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3 王と忠臣



「国王様!」
黒衣に身を包んだ家臣達の中、ファルベがケーニッヒへと走り寄る。
「第二王子のご逝去、誠に残念です…!」
「…うむ」
「やはり、一人でもカルテ国の跡継ぎが亡くなられるのは」
「もう良い。下がれ」
言葉を返すことすら面倒だと言わんばかりに、蠅を払う仕草でファルベを追った。
うんざりとした様子のケーニッヒに、他の家臣達も次々と悼みの言葉をかけていく。
第二王子であるツヴァイの葬儀は、ケーニッヒの意向で速やかに執り行われた。



「ケーニッヒ様。この度はツヴァイ王子のご逝去、」
「聞き飽きた」
ぶっきらぼうに返された言葉に、フィデルは目を丸くしてケーニッヒを見た。
「そんな薄っぺらい言葉は聞き飽きた。何か気の利いた弔辞を寄越せ」
「……と、仰いますと」
「アインスとドライが生きていて良かった、と言う正直者はいないのか」
「…ケーニッヒ様の機嫌を、意味もなく損ねる家臣などいないと思いますが」
枕元の台にワイングラスを置く。ケーニッヒは自嘲めいた笑みを浮かべ、寝台へと腰を下ろした。
「どうかな。皆、何を考えているかなど解らぬ」
広い寝室の片隅、静かに控えていたフィデルは、眉を顰めながらケーニッヒを見遣った。
「私に言わせてもらえば、ケーニッヒ様の方が余程解らぬお方です」
その言葉に、ケーニッヒが顔を上げる。
「己が息子の死だというのに、涙すら流さないのですね」
「……確かに。お前には、解らぬだろう」
「そのように冷酷な王だからこそ、臣下も敢えて皮肉めいた進言が出来ないのです」
フィデルの言葉に、暫し顔を上げたまま黙り込むケーニッヒ。不意に口許を歪めると、グラスを手に取り不敵に笑んだ。
「クク…随分とはっきりした物言いだ」
「国のためならば、私は誰への言葉も躊躇いません」
グラスに半分の、赤紫の液体を口に含む。
「頼もしい限りだな。…ここへ来て二週間、これほどまでに見返りを期待出来る拾い物は初めてだ」
グラスの中で、戯れに揺らされたワインがくるくると回る。それを凝と見たまま、ケーニッヒは遠い目をした。





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