68 「あの街……全く知らない人ばかり、ですが…」 「大丈夫!フィデルはね、あの街のみんなに好かれてるから!」 「……あぁ…遺民街、…そう、でしたね」 ベゾンダの視線を受け、微かに困ったような笑みを浮かべたフィデル。ドライが腕を引くと、ベゾンダはつられてそのまま外へ出た。 「そうね…。じゃあ、行ってみましょう。レーゲン」 「フィデル様!」 「フィデル様、よくぞいらっしゃいました」 「お久しぶりです、フィデル様…!」 遺民街の住人達が、フィデルの姿を見つけるなり駆け寄ってくる様子を見て、ベゾンダはこっそり目を丸くしていた。 「……本当に、好かれているのね」 「すごいでしょ」 どこか自慢げに言ったドライは、何人か子供の姿を見つけるとパッと表情を明るくした。 「あの子達、この間一緒に遊んだんだ!おーい!」 「あ、フィデルさま!それに、えっと…」 「レーゲンさまだよ!」 「あ、そうそう!レーゲンさま!」 「もう…だからレーゲンでいいってばぁ!」 子供の輪に入り、幼い笑顔を見せるドライ。ベゾンダはその様子を眺めて、嬉しそうに目を細めた。 「フィデル様。本日は、また…」 「ええ。レーゲン様が、ここを訪れたいと」 「…そちらの方は?」 住人の一人が、ベゾンダを見て尋ねる。フィデルは彼女の方を振り返り、前に出るよう促した。 [*前へ][次へ#] [戻る] |