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その人は金色の瞳に金色の髪、冷えた瞳に愛刀の銀色を映し出して優雅に舞った。返り血を浴びる事もなく、声をも生み出させない速さで生命の糸を断ち切る事を得意としていた。それが、二番隊第三席に在籍していた浦原喜助だった。一護の、最初で最後の憧れの人。

あの金色の瞳が今、一護を捕らえ、離さない。
ゾワリと背筋が唸るのに、一護の心は不思議と満たされ鼓動を速めた。ああ、これは一種の病にも似ている。自分でそう思ったらもっともっと胸の鼓動がけたたましく内側から一護を攻撃する。苦しくって仕方無い。お願い、見放さないで欲しい。必死で思って、必死で願い、息を吸った。

「…、ぬし、さま……あの、俺…」
「見捨てないで欲しい。」

ビクリ、その一声に肩が揺れ動く。なんて冷たい声なんだろう?

「そう、瞳の中に書いてある。いつもそうやって懇願していたの?」

するりと神経質な指先が一護の涙を掬い、そのまま涙の跡を辿る様に頬を撫で、顎に触れ、それから首筋へと伝う。まるで猫を愛でる様に触れられた事に、再び一護の背筋はゾワリと震えた。先程の感覚とは違い、今は期待に震える背筋に自分でも浅ましいと思った程だ。

「慣れている、と君は言いましたよね?」

顎を捉えた指先。クイ、と上げられてその冷え切った金色と瞳を合わす。
もう片方の指が腰辺りで結ばれている紐を器用に解き、その隙間から肌へと指が這う。冷たい瞳と同様に、指先までも冷やっこい。

「あ…っ、」
「…へえ、まさかこっちもお手つき済みとはねえ…」

生地の中、這う手先は胸の上の小さな突起物に触れ、指先で摘み、そして指の腹で押される。反射的に浦原の肩に手をつき、膝立ちのまま震えた。
ポトリ、瞼を閉じた瞬間に涙が一粒浦原の指先を濡らし、それが合図とばかりに顎を掴んだ指先が離れ、もう片方の突起を布越しに触れる。直に与えられた刺激でも無いのに、一護は再びふるりと震えた。

「…っ、…」
「ほら、もう立ち上がってる………」

いやらしいなあ。酷く馬鹿にしたかの様に囁かれた。あの低い声がいつもよりずっと低く、直接脳内へと声を刻み込む様に響く。

「気持ち良い?」

くつりと微笑まれたらどうしようと思う程に鼓動が強まる。
きゅ、と摘まれた。
ねとり、と布越しから舌を這わせられる。

「ゃ、」
「嫌?じゃあなんで縋るの?嫌なら突き飛ばせば良い。突き飛ばして御覧なさいな」

自然と口から出た音に浦原は上目加減で一護を見上げた後、そう冷たく言い放った。自分でも大層酷な事を子供へと告げていると思うが止められない。こんな痴態を見せる子供がいけないのだ。
フルフルと首を横に振るう。その度に流れた涙が四方八方に飛び散る。キラキラと、まるでお星様みたいに。

「じゃあ何?嫌じゃないならなんなの?」

未だに布越しでの愛撫は続き、湿った舌の感触を感じる。
足りない。と思った。
直接、触れて欲しい。と思った。

「ちゃ、…んと……触って……ぬしさま……っ」

あなただけに触れて欲しい。金色に琥珀色が映り、肩に置かれた手は祈りを請う様に強く、その死覇装を握り締めた。




荒い息遣いだ。酸素が足りないと喉が唸っている。どこもかしもこ熱い。あの冷たい手の平が辿った箇所全てに火がついたみたいに火照っている。腰が揺れる。まるで愛を強請る遊廓の遊女達みたく。あどけない素足も、いっその事絡めて淫らに強請ってしまおうか?
酸素が行き着かない脳はまともな思考を放棄している。
胸も心も魂も、あなたでいっぱいいっぱい。
もう何も考える事が出来ない……もっといっぱい、触れて欲しい。

未だに一護は浦原の膝の上で過ぎるくらいの愛撫を一心に受けている。
膝を割り、衣の中へと侵入した冷たい手の平が内股を撫であげるが、期待に膨れ立ち上がった性器には触れてはくれない。また、焦らされる。

「く……っ、」

浦原はゆれる琥珀色を見て思った。
この子供は危険だ、と。
涙を堪える様に噛み締められた下唇が真っ赤に熟れ、上気した頬は赤で染まった。滑らかな肌だ。所々にある傷でさえも子供の痴態を煽ぐ。首筋にある掠り傷はきっと、稽古の時にでもついたのだろう。微かに赤みがかったその一筋の線にゾロリと舌先を這わした。

「ん、」

ああ、ここが弱いのか。震え上がった子供の腰を左手で支えながら浦原は必要に一護の首筋を舐める。そうっと鎖骨から舌先を這わし、徐々に上へと上がる。筋の通った美しいラインだ。

「ぁ、…ぬ、し様…っ」

耳の裏を舐め、その薄い耳たぶを甘く噛んだら子供から補足の声が上がる。
内股を辿っていた手を取られ、先程から期待に膨れあがっていた子供の性器まで導かれる。まるで遊女の様じゃないか。浦原は心中で舌打をして子供の思い通りにそこへと触れた。

「…はぁ、…ん、ぁ…っ」
「どこで習ってきたんですか?」

耳元で囁いた。
予想通りに子供が喘いだのに対して浦原の心中にドス黒い物体がブワリとその形を露にした。紛れも無く、これは嫉妬だと思う。独占欲とも、言う。
長年、忘れかけていたその感情に浦原自身が困惑していたが、それもこれも子供の見せる痴態がいけないのだと、自分自身に言い聞かせて生まれ来る感情を押し殺す。

「もう、こんなんだ…」

指先に湿った感触。それからぬろりと液体が指先に絡みつく。熱いな……。子供の肌は熱に犯されていて、冷え性な浦原の手先を暖め始めた。

「ああ、……っ、」

やっと触れてもらえた事に対して一護の意思よりも先に身体が喜んだ。
カクリと折れた足、体制を支えてもらいながら一護は浦原の肩に頭を乗っける。瞳から零れる涙の雫が男の肩口に落ち、弾けて、濡らした。なんて、黒が似合う男なんだろう?場違いな事を思う。そうでもしなきゃもっと下品な言葉を発してしまいそうで、一護は再び下唇を噛んで凌いだ。



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