□■katsuragi×Dream
めれんげどりーむ<1>
俺の名前はミズキ。
今日からブラックホークの大佐、カツラギさんのベグライターとして配属になった。
恐れ多くもブラックホークに勤務できるとは夢のよう。
一部の人間はブラックホークを怖がっているけど、俺はそんなこと無い。むしろ、ブラックホークのメンバーを尊敬している。
アヤナミ様のように冷静な判断力が欲しいと思うし、ヒュウガ少佐のような身軽さとクロユリ中佐のような可愛らしさ、ハルセさんのような優しさとコナツさんのような書類の処理能力が、ほしい。
俺にはブラックホークに入れること自体が不思議なように・・・・・・何も取柄が無い。
俺には何も無い。
だから、信じられないんだ。
今日からブラックホークのメンバーになれるなんて。
『おはようございます・・・・・・』
重いブラックホークの執務室のドアを開けると中には・・・・・・・カツラギ大佐お一人のみ。
あれれ。
「おや、ミズキ君ですか。おはようございます。さぁ、こちらへどうぞ」
執務室へ入ることを躊躇していると大佐から声を掛けてもらった。
やさしいんだな・・・・・・大佐。
『ハイ・・・・・・・えっと・・・。本日より配属になりました、ミズキと申します。よろしくお願い致します』
「こちらこそよろしく、ミズキ君」
大佐の大きな手が俺の頭を撫でてくれた・・・・・・
あれれ・・・・・・。
俺なんか子供扱いされてない??
『えっと・・・・・・ありがとうございます、大佐』
「ミズキ君、私のことはカツラギと呼んでくださいね」
『え・・・・・はい、カツラギさま?』
「はははは、中々ミズキ君は面白いですね。カツラギさんでいいですよ」
『ハイ、カツラギさん』
それからカツラギさんは本当に優しくて、初日で緊張している俺を色々と気にかけてくれた。
お昼ごはんの時間はカツラギさんお手製のお弁当を頂いたりもして。
こんなに美味しいものは・・・・・・初めてだ。
「ミズキ君は食べ物の好き嫌いはありますか?」
カツラギさんとお弁当を食べていると突然話しかけられた。食べ物??好き嫌い??
『えっと・・・・あの・・・・・・・・・俺、は・・・・あの・・・・』
「どうしました?」
俺の顔を覗き込んでくるカツラギさんの笑顔が、優しい。
この人なら話してもいいよね。それにブラックホークに配属になった時点で俺の事わかってると思うし。
今更隠すこともないし・・・・。
『カツラギさん、俺、戦闘用奴隷だったので食べ物の種類がよく、わからないんです。これも初めてお弁当ということを知りましたし、この中身の名前を全部答えろといわれても・・・・・・知らないんです。
なので・・・・・・・・何が好きで何が嫌いかは・・・・・・わかりません。すみません・・・・』
ごめんなさい、カツラギさん。
今ので答えになっていますか?
「そうでしたね。ではこれから色々とミズキ君に教えていきましょう。とても楽しみです。では、始めに。君が口に入れようとしているものは『からあげ』といいます。美味しいですか?」
『からあげ・・・ですか?とても美味しいです』
カツラギさんは本当に、やさしい・・・・・・。
この人のお役に立てるようにがんばろう。
「あーーーっ!!美味しいもの食べてるでしょう!!」
突然の声。びっくりした。
振り返ると・・・・。
「ヒュウガも食べますか?たくさんありますよ」
ヒュウガ少佐が帰ってきたみたいだ。
『あ・・・・・本日より配属になりました・・・・』
「ん?ミズキ君でしょ?俺、ヒュウガ。あ、知ってるか。はじめましてじゃないよね」
『からあげ』をほおばりながらヒュウガさんが答える。
『え・・・・・・・・?』
「わお、これ美味しいね。出しまきももらっちゃお。うん?知らない?俺が士官学校に入学する頃に戦闘用奴隷になった子だよね。たしか・・・・・・・030007?一緒に任務に行ったこともあるよ。まぁ、あの頃の君は今よりもっと小さかったし。覚えてるほうがおかしいか・・・」
懐かしい俺の名前が、ヒュウガさんの口から。
その呼ばれ方は10年ぶりぐらいかな?
『ああ、そうでしたか。申し訳ありません。俺、すっかり忘れてます』
「俺は020017だよ。ちょうど入れ替わりだからねぇ。君は結構有名人なんだよ。士官学校に行ってる俺の耳にまで噂が来ちゃうぐらい。ね?色々心当たりがあるでしょ」
にこにこと俺たちのやり取りを聞いていたカツラギさん。
俺に食べ物・・・・・・・
(後で『たきこみごはん』というと教えて貰った)を与えながら・・・・。
「良かったですね、ミズキ君。昔話ができる相手がいましたね。君は軍に入っても単独行動が多かったのですから私やヒュウガに色々と相談するといいでしょう。明日から益々たのしみですね、ヒュウガ?」
「ん?ああ、そうかも。君と手合わせできる日が来ると思わなかったし。ねぇ、カツラギさん俺に煮豆ちょうだい」
『手合わせ・・・・して頂けるのですか?』
「うん、いいよ。いつでも言って。お互いの気分転換になるよ。それにね、俺たちは殺人衝動を抑えるのに一苦労しちゃうからね。うちに来たって事は今までの君みたいに最前線で全滅専門でってわけには行かなくなるし。まぁ、俺はいつでも暇だから、ね?」
なんだか、ここは『ほかほか』する。
温かいなぁ。
嬉しいなぁ。
俺、ここに来れてよかったなぁ。
「さぁ、ミズキ君。たくさん召し上がりなさい、早く大きくなれるように」
「ぶははっ!カツラギさんっ!!この子、コナツよりも年寄りだよっ!!」
「え・・・・・?そうでしたか・・・・・これは失礼・・・・・」
『えっと・・・・・・身長は・・・・・伸びなかったです・・・・・・・』
だけど、カツラギさんのお弁当を食べたら大きくなれるような気がするな。
密かな願望として持っておこう。
身長は高いほうがいいと、思う。
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