66 それから少し後。ドライが、再びフィデルを連れ立って外出していた。 「フィデル、今日もあの街に行きたい!」 「ええ、畏まりました。……そうだ」 ふと立ち止まったフィデルは、ドライの顔を見て小さく笑みを浮かべた。 「レーゲン様。お母様に、お会いしてみませんか?」 「おかあ…さま?」 「遺民街の傍に住んでいらっしゃいます」 「……ぼく、お母様なんて見たことないよ」 興味半分、不安半分といった様子でフィデルを見上げるドライ。フィデルは優しく笑み、その肩に手を置いた。 「大丈夫です…ルビーンお兄様やケーニッヒ様にも、確認致しました。確かに、あなた様のお母様です」 「…そうなの?」 それを聞くなり、ドライは打って変わって明るい声で尋ねた。 「ええ…お母様もきっと、レーゲン様にお会いすれば喜ばれると思いますよ」 「フィデル!ぼく、お母様に会ってみたい!」 嬉しそうに一つ頷くと、フィデルはドライの手を取り歩き出した。 遺民街の近くまで来た二人はまず、ベゾンダの家を尋ねることにした。 「お母様は、ベゾンダというお名前です。お若く、綺麗な人でしたよ」 ぽつんと建った小さな家の前で、ドライは繋いでいた手をぎゅっと握った。 こんこんと扉を叩く。どちらさまですか、と、か細い声がした。 「フィデルです…覚えていますか、ベゾンダさん」 「はい、…今、お開けしますね」 ゆっくりと錠の開く音。扉を開けたベゾンダは、フィデルとドライの姿を見ると薄暗かった表情を綻ばせた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |