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「二週間か。…そろそろ、夜伽の仕事も始めて貰おうか」
微かに息を呑む音。ケーニッヒは口角を吊り上げ、僅かに顔をしかめたフィデルへとグラスを傾けた。
「どうだ、一杯」
「…失礼ですがケーニッヒ様。私、酒はあまり嗜みません」
「なんだ、付き合いの悪い」
怪訝そうな顔をしたケーニッヒに、フィデルはきまり悪そうに顔を伏せた。
「……弱いのです」
「ん?」
小さな声で呟いたフィデルに、ケーニッヒが不思議そうに聞き返す。
「私は、酒に滅法弱いのです。恐らくそれ一杯で、気色も変わってしまいます」
少しの間ポカンとしていたケーニッヒは、やがてその意味を理解すると、悦に入ったような笑みを浮かべた。
「…そうか…クク、なるほど。それは…面白い」
一頻り肩を揺らしたケーニッヒは、グラスを置き立ち上がると、フィデルの腕を引いた。
「今日は別段盛っているわけでもない。そうだな…明後日の夜半、私の寝室へ来い。私達の初夜だ」
引き寄せた腕の中でそう囁く。フィデルは、無愛想な声で「畏まりました」とだけ返すと、静かに腕から離れ部屋を後にした。
その後ろ姿が消えても尚、ケーニッヒは暫し扉を眺めて薄笑っていた。





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あきゅろす。
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