□■katsuragi×Dream
めれんげどりーむ<5>
この子の中の『日常』と『非日常』
そっくりそのまま入れ替えてしまったら、この子はきっと幸せな人生を送ってきたはず。人を殺める事ではなく、愛することを知っていたならば。
しかし、
それでは私達は出会うことは愚か、すれ違うことすらなかったでしょう。
この子の『人間とはかけ離れた日常』の中に私との出会いがあったのならば・・・ミズキの人間としての幸せを望む事よりも、私がミズキと出会えたことが・・・とても幸せだと思ってしまう事は・・・不謹慎でしょうか?
ミズキ、私はあなたに出会えて本当に良かったと思っていますよ。
実際の年齢よりも子供っぽく見えるミズキ。
人を殺める力がこの身体のどこに隠されているのか疑いたくなるような細い腕。
抱き上げるとその軽さに切なくなってくる。
大人の身体へと成長する時期に十分な栄養と休養を取れなかった為だろう。
何も知らない、ミズキ。
ブラックホークへ来てから沢山の事を吸収していくミズキ。
コナツの様に成りたいと一生懸命に食事を取っていたことを思い出す。
目の前で倒れてしまったミズキを抱いて、自分の部屋へ向かう。そっとベッドへ横たえても眼を覚まさない。
心配ではあるけれども、これが『日常』の中に入り込んできた『非日常』へ対応しようとしたミズキの身体と心の疲れから来るものだと分かっているため焦りはしない。
このままゆっくり眠ったら、いつものミズキが眼を覚ますはず。
疲れは睡眠で癒される。
さらさらと手触りがいいミズキの髪の毛に触れる。
寝顔はいつにもまして子供のようで。
愛しくて、愛しくて。
生きることに、この新しい環境に慣れる事に必死なミズキ。
時々検討も付かない返事を投げてくれるミズキ。
私のベッドで眠るミズキの額に、口付けた。
「あ・・・・?」
それは全くの無意識で・・・・。
これは我ながら驚いてしまいましたよ?
ああ、素直なミズキの前では私も素直になってしまうようですね。
この感情は一体何なのでしょうね、ミズキ?
あなたを『愛して』いるのか、『愛しい』と思っているのか。
どちらにしろ・・・あなたに『愛』を与えたいと思っていることは確かなようですよ?
さて、どうしますか、ミズキ?
私の『愛』を受け入れてくれますか?
眠り続ける『愛しい子』へもう一度口付けを。
あなたが眼を覚ますまでここにいますよ。
安心してお休みなさい・・・『愛しい』ミズキ。
END
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