。もう、どうにでもなれ。なってしまえ。自暴自棄にそう思う。
伸ばした手を浦原が取る。流れる様に取った手を口に持って来、手の甲へと優しい口付けを贈る。
こんなに、優しく触れてくるなんて思ってもいなかった。一護はクラクラとする思考の中でそう思った。
こんなに、優しく触れる事が出来るなんて思ってもいなかった。浦原は熱で浮かされた脳内でそう思う。

「君は、……凄いね…」

首筋にまきつく両腕が細かに震えていて、一護の瞳を覆う様にして伸びた睫がフルフルと震えているのが分る。涙の雫をつけて飾った睫のなんと綺麗な事。
蕩けた蜂蜜を連想する様な瞳の色に毒される。

「え……、っぁ、!」

再び起ち上がった性器に触れる。
そこからくちゅりとした厭らしい水音が部屋中に響き、一護は耳を塞ぎたいと思ったが両腕は浦原の首筋に縋りついたままだ。

「足、閉じないで」

恥ずかしさからか。間を割って入る様に覆い被さった浦原の腰に絡める様にして一護は足を閉じようと必死だ。
初めて他人から施される強すぎる快楽の波に思考が飲まれまいと足掻く。理性はあるが雀の涙程だ。
一度精を放ち敏感になった身体は、浦原がどこの部分に触れても熱が篭った様に熱くなり電流が走りぬける。電流の様な快楽が一護の身体をうねうねと這いずり回る感じだ。
なんて、触れ方をするのだろうか。身体全部の神経がむき出しになった如く、浦原に触れられる。魂にまでも触れられているみたいだ。
きちゅり、浦原が触れる度に鳴る背徳な音が鼓膜を揺さぶる。その度に一護はふるりふるりと子供の様に首を振るった。

「……嫌、ですか?」

聞いた事も無い様な甘く優しい声で問われる。
瞼を開き、目の前の金色が濡れているのを一護は見た。

「や…、じゃない………嫌、じゃない……っ」

一体いつから……こんな冗談じゃない気持ちを持つ様になったのだろうか。
師と呼ぶ位置に居た男は一護に沢山の事を教えてくれた。
身勝手な正義に対する報復が如何に馬鹿馬鹿しい結末を持ち得る事となるのか、だとか。
弱さの価値観を間違った解釈で持って殻に引きこもる事のなんと悲しき事とか、刀を振るう手前の覚悟の表し方だとか諸々。
一護を子供扱いも大人扱いもする訳でも無く浦原は一人の人間として一護を見、剣の振るい方を教えてくれた。

「…うら、原…さんっ、んんっ」

蕩けるみたいだ。
だらだらと先走りで濡れた性器をやんわりと強弱つけて扱かれる。その度に甘い声が意図せず一護の口から吐き出される。
熱に浮かされる子供の声がこんなに甘いだなんて…浦原は眩暈の様な感覚を覚える。

「れ、…な、…でっ!」
「え?」

綺麗に浮き出た鎖骨に口付けをして、首筋に伝う汗を舐め取る。しょっぱい。子供は甘くてしょっぱい。癖になってしまいそう。浦原がそう思案していると一護が悲痛な声色で問い掛けてくる。
あ、今度は泣きそうな声……。様々な音色を持ち合わせる子だと思った。

「……わす、れ…ないで……っ、忘れないで……っ」

この夜を、この熱を、この声を、この……慕情を。忘れないで欲しい。酒に飲まれたまま、これを夢だった事にしないで欲しい。マボロシだと、思わないで。受止めて、もっと、もっと、その体に、その魂に、その目に、自分を焼き付けて捕らわれて欲しい。
一護の琥珀色が強い色彩を生み出して浦原を見つめた。

「………本当、君は凄い子だ……」
「あぅっ、あ、あっ!」

強めに扱いた後、一護は二度目の精を浦原の手の中へ放った。
きっとこれが子供の精一杯の告白なんだろう。言葉に出して言えない分、随分と大胆な行動を取ってくれたもんだ。考えて苦笑した。
忘れる?この夜を?この、アタシが?

「君に、酔いそうだ……」

忘れるわけが無いじゃないか。
焦がれて焦がれて、大人の言い訳でもって諦めようとした子が今この手の中に居る。腕の中で熱を与える。
アルコールが巡った身体中の熱の大半が君への慕情。劣情。浅はかな下心と火傷しそうになる危ない慕情が解き放たれる。

「………君に、触れたくて触れたくて、気が狂いそうだったんだ……」

小さく、夜の闇に紛れる様に小声で囁いた。
瞬間、大きく見開いた子供の瞳からポロリと透明な涙が零れ落ちる。子供が何か、口に出す前に浦原はやや乱暴に口付けをした。
大人の照れ隠しなキスは再び子供に熱を与える。


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